白山剣ヶ峰

白山は今年が泰澄(たいちょう)上人が開山してから 1300 年だそうである。
「白山」という名称の単独の山は無くて、御前峰(2702.1m)、剣ヶ峰(2677m)、大汝峰(2684m)の「白山三峰」を中心としたこの山域の山の総称で、さらに別山(2399.3m)、三ノ峰(2128m)を含めて「白山五峰」という呼称もあるとのこと。
多くの人が登るのは室堂の正面に聳える最高峰の御前峰で、一部の人は大汝峰にも足を延ばすけれど、剣ヶ峰に登る人はほとんどいない。その理由は単純で、「登山道が無い」から。
かく言う私も、剣ヶ峰にはこれまで登ったことが無かった。白山に来る時はいつも周回しているので、周回路から横にそれた剣ヶ峰は寄り道する余裕が無かった。
剣ヶ峰にはぜひ一度登ってみたいと思いながら、なかなかうまいルート設定ができなかったのだけれど、酷暑の関西を避けてどこかおもしろそうな所をと探った結果、未踏の剣ヶ峰、そして歩いたことの無い白山禅定道を下ることにした。
週末ということもあって一般車は市ノ瀬までしか入れないので、ここを起点にチブリ尾根から別山に登って、「白山三峰」につなげようと思った。これで「白山五峰」のうちの4峰に登ることになる。
2010 年の7月に今回と同じようなルートで、大汝峰から七倉山、白山釈迦岳をぐるっと回って周回したことがある。その時のかすかな記憶を頼りに、午前2時 50 分に市ノ瀬の駐車場を出発した。

しばらく工事用の林道を行く。以前は確か途中で登山道に入ったのだが、その時にあったはずの道標が見あたらない。このあたりだったのではないかと覚しき場所には「工事関係者以外立ち入り禁止」という看板が立っている。
少し林道を進んでみたけれど、方向がおかしいので、看板のあたりをヘッドランプでじっと見回してみたら、登山道らしき道が見つかった。
しばらく登るとまた林道に出る。前回は間違ってこの林道をしばらく登ってしまったのだけれど、今回はちゃんと登山道に入る。
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2〜3日前に大雨があって、その影響かあちらこちらで道がちょっとした沢の様になっている。今回はシューズは HOKA にしたので、防水性はほぼゼロ。しかし多少濡れてもやはりこちらの方が安心して歩ける。
4時半頃になってようやく空が少し白んできた。好天だけれど、残念ながら今日のルートからはご来光は拝めない。
出発して2時間半でチブリ尾根避難小屋に到着。トイレを借用した。
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カライトソウとツリガネニンジン(?)。
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久しぶりに見る雲海。
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稜線に近づくと太陽が現れた。
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6時 35 分、出発して3時間 45 分で別山に到着した。
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神社にもお参り。
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こういう絶景は本当に久しぶりで、右から御岳、乗鞍岳、そして槍穂高連峰。
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人が多かったので、写真を撮ったら早々に引き返して、室堂方面に向かった。この道は室堂周辺に比べると登山者が少なくて、北アルプスを眺めながらぼたもち休憩を取った。
シモツケソウ。
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トリカブト。
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実は白山は活火山(ランクC)です。
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このあたり、道の右側が大きく崩れている箇所が何カ所かある。前回はこんなだった記憶は無いのだけれど・・・。
御前峰は遠いような近いような。
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別山から1時間半ちょっとで南龍ヶ馬場に到着した。
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市ノ瀬が標高約 850m。別山が 2399m なので、標高差約 1550m。ここが標高約 2000m で、御前峰まで約 700m 登り返さなければならない。
さらに剣ヶ峰と大汝峰の登りもあるので、累積標高差は登り一辺倒の槍ガ岳 2200m よりも大きい。
昨年8月に随行で歩いたトンビ岩コースを行く。こんなにしんどい登りだったのか・・・。
トンビ岩の岩陰でおにぎり休憩にした。
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南龍山荘からちょうど1時間で室堂に到着した。
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そのままノンストップで、室堂から 30 分かかってようやく御前峰に到着した。
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ようやく今日の目的の剣ヶ峰にご対面。上部の岩は脆そうだ。
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写真を撮ったら早々に下る。このあたりは人が多い。
ルートは紺屋ヶ池のそばから。少しくらい踏み跡があるのではないかと思っていたけれど、そういう痕跡はまったく無し。
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ピークは右奥で、なるべく岩の大きそうな所を選んで登る。注目されているのではないかと余計な事を考えてしまう。
もっと登りにくいかと思っていたけれど、それほどでもない。小さな石は不安定なものも多いけれど、大きな岩はだいたい安定している。次第に傾斜が強くなってくるけれど、ホールドやスタンスは至る所にあるので、ルートファインディングはあまり難しくない。
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池から 12 分ほどであっさり山頂に飛び出した。背景は大汝峰。
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さっきとは反対に、剣ヶ峰から御前峰を望む。こちらを見ている人がいるかな。
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ヘマをしないように慎重に下って、池のそばから往復 25 分でした。
さて、残りは大汝峰だが、すでに身体は重い。
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2010 年に周回した時も、ピークを踏むかトラバース道で七倉山へ向かうか悩んだ末に、せっかくここまで来たのだからと気力を振り絞って、ピークに向かった。
今回の最大の目的は剣ヶ峰で、白山三峰はおまけのようなもの。大汝峰はこれまで何度も登っているし、昨年も2回登っている。
しかし剣ヶ峰はもう登ることは無さそうなので、そうなると白山三峰をやれるのは今日しかない。
時間はまだたっぷりあるので、はやり行くしかないと覚悟を決めた。薬頼みでロキソニンを投入。
急な岩場を越えて、分岐から 15 分で大汝峰に到着した。
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振り返ると御前峰と剣ヶ峰。気のせいかこれまで眺めていた景色とちょっと違って見える。
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これで思い残すことは無くなった。速攻で下山。最短距離で室堂を目指す。
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ハクサンフウロ。
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室堂は人があふれていたので水を補給しただけで通過。それにしても暑い。昨年を思い出す。
弥陀ヶ原から振り返る。
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黒ボコ岩からのチブリ尾根、別山。チブリ避難小屋の赤い屋根が見えているのだけれど、写真ではわからない。
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観光新道を下る。ここも無雪期に歩くのは初めて。
殿ヶ池避難小屋は 10 年ほど前のゴールデンウィークに山スキーで2泊した。夜の星空が素晴らしくて、うっすらと天の川が見えていたのを覚えている。小屋はその後、改装されたようだ。何とトイレに紙が付いていた。
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別当出合に下る道を見送って、白山禅定道に入る。市ノ瀬までまだ 6km 以上あるようだ。おそらく歩く人は少ないと思うので、道の状態がちょっと心配だったけれど、草が刈られて整備されているのを見て安心した。
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しかしこんな快適な部分はわずかで、火山なので大きな石がゴロゴロしていて歩きにくい。北八ツほどではないけれど。
さすがにここまで来たらもう誰にも出会わないだろうと思っていたら、クマ鈴を鳴らした二人パーティに追いついた。先に行かせてもらったけれど、大きな荷物を背負っている割には歩くのが速くて、なかなかクマ鈴の音から逃れられなくてちょっとイライラした。
ようやく標高が下がってきたと思ったらまた登り返しがあって、指尾山(1417.9m)。
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標高が下がってさらに気温が上がってきたけれど、禅定道に入ってからは樹林帯になったので体感的にはマシな感じ。
ようやく終わりが近づいてきた感じで、わずかな登り返しで六万山(1260m)。
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午後2時半、ようやく林道に出た。
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ここは道路を渡ってすぐにまた登山道に入る。
ここから 10 分少々で登山口に下り立った。
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ちょうど前を、別当出合から走ってきたであろうランナーが二人、走って行った。駐車場まであとほんの数百メートルくらいだけれど、私も走る。
それにしてもこのあたりは一体いつまで工事を続けるつもりなのだろうか。
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車に戻ったのは午後2時 50 分。行動は 12 時間ちょうどで、距離約 30km でした。
白山では 2010 年の周回以来の満足感のある山行だった。久しぶりに天候にも恵まれて眺望も素晴らしかった。
白峰で温泉に入って、良い気分で高速を走っていたところ、またまた事故渋滞に遭遇!!。彦根の南から栗東まで2時間以上と表示されている。
実は土曜日は時間があったので高速料金を節約しようと思って湖西道路から敦賀に向かったところ、湖西道路の坂本あたりで大渋滞にぶつかった。1時間ほどトロトロ運転で、どうもここは日常的に渋滞するようだ。そう言えば昨年、大汝峰へ行った時も同じ状態に陥ったような気がする。
今日はそれ以上に激しい渋滞のようで、それはもうたまらんと思って、まだ流れていた湖東三山の IC で下道に下りた。
漠然と、琵琶湖大橋を渡って湖西道路に入ろうかと思ったりしたのだけれど、湖西道路も夕方の京都方面はしばしば渋滞する。
IC を出たら R307 だった。R307 と言えば枚方へ向かう道ではないか。確か信楽のあたりを通っていたような気がするのだけれど、詳しくは知らない。
遠回りになるのかも知れないけれど、時間的には車は多くはなさそうだし、おおむね郊外を走っていると思うので信号も少ないだろう。
と言うことで、このまま R307 を行くことにした。
おおむね期待通りで、甲賀町のあたりでは交差点がたくさんあったけれど、それ以降は信号も少なく、スムーズに走れた。
信楽のあたりでは新名神に乗ることもできたけれど、ここからならまた高速に乗ってもおそらく 30 分も変わるかどうかというくらいだろうと思って、そのまま走った。
白峰の温泉から5時間弱で帰ることができた。土曜日は市ノ瀬まで5時間半かかったので、はやり早めに高速を下りて正解だったと思う。
それにしても疲れました。