弘法大師の道 本編

土曜日(5/25)、午後5時の電車で出かけて、吉野には7時22分に到着した。ここまで電車に乗ったのは私一人だけだった。

出発したのは午後7時35分。街は静かだったけれど、以外と車がたくさん通った。荷物の重さは背負うとそれほど気にならなくて、スロージョグで進んだ。

トレイルレースではスタート地点になっている金峯山寺の蔵王堂を7時56分に通過。

青根ヶ峰の麓を越えるとまた車道になる。このまま車道を行くと楽ができることはわかっているけれど、そういうキセルのようなことをしてはいけない。

ここでポールを出して、本来の奥駆道に入る。

四寸岩山(1235.9m)には午後10時8分に到着。ここで大福休憩にした。

緩い下りは走る。大天井ヶ岳には午後11時44分に到着した。吉野を出発してからほぼ4時間10分。何と、以前に軽装で歩いた時より少し早かった。

気分良く、ここでおにぎり休憩にした。

次は小南峠を目指す。ここは昨年は逆コースで歩いたけれど、今日は下り基調なのですんなり行けると思っていたところ、なかなか峠の標識が出てこない。アップダウンも結構あって、ひょっとしたらすでに通り過ぎているのかもと思っていたが、だいぶしてから記憶にある地形に出会った。

小南峠に到着したのは午前1時33分。何と大天井ヶ岳から1時間40分くらいかかってしまった。昨年の登りとほとんど変わらない時間がかかった。

さて、ここからは未知のルートになる。しかも経験者の報告によるとここから先が厳しいらしい。急斜面のアップダウンの繰り返しで、時間の割には距離が延びないとか。ただ、gpsのトラックで見る限りは標高差はそれほど大きくない。

体力的にはまだまだ余裕はあるけれど、吉野から大天井ヶ岳まで標高差で1200m少々。四寸岩山での200mほどの登り返しなどを考慮すると、すでに標高差で1500mくらいは登っている。脚はそれなりには疲れてきているはずだ。

ジェルを補給して先に向かったところ、いきなり急登が始まった。傾斜で言うと比叡山の横高山の登りくらいだけれど、足元にそれほどしっかりしたステップが無い。と言うか、ただの急斜面。道になっていない。

こんな道がこれから続くのかと思うと先行きに不安を感じざるを得ない。

標高差にするとおそらく100mもあるかないかくらいだったので、一気に登り切った。次はこんな急斜面の下りがあるのかと心配していて、最初ちょっと急な下りがあったけれど、そこを過ぎると平坦な道になって、むしろ走れるくらいの道になった。

その後も以外と走れるような道が続いていて、経験者の報告と様子が随分違う。

その後も部分的にはロープが垂れているような急登が何カ所かあったけれど、それはほんのわずかな区間だけで、全般的にはむしろ大天井ヶ岳の前後の比べればはるかに走れるパートだ。

扇形山(1053.0m)を2時18分に通過。

黒尾山(986.0m)を3時33分に通過した。

ようやく空が明るくなってきて、大峰の山々。真ん中は大普賢岳?

天狗倉山(1061m)には4時36分に到着して、ここでソイジョイとゼリー飲料、そしてボトルにポカリを補給した。

振り返ると木々の間に御来光。

高城山(1111.2m)は5時18分に通過した。

この後、武士ヶ峰の手前で突然、車道に飛び出した。ところがこのあたりにテープマークが見あたらず、しばしウロウロさせられた。gpsにルートは入れてきているものの、ひょっとしたらそばに山道があるのではないかという不安があった。

しかししばらく車道を進むと、ようやくテープマークが出てきた。

このあと、30分近くこの林道を行くことになった。車道はあまり楽しくないけれど、今日は距離がかせげるのでありがたい。

これでこのコースの難関エリアは通過したことになるけれど、感覚的にはそんな難関とは思えなかった。以外と走れる部分が多かったように思う。本当のトレイルランナーにとっては一部の急登が厳しいイメージが残るのかも知れないけれど、ほとんど歩きのつもりで来ている私にとってはむしろ「走れる部分が多い」という印象の方が大きかった。

とは言っても時間はかなり経過している。一時は以外と早く行けるかもと思ったけれど、この様子だと18時間はかかりそう。

ほぼフラットな林道なので、一応走ってはいるけれど、おそらくキロ7〜8分のペースだろう。

ようやく乗鞍岳に向かう登山道へのマークが出た。

どういう訳かこの先あたりでgpsのルート表示が途切れてしまった。ポイント数が限界に達したのだろうか。トラックは表示しているし、紙の地図は持ってきているので、迷うことは無いとおもうけれど、ちょっと不便。

このあたりからかなり脚筋疲労を感じるようになってきた。これまでの走行距離は35kmくらいになっているし、時間もほぼ12時間。こういう長時間長距離行動はここ1年くらいはやっていない。

乗鞍岳への急登が始まった。これが「乗鞍の壁」と言われている場所。写真では大した傾斜には見えないけれど、実際はもし足を滑らせたら斜面の下まで止まらないだろう。標高差にすれば100mもあるかないかくらいだけれど。

乗鞍岳(993.5m)には7時37分に到着した。

ここで冷静に考えた。まだあと20kmくらい残っている。しかも全般的に登り基調になる。

この先の天辻峠は残された唯一のリタイア可能な場所で、ここを越えると高野山まで行くしかない。

天辻峠を越えると少し登りがあって、その次の出屋敷峠までは標高差200mほどの下りになる。つまりここを越えてしまうと、もしその後にリタイアしようと思って戻ろうとしても、それを登り返さなければならなくなる。

ビヴァークシートは持ってきているし、食料も水分もまだ十分あるので、途中で1〜2時間休憩することは可能だけれど、それはやはり避けたい。

次のバスは10時過ぎ。これが最終決定のトリガーになった。日射しも強くなってきたし、この先はこれまでの夜間走のように快適にはいかない。

この先で車道に出て、それをしばらく行って、天辻峠でテープマークに別れを告げた。

バスまではまだ時間があるので、のんびり歩いて道の駅に降り立った。8時35分だった。

13時間で41km。まだ多少の余力はあるけれど、これが今のほぼ限界と考えていいと思う。

もともと一度は諦めたコースなので、悔しいとか残念とかいう気持ちは無い。やらないよりはやって良かったというのが本音だ。身体で限界を感じられれば納得もできる。キャノンボールで六甲を往復していた頃ならできたのではないかと思うけれど、そんなことを今考えても仕方が無いし、このためにまたトレーニングしようとも思わない。

再挑戦は無い。続きをやって高野山までつなげるという考えも無い。こういうのは一気に行くことに意味があるので、六甲全山などもそうだけれど、分割して行くというのは私にとっては無意味だ。

ここ1年あまり、ずっと頭の片隅から離れなかったテーマが終わって、ようやくすっきりした。これで次の目標に気持ち良く向かえる。