針ノ木岳

4/22(木)はいよいよ針ノ木岳に向かう。

針ノ木岳は無雪期は何度か登っているが、積雪期は初めてだ。今シーズンの山スキーはこれまではすべて半日行程のルートで、標高差も羊蹄山の 900m が最高。しかし針ノ木岳は登山口の扇沢から頂上までは標高差が 1400m ほどある。トレランシューズでの歩きならそれほど大した標高差ではないが、山スキーでは 1000m を超えるとなかなかしんどい。何せ片足 2kg を超える重しがある。

再開後初めての本格的なルートで、山頂まで行けるかどうかかなり不安があった。正直、山頂まではムリなんじゃないかという気持ちの方が若干大きかった。

7時頃に扇沢の駐車場に到着した。平日だというのにすでにかなりの車で、スキーを持った人がたくさんいる。針ノ木はこんなに人気があるのかと驚いたのだが、実は大半がアルペンルートへ行く人たちだったということが後になってからわかった。

*赤が登り。青が滑り。

7時半にスキーをザックにつけて駐車場を出発した。扇沢に来るのは久しぶりだ。たぶん 20 年以上ぶりくらい。

このすぐそばに登山口がある。

正規ルートはしばらく左岸のこの道を行って、しばらくしてから沢に下りるのだが、雪が繋がっていたらすぐに右岸に出た方がいいという情報を得ていたので、沢床を眺めてみた。

水の流れははっきり見えるが、スノーブリッジで渡れそうな場所があったので、下に下りて右岸に渡った。スキーのトレースがあり、そこでスキーを履いた。

たくさんの人が針ノ木岳に向かっているはずと思っていたのだが、登山者の姿は一人も見えない。

しばらく進むと河原を歩いている二人が見えた。

右側が落ちた片斜面をずっと進むのだが、大きな堰堤をいくつか越える。この手前の斜面が傾きが急で、しかも北斜面なので陽が当たらずに凍結している。

ここでクトーを装着することにしたのだが、なかなかうまく前のビンディングを踏み込むことができない。ぐっと踏み込むとつま先がずれてしまう。一体何度やり直したことだろう。10 分くらい格闘していたんじゃないだろうか。

そうこうするうちに後ろから男女パーティがいともあっさりと追い越して行った。おそらく先ほど河原に見えていた二人だと思う。

しかしここでクトーを装着しておいて良かった。堰堤の乗り越しは結構苦労した。

針ノ木大雪渓の中心部に入ってきた。ここは日本三大雪渓の一つ。白馬大雪渓に次ぐ大きさで、三番目は剣沢大雪渓。前方に見えるのは先ほど先行した二人パーティ。

次第に傾斜が急になってきた。振り返ると爺ヶ岳。

マヤクボ沢との出会いが近づいてきた。針ノ木雪渓は左だが、針ノ木岳山頂に近い右のマヤクボ沢に向かう。ここは残雪期限定のルート。

ちょっとしたプラトーのような場所で最後の登りに備えておにぎり休憩にした。12 時 8 分。かなり疲れてきた。

写真では大した傾斜には見えないが、ジグザグを切って登る。すぐそこに見えるコルがなかなか近づいてくれなかったが、ようやく山頂が見えた。山頂は右奥のハゲた部分。

コルに出たら槍ヶ岳がど〜ん。午後1時 27 分。

ここからは激坂なのでスキーとザックを置いてアイゼンに履き替えて念のためにヘルメットをかぶって、カメラとピッケル、ウィペットだけで行く。写真ではそれほどには見えないけれど、斜面上部はピッケルとウィペット のダブルアックスで登った。

激坂を上り切ってあと少し。

午後1時 57 分、ようやく針ノ木岳山頂(2820.7m)に到着した。本当にうれしかった。扇沢から6時間半かかった。

山頂からの全景。

ダブルアックスで登った斜面は山側を向いて慎重に下って、いよいよ滑り。

午後になって気温が下がって、雪質は多少マシになっていた。しかしなかなかの急斜面で何度かコケた。

それでもやはりスキーは早くて、6時間かけて登った斜面を1時間少々で下りてきた。

午後4時前に駐車場に戻ってきた。

快い疲労感と満足感に浸りながら、大町温泉郷の「薬師の湯」に向かった。ここは昔、何度か来たことがあるが、それ以上のことはもはや記憶に無い。

夕食をとったり、コーヒーを飲んだりしながら時間調整をして午前0時ちょっと過ぎに高速を下りて無事帰宅した。

今シーズンの山スキーでは最も充実した一日だった。