白山御前峰

ここ数年は毎年、白山へ登っている。しかし今年はまだだった。

6月に加賀禅定道を登ったが、この時は山頂はどこも踏んでいない。

今年はコロナの影響などもあって、もうダメかと半分諦めていたが、例年 11 月の半ばには通行止めになる白峰の林道が今年はまだ開いている。ただし通れるのは市ノ瀬までで、市ノ瀬から別当出会までの 5km 超は自力で往復しなければならない。しかも市ノ瀬の標高が 850m なので、標高差で 1850m の登り下りになる。

さて、どうするか。もっと早い時期なら迷わずジョグだが、この時期の白山にトレランシューズで行くわけにはいかない。つまり下りでも走れない。歩きなら往復で3時間近くかかるだろう。

となると選択肢はマウンテンバイク(MTB)しかない。

山スキーをやっていた頃はアプローチの林道に MTB を利用することは何度もやったけれど、もはや 10 年以上前のこと。果たして坂道をまともに上がれるだろうか。

しかしたとえ行きは大半が押し歩きになったとしても、帰りの楽さのメリットは捨てがたい。押し歩きと言っても担ぐわけではないので、普通の歩きに比べても若干のタイムロスくらいですむはずだ。

先の連休が白山のラストチャンスと思って数日前から天気予報を見ていて、最終的に 22 日(日)の午後に出かけて 23 日に登ることにした。

しかし直前になって前日午後からこの日の午前中にかけては天気が良くないという予報に変わってしまった。

これがまだシーズン半ばなら先送りするところだが、もはやそういう余裕は無い。覚悟を決めて行くことにした。

順調に走って午後5時過ぎに市ノ瀬に着いた。ずいぶん久しぶりの感じがする。市ノ瀬に車を置くのは3年ぶりだ。

予報通り夜になったら雨が降り出した。どしゃぶりとまではいかないが本降りの雨。もし朝もこんな状態だったらちょっと出る気になれないと弱気になっていたが、3時に起きた時には小降りになっていた。

準備を整えて4時5分に出発した。気温は高めだが小雨が降っているので山用のヤッケ上下を着ざるをえない。

ギアを一番軽い状態にして坂道を上がる。暑い。

どれくらい漕いでいたかよくわからないが、上りが急になってきたのと汗をかきそうになってきたのとで、押し歩きに切り替えた。

乗ったり押したりを繰り返して、5時 20 分にようやく別当出会に到着した。物陰に自転車を置いて、幸い雨は止んでいたのでヤッケを脱いだ。そして5時 30 分に出発した。ここからは2年前とまったく同じルートを辿る。

砂防新道への吊り橋はすでに板がはずされて立入禁止になっていたので観光新道へ入る。

道が歩きにくいせいもあって今日はなかなかモチベーションが上がってこない。雨が上がってくれたのがせめてもの救いだ。

1時間少々でようやく稜線に出た。

遠方は見えないが周辺はおおむね見渡せる。真ん中は黒ボコ岩のあたりかな。それにしても雪が少ない。

いつものことですが・・・。

ようやく殿ヶ池避難小屋が見えてきた。

7時 43 分、小屋に到着して小屋の前のベンチでちょっと休憩した。小屋には男性が一人だけおられた。

数分の休憩で出発したが、標高が 2000m を超えるとさすがに風が冷たくて寒くなってきたのでヤッケの上を羽織った。

小屋から 50 分ほどで黒ボコ岩に出た。ここで砂防新道と合流。

誰もいない弥陀ヶ原。

9時6分、ようやく室堂に到着した。

風のあたらない場所でおにぎり休憩にして、軽アイゼンを着用した。そして最後の登りに向かった。

今朝までの雨はこのあたりでは雪だったようで、ところどころに吹き溜りがあって足がもぐる。と言ってもせいぜい足首くらいまでだけれど、すでに疲労も溜まっていてかなりつらい。

風が正面から当たるとフードがあおられて耳が痛い。アイゼンはすぐにダンゴになるし、何か口実が見つかればもうやめたい気分。

ようやく奥宮の石垣が見えた。室堂から 45 分ほどかかってようやく奥宮にたどり着いた。市ノ瀬から6時間かかった。

いつもながらここの石垣は本当にありがたい。しかしザックの中からお賽銭を出す余裕は無い。

あらかじめすぐに出せる場所に忍ばせておいたスタンドをデジカメにセットして、御前峰(2702.1m)に向かった。

やれやれ。これで心おきなく今年を終えることができると思ってほっとした。

下りで一瞬ガスが晴れて室堂が見下ろせた。

室堂ではアイゼンを脱いだ。室堂の上と下ではまるで別世界だった。

弥陀ヶ原を上から見下ろす。

あとはひたすら来た道を戻るだけ。何と、避難小屋の少し上で男女の二人連れが登ってくるのに出会った。山頂を目指すような雰囲気では無かったけれど、何が目的でここまで来ているのだろうか。しかもわざわざ市ノ瀬から歩いてきたのだろうか・・・。

別当出会と室堂のちょうど中間あたりに岩のゲートがあります。

午後1時 32 分、別当出会に戻ってきた。

ちなみに例の吊り橋はこんな感じ。

この写真ではわからないけれど、下の川までは相当な高さがあります。もちろん谷瀬の吊り橋ほどではないけれど。

山スキーをやっていた頃に2〜3回渡ったことがあって、その頃はこのような立入禁止のロープは張っていなかった。

おそらく冬の積雪対策として板を外しているのだろう。十字の鉄骨もあるので足を踏み外したからと言って落ちてしまうようなことはまずないけれど、歩くためには下を見なければならないので、はるか下を流れる川面が見えて非常に緊張する。

ロープを越えて渡る人も少なくないが、今朝は雨で鉄骨が濡れていたと思うので、危険は犯したくなかった。ただ登山道としては観光新道よりも砂防新道の方がはるかに歩きやすい。距離的にはほとんど変わらないけれど、時間的には 30 分くらいは違うのではないかと思う。

どうしてもここを渡るしかないような状況でなければ渡りたくないというのが正直なところだ。

あとは市ノ瀬まで MTB で下るだけ。もう終わったようなものだ。

期待通り、下りは快適!! と言いたいところだったが、いざ走り出すと向かい風でチョー寒い。しかし停まってヤッケを羽織るのはあまりに面倒なのでそのまま下り続けた。

下りのエネルギー消費はブレーキ操作の指運動だけで、15 分もしたら橋まで戻ってきた。

そして今日こそは白峰総湯へ。ここはお気に入りの温泉なのだが地元でも人気で、休日の午後は駐車場がいっぱいで入れないことがしばしばある。このところ何度か続けて敗退している。

今日も温泉日和なので心配だったが、予想外に駐車場が空いていた。コロナのせいだろうか。

露天や内風呂をゆっくり堪能して、気持ち良く帰路についた。

この連休は人出が多いとニュースで聞いていたのでひどい渋滞を懸念したが、恐れたほどではなかった。