筏場道

筏場道は川上村の筏場(いかだば)から大台ヶ原へ行く道で、ドライブウェイができるまでは大台ヶ原へ至るメインルートだった。

しかしドライブウェイ開通後は歩く人が激減して、昨今は大雨や台風などによる登山道崩壊が随所にあって、その後の修復もあまりなされず、登山道としては立入禁止になっている。

しかしながら大台ヶ原から大台辻の間は大台ヶ原から歩く人も結構あって、私自身もつい先日歩いたばかり。

そこで残り半分の筏場から大台辻までも歩いてみたいと思ったが、新しい情報はほとんど得られなかった。

昨年買った大台ヶ原の登山地図では随所に崩壊の注意書きはあるものの、道としてはかろうじて残っているような感じなので、とにかく行ってみようと思った。

登山地図には登り口になる林道終点に有料駐車場が記載されている。こんな場所に有料駐車場があるのか?

確かにありました。

私が着いた時には隅の方に軽のバンが一台だけ停まっていたが、何となくずっと置いてあるような感じだった。

準備を整えて、7時50分に出発した。

車道を少し進むとすぐに登山道への看板があった。

こんな注意書きも。

ここの渓谷はなかなか美しい。

少しするとかすかに硫黄の匂いが漂ってきた。実はもう少し先に温泉の跡がある。

ほどなく立派な道標があって、このあたりが五色湯跡。

硫黄の匂いがするのでどこかにお湯が湧いているのだろう。聞くところによると河原に源泉が湧き出している場所があるそうだが、温度はそれほど高くはなく、秘湯マニアでもお湯を楽しむというわけにはいかないらしい。

ここのことは谷崎潤一郎の「吉野葛」にも出てくるが、氏が本当に訪れたのかどうかはわからない

ちなみに河原はこんな感じ。

さらに進むとこんな場所も出てくる。

新しい鎖がしっかりと設置されているので危険は無い。

出発して50分足らずで吊り橋まで来た。

ここから先は通行止めです。

左側が切れ落ちた斜面をトラバースしていく。崩れた場所もところどころにあって、慎重に進む。

15分ほど進むと道が急カーブして右側の斜面を登るようになった。崩壊した休憩所の跡。

大台辻までまだあと 1.6km ある。

道が穏やかになってきてやれやれと思っていたが、またもや右側に切れ落ちた急斜面のトラバースになった。こういうのが何度が出てきた。

ロープは古くてとても頼りにはならないので、万が一の気休めにとりあえず持っておくだけ。

とんでもない障害物も。

だいぶ大台辻に近づいてきたと思っていたら、突然目の前に大きな崩壊斜面!!

対岸にロープが垂れているが、踏み跡らしきものは見当たらない。多分、登山道に張られていたロープが崩壊で垂れてしまったのだろう。

左側の斜面を登れないかと見てみた。ずっと上の方にテープが見える。おそらく行っている人がいるのだろう。

で、少し登ってみたが、急斜面で足元が非常に脆い。登るだけなら何とかなりそうだが、ここを下るのはあまりにも危なすぎる。足を滑らせたらこの崩壊斜面に墜落する。

今日はここでお終いにしようと思った。大台辻は先日行っているし、危険をおかしてまで行くようなルートではない。時間は10時5分。

少し戻った場所でもう少し緩い斜面があって、ここも上の方にテープが見えたが、もうやめておこう。こんな場所で事故は起こしたくない。

帰り道も際どいトラバースが続くので緊張する。どちらかと言うと登りよりも下りの方が危ない。

1時間少々で吊り橋まで戻ってきた。ようやく危険地帯は脱した。

それにしてもこのあたりの渓谷は美しい。

12時5分、駐車場に戻ってきて本日の行程が終了した。


戻ってきたら車が一台停まっていたが、山道では誰にも出会わなかった。どこへ行かれているのだろうか。

出発してから途中では一度スポーツドリンクを少し飲んだだけだったので、地面に座っておにぎりやどら焼きをのんびり食べた。

歩いた距離や時間、標高差は大したことはなかったが、危険箇所が多かったせいか、思いのほか疲労感があった。

R169へ戻る途中に入之波(しおのは)温泉山鳩湯という温泉があって、昨年、馬ノ鞍峰へ行った時に立ち寄った。

なかなかいい温泉で、機会があればまた来たいと思っていたが、その時は随分混んでいたのが印象に残っている。

今日はどうだろうと思って通りかかったところ、案の定、すでに駐車場は満杯で路肩駐車まで並んでいる。

人混みが極端にニガ手な私としてはこれは諦めるしかない。

結局、このところ定番になってきた橿原市の「あすかの湯」に向かった。

ここは施設が大きいのがいい。浴槽もいくつかあって、洗い場もたくさん設置されている。

久しぶりにサウナにも入ったりしてのんびりして、暗くなる前に家に帰ってきた。