困ったYouTube

私は子供の頃からずっと音楽に親しんでいる。
小さい頃にピアノを習っていたせいで、その頃はクラシックが好きだったが、徐々にポップス系を好むようになって、二十歳の頃にはジャズ、ブルース、R&Bなどの黒人音楽系がメインという、今の趣向の基本が出来上がった。
自分でレコードを買うようになったのは高校生になったくらいの頃からだったが、その頃はもちろんレンタルなどはなく、好きなものを好きなだけ聴きたいと思えばレコードを買うか友人に借りるか、もしくは FM 放送を録音するくらいしか方法が無かった。
その頃でもレコードはだいたい1枚2000円くらいだったので、高校生の小遣いでは月に1枚買えるか買えないかくらいで、新しいレコードを買ったら帰ってすぐに少なくとも2回は繰り返し聴いて、ちょっとこれは気に入らないと感じても、何度も繰り返して聴いて無理矢理好きになっていた。買って1週間もすれば、最初から最後まですべての内容を覚えてしまうというのは当たり前のことだった。
レンタルが普及してからも、好きなものは自分の手元に置いておきたいという気持ちが強く、レンタルでどんどん借りては返すというようなことはしなかったし、YouTube などのメディアが普及してからも、アルバム志向の私は数分程度の細切れ演奏などはあまり親しんでこなかった。
ところがいつの間にやら YouTube では2時間にも及ぶような長時間のものがアップされるようになっているではないか!! しかもレンタルにはあまり無いような、私好みの古いレアなものまでたくさんある。
これらを見つけた時は、最初はこれはありがたいと思って、いろいろと視聴したのだが、あまりにもたくさんありすぎて、どんどん目移りしてしまう。少しでも退屈な部分が出てくると、さっと次のものに移ってしまう。
こんな聴き方ではその音楽の本当の良さに触れることはできないだろうなと思いつつも、ついつい目移りしてしまうのだ。だって、そういうメニューがずらっと並んでいるのが目に入るのだから。
こんなものが簡単にタダでどんどん手には入っていいのだろうかと不安になってしまう。今時のミュージシャンはどうやって生活しているのだろうと、余計な心配までしてしまう。おそらくスタジオミュージシャンなどを使わずに、PC の打ち込みだけで CD を作ってしまうというようなこともたくさんあるだろう。
聴く方も、昔のように腰を落ち着けてじっくりと聞き込むというより、ざっと聞き流して、耳に残ったものだけを聞き返すというような聴き方になってしまうだろう。
私が聴く音楽は大半が 60 年代から 70 年代で、それ以降はぐっと少なくなる。演奏自体は新しいものでも、ベテランミュージシャンが古い曲をカバーしたりしているようなパターンがほとんどで、最近登場したミュージシャンはほとんど知らない。
決して新しいものに対して偏見を持っているわけではないのだが、新しいものは聴いても印象に残らないし、変に凝っているものが多く、シンプルなサウンドが好きな私としては、どうも生理的に受け付けられないものが少なくない。
YouTube からダウンロードしたものも古いものばかりだが、目についたものをどんどんダウンロードしてしまうので、それをじっくりと聴いている時間が無いというのが実態だ。
こんなことではいかんなぁ〜と思いながら、Miles Davis の古い映像をあさっているのだ。