高野山町石道から京大坂道

先の三連休は久しぶりに天候に恵まれた週末だったのだけれど、中日に随行の仕事が入っていて、テント泊というわけにはいかなかった。
随行の前日はあまりムリはできないので、最終日(11/5)に「やった感」の感じられるコースへ行こうと思った。
私は宗教心はまったく無い。テレビドラマも見ないし、しばしば耳にする「聖地」というものにもまったく興味が無い。
「高野山」と聞くと頭に浮かぶのは、鼻に油をテカらせた坊主が札束を舌なめずりして数えているような情景で、神聖なイメージはほとんど無い。
しかし宗教上の参詣道というのはトレランのコースとしてはなかなか魅力的で、登山というほどではないけれど、自然の中を軽快に歩いたり走ったりするフィールドとしては捨てがたいものがある。
高野山もそういう対象としては魅力的な地形で、麓から参詣道を上がって麓まで下りるとそれなりの距離があり、スタートゴールが電車の駅に設定できて、高野山のエリアは比叡山山頂と同じくらいの標高がある。高野三山に登れば 1000m をちょっと越える。
2月に黒河道から京大坂道に行ったけれど、高野山の参詣道で一番ポピュラーなのは町石道(ちょういしみち)。
麓の慈尊院から1町(約 109m)ごとに壇上伽藍まで 180 個の町石が建てられていて、元は木製だったものが鎌倉時代に石柱に置き換えられて、多くのものが今も残っている。
公称約 22km で、途中で電車の駅にエスケープできる道もあるので、分割して歩くこともできる。
先日の台風で南海電鉄の高野線が高野下駅までしか運転しておらず、当然ケーブルも止まっている。橋本からバスの代替輸送をしているものの、ひょっとしたら人が少ないかもと期待して、朝5時3分の始発で家を出た。

高野線は5月に小辺路へ行くのに乗った時に比べるとはるかに空いていたけれど、乗客のほとんどが九度山で降りた。2時間少々かかって7時過ぎ。
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何かイベントでもあるのか、同じ色のジャケットを着た人が何人か駅舎におられる。
駅前のトイレの横の休憩スペースでゆっくり準備して、あたりに人がいなくなってから出発した。7時 20 分。好天で気温が上がると思ったのでほぼ夏スタイルで来たけれど、結構寒い。
何と、いきなり反対方向に行ってしまった。本当は階段を下りてしばらく車道を行かなければならないのだけれど、山へ向かって上がる道があったので、本能的にそちらに行ってしまった。
gps を見てミスに気付いて、あわてて引き返す。誰にも見られなくて良かった。
車道を 20 分足らずで慈尊院へ到着。ここが町石道のスタートになる。
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ガイドツアーだろうか、180 町の石の所に団体がいた。その後、何度か同じ団体と出くわした。
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古い町石は数字がよく読めない。
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しばらくコンクリート舗装の道を登る。それなりの傾斜で、走るのはムリ。
眺望が開けると紀ノ川の向こうに和泉葛城山、岩湧山。
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展望台は団体に占拠されていたのでパス。その少し上からようやく土道になった。
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しばらくで六本杉。ここで丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)への道と分かれる。今日は神社へは寄らない。
ここに町石道の案内板。同じようなものは何カ所かあったけれど。
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このあたりは走れるトレイルで、快調に飛ばして9時ちょうどに古峠(ふるとうげ)に到着した。このあたりで少し補給しようと思っていたのだけれど、ちょうどここで数人のパーティと出くわしてしまったので、そのまま先に進んだ。
ほどなく二ツ鳥居。
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まさにトレランのためにあるような道だ。進むにつれて標高も上がるので、体感温度は上がらない。
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9時 38 分にちょうど半分の 90 町まで来た。
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少し行って峠とは思えない笠木峠。
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少し行ってから道ばたの倒木に腰をかけてクリームブランを補給した。手袋を着用。
左側に車の音を聞きながら走って、R370 に出た。
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国道を渡ってすぐにまた山道に入る。この先で数十名の大集団に出くわしてしまった。また、下りてくる団体もいくつか。
少しずつ抜かせてもらいながら進んだ。ただ、ここは町石道で一番の急登部分で、たとえ一人でもスイスイと歩けるような場所ではないので、イライラ感はそれほど大きくなかった。
集団を越えて少し行くと袈裟掛石。
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さらに進むと鏡石。
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最後にひと登りして、大門前の車道が見えた。
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11 時 37 分に大門に到着した。
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2月に来た時はこのあたりは閑散としていたけれど、今日は車が大渋滞。電車で来られないので、車で来る人が多いのだろう。
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ここからは車道を歩いて、壇上伽藍の手前に一町。
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そして壇上伽藍の中門。
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時間があるのでシューズを脱いで金堂に入ろうとしたところ、入り口の先に「拝観料 200 円」という札が立っていたので、中をちらっと眺めて退散した。
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紅葉がきれいだ。
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そして金剛峯寺。高野山では紅葉真っ盛り。
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あまりの人いきれに息が苦しくなる。早々に女人堂に向かう。
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ここからは前回通った道だけれど、京大坂道(きょうおおさかみち)の古道は荒れていたので今日は舗装道路の方を下ろうと思う。
と思いながら、足が勝手に古道の方に向かってしまったが、やはり・・・。
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前回以上の荒れぶりに、この下の分岐からは舗装道路に向かった。
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女人堂から 30 分少々で極楽橋へ。電車が止まっているので閑散としている。
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あとはずっと車道を淡々と下るのみ。ただし丹生川を渡ったあとにちょっとした丘を越えなければならない。
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丘を越えたところの集落で祭りをやっていた。
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和泉葛城山、岩湧山の雄大な眺め。
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あと少しで学文路(かむろ)というところでこんな表示が。
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印刷がにじんでいて詳細がわからない。そのまま下ると、そのあたりにおられた男性から「この道は土砂崩れで歩行者も通れへんで」との一言。
橋本へ向かうなら少し戻って広い車道を行くのがいいと言われたので戻ったけれど、この車道はとても歩行者が通れるような道ではない。道幅はあるけれど歩道は無く、歩行者自転車は通行禁止ではないかというような道だ。
すぐそばに少し細い車道が分かれていて、橋本の標識が出ていたので、そちらに向かった。
実はさっきの道を下るとこの道に出たようで、少し下ると土砂崩れ現場。
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近づいてみると何となく越えられるのではないかという感じ。足元を見ると足跡がいくつか残っている。
案の定、さしたる苦労も無く越えることができた。
苅萱堂(かるかやどう)は前回は余裕が無くてゆっくり見ることができなかったので、今日はシューズを脱いで中に入らせてもらった。
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人魚のミイラの写真を撮ったものです。
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これでもう今日は満足した気分になって、すぐそばの学文路駅で終わりにしようと思った。
線路脇を走って駅のすぐそばまで来たけれど、入り口がわからない。ぐるぐるまわって、R370 に出てようやく改札口にたどり着いた。
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ちょうどその瞬間、電車が出て行った。次の電車まで 30 分。着替えて一息つくにはいい時間ではあるのだけれど、国道沿いとは言っても店は何も無い。ビールも調達できなさそう。
それならもう橋本まで走ってしまおうと思って、待合でどら焼きを補給して紀ノ川沿いのサイクリングロードを走った。
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橋本駅に到着したのは午後3時 20 分。10 分後に難波行きの急行が出るので、またまた着替えもせずにホームに向かった。
ちょうど8時間。約 40km の旅だった。