朝5時前に起きて、6時15分にヘッドランプで出発。寒かったので雨具の上下を羽織って歩き出した。
歩き出してほんの少しの所に水場があった。明るかったら見えていただろう。そして、ほどなく石畳の道になった。
不気味な池は高原池。写真ではよく見えない。ずっと登り基調で早くも暑くなってきたので雨具を脱いだ。
大門王子。
稜線の向こうに陽が昇ってきた。私が山で一番好きな時間帯。
十丈王子。平安・鎌倉時代は重點(じゅうてん)王子と呼ばれていた。
小判をくわえたまま、飢えと疲労のためにここで倒れたという巡礼を弔ってまつられた小判地蔵。
悪四郎屋敷跡、上多和茶屋跡を越えて、大坂本王子。
R311 がすぐそばに迫ってきて、道路の反対側に道の駅・熊野古道中辺路が見えた。先を急ぎたいのでパス。
そしてようやく牛馬童子像に到着した。実は明治時代に造られたものらしい。
時間は9時ちょっと過ぎ。思ったよりも順調に進んでいる。トレイル区間の方が標準コースタイムがゆるい感じがする。ひょっとしたら継桜王子10時の関門に間に合うかも・・・。ほとんど諦め気分だったのが、ちょっと希望が蘇ってきた。
展望台から近露の集落を見下ろす。
近露王子には9時15分に到着した。
しばらく車道を行って、比曽原王子。
そして関門の継桜王子に10時7分に到着した。
ここで茶屋の前のベンチに座って補給しながら、これからどうするか思案した。リタイアするのならここが最終ポイントになる。
ここから熊野本宮大社までの標準コースタイムと最終バスの時刻までの時間はまったく同じ6時間30分。トレイル区間ではわりと短縮できていて、滝尻王子からここまでの標準コースタイム6時間50分のところを5時間半ほどで来ている。アクシデントさえ無ければ間に合いそうだけれど、余裕があるとは言えない。
もしここでリタイアしたら再挑戦するかどうかは微妙なところだ。紀伊田辺から滝尻王子までの車道区間はもう歩きたくない。しかし滝尻王子スタートの再挑戦ではやはり満足感に欠けるだろう。熊野速玉大社まで行くのであれば話も別だけれど。
もうあと30分早く出発していれば迷うことは無かったのだけれど、今となっては後の祭りだ。
やはり覚悟を決めて行くしかないだろう。まるで関門に追われるトレランレースのようだけれど、久しぶりにそういう気分を味わうのも悪くは無い。そういう状態だからこそ 100% の力が発揮できるということもある。それに正月早々、連続敗退というのは何としても避けたい。
10時20分、熊野本宮大社に向かって出発した。
しばらく車道を行く。まずは中川王子。しかし本当の王子跡は山道を少し登っていかなければならないのでパスした。
お次は小広王子。ここも同様、山道には上がらず。すでに肩の裏側がかなり痛い。
このあと山道に入って、しばらく登って熊瀬川王子。このあたりで反対向きに歩いているパーティに出会った。山道で他のバーティに出会ったのは今回初めて。
どんどん下ると車道に出た。ところがここから先が通行止め。実は 2011 年の台風での被害とのこと。
そう言えば案内に一部迂回路があることが記載されていた。本道との合流地点まで1時間半と書かれている。案内の標準コースタイムは本来の道で書かれているので、実際には迂回分をプラスして考えなければならない。さて、どれくらい余計にかかるのだろうか。こんなに長い間通行止めになっているのであれば、ネットで公開している案内は最近のコースで記載しておいてほしい。
いずれにしてもここまで来たら先に行くしかないので車道を進む。このまま車道で行くのかと思ったら、トレイルに入る道標があった。以外としっかりした道で、ずっと以前からあった道ではないかと思う。それにしても登りがずっと続く。
関門時間が気になってきたけれど、ここはあせらずにじっくり歩く。ロングトレイルを最短時間で歩くコツは、体力を消耗するような登りはあまり頑張らずに、平坦や緩い下り道、そして林道でペースを上げること。登りで頑張っても実はそれほどの時間短縮にはならない。
と思ってじっくり構えて登って、峠を越えて下りになったところで一息ついて大福休憩にした。そこでコースタイムを確認したところ、この先、本道に出会うまでどのくらいかかるのかがわからないのだけれど、ざっくり関門時刻から 30 分くらいは遅れている感じだ。
ギアチェンジして急いで下って、その後の林道部分は小走り。またトレイルに入って、迂回路に入ってから約1時間で本道合流地点手前の蛇形(じゃがた)地蔵に着いた。
ほどなく本道に合流。
少し行って湯川王子。おおむね標準コースタイムくらいまで戻っていた。ちょっと安心した。
この後、三越峠(みこしとうげ)までの登りは九十九折れで苦しかった。
次の目標は船玉神社なのだけれど、ここに向かう古道がまたもや通行止めになっていた。これは昨秋の台風の影響のようだ。林道をそのまま進む。重荷がこたえるので時々腕を後ろに回してこぶしでザックを支える。
迂回路ということになっているけれど、時間的にはショートカット。三越峠から1時間、2時前に発心門(ほっしんもん)王子に到着した。
標準コースタイムであと2時間くらいのところ、最終バスまで2時間 40 分あるので、もう大丈夫だ。一気に気が楽になった。
ここからはずっと車道で猪鼻(いのはな)王子。王子跡には多くの場所でこのような水飲み場や水道がある。
トレイルになったかと思ったらまた車道になって、思い出の果無山脈(遠方の山脈)。
そして伏拝(ふしおがみ)王子。
3時7分、小辺路との合流点の三軒茶屋跡に到着した。ここははっきり覚えている。時間があるのでベンチでパウンドケーキを食べた。
小辺路で来た時はここから先は観光客風情の人たちがたくさんいたけれど、今日は真冬のせいか誰にも会わない。
車道に下りて、最後の祓殿(はらいど)王子。
3時48分、熊野本宮大社の裏門に到着した。
中は撮影禁止なので写真は無し。無事到着したお礼に本殿でお参りした。もっと感激するかと思っていたけれど、それほどでもなかった。小辺路の時の方が満足感が大きかったように思う。
石段を下りて正面の山門に到着したのは3時55分だった。
ここの前にあるバス停を見ると、誰もいない。本当に便があるのか心配になったけれど、時刻表を見ると間違い無い。
時間があるのでバス停に荷物を置いて大鳥居まで行ってみた。日本一の高さ(33.9m)で、大神神社の大鳥居(32.2m)よりも大きい。ただし平成12年完成の鉄筋コンクリート製で、大神神社の大鳥居も昭和61年。歴史的価値は現時点ではまだ無いと言ってもいいでしょう。
明治22年の水害まではここの先の大斎原(おおゆのはら)に社殿があった。
バスは定刻(4時40分)をちょっと過ぎてやってきた。乗客は私以外は出発直前にやってきた中国人らしき女性二人連れだけ。この二人も少し行った温泉で下りて、その近くの温泉で男性客が一人乗ってきて、田辺の市街地に近づくまではずっと乗客二人だけという状態だった。
2時間10分ほどかかって、前日出発した紀伊田辺駅に戻ってきた。
gps のトラックによると今日のコースは約 33km。二日で 64km ほど歩いた。古道を楽しむというよりは関門に追われるトレランレースのようになってしまったが、あまり文化的な素養のある人間ではないので、自分としてはこういうのが一番楽しい。
中辺路はこの先まだ熊野那智大社、そして熊野速玉大社まで続くけれど、これをやるかどうかはちょっと微妙。気が向いたらということにしておこうと思う。