高野山黒河道から京大坂道

高野山はずっと興味の対象では無かった。
随行の仕事をするようになる前は吉野や高野山はごちゃごちゃの印象で、登山の対象として見たことが無かった。
随行の仕事のおかげで近郊の低山のおもしろさに気付いて、ここ何年かはこれらの地域へ頻繁に足を延ばすようになってきたが、めぼしい未知のロングルートがだんだんと少なくなってきた。
朽木や大峰などは致し方なく車で行くけれど、車だと元に戻ってこなければならないし、帰りは時間的にどうしても部分的には渋滞に巻き込まれてしまう。
だからできる限り公共交通機関で行きたい。
この週末はできれば大峰の山上ヶ岳へ行きたいと思っていたのだが、ヤマレコで最近行った人の記録を見ると、かなりの積雪のようだ。
雪山は好きだけれど、そうは言っても今さらラッセルはやりたくない。
そこで地図を眺めていて目に入ったのが高野山。
高野山にどんな山があるのかすら知らなかったのだけれど、調べてみると標高はせいぜい 1000m で、直近でも積雪はそれほど大したことが無さそうだった。
それに電車の駅からのロングルートが設定できそうで、もうこれしかないと思った。
設定したルートは、南海(JR)の橋本駅をスタートして黒河道(くろこみち)というルートで高野山に上がって、高野三山を周回。
その後、金剛峯寺を通って天狗岳に登って、京大坂道(きょうおおさかみち)を下る。
京大坂道は極楽橋から下はずっと車道のようだけれど、ランナーの端くれならやはりここは走って橋本駅まで戻るしかないだろう。
40km くらいにはなりそうだけれど、久しぶりにワクワクしながら始発電車で暗い中を出かけた。

橋本駅前で準備を整えて、出発したのは7時7分くらいだった。
気温は低かったけれど、今日はわりと走れるパートが多いのではないかと思って、上は長袖クロロファイバーシャツにトレラン用長袖ジップシャツ。下はロングタイツのみにした。シューズは HOKA の Stinson ATR。
橋本橋で紀ノ川を渡る。
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南海の高野線の踏み切りを渡るといきなり細道に入るようで、ちょっと迷ったけれど、すぐに世界遺産登録ののぼりなどがたくさん出てきた。
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道は車道(と言っても細いコンクリート舗装の坂道)になったり土道になったり。
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少し登ると見晴台に出た。
昨年、何度か足をはこんだダイトレの紀見峠から岩湧山の稜線。
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登山道は杉の枯れ葉がたくさん落ちていて、登山者は少なそうな気配だ。比叡山の登山道のようなものをイメージしてきたのだけれど、ずいぶん雰囲気が違う。
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「黒河道」と言っても一本道ではなく、途中で分かれている所が何カ所かある。どちらへ行っても先では合流するのだけれど、距離や歩きやすさなどは違いがあるようだ。
今回はあらかじめ、最短距離のルートを gps に入れてきた。
よくわからなかったのが明神ヶ田和という分岐で、予定のルートはずっと下っている。ここまできてこんなに下りが続くというのは思っていなかったので(調べていればわかったことなのだが)、少し不安を感じたけれど、所々に道標はあるので、沢沿いの道を下りて行った。部分的には足を滑らせると沢に落ちてしまうような箇所もあった。
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高野山はわりとクマがよく出没するらしい。冬は大丈夫だと思うけれど、山スキーへ行っていた頃に3月の乗鞍周辺で何度もクマに遭遇しているので、注意は必要だ。
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出発して2時間半で久保小学校(廃校)に到着した。
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10 時 20 分に、ようやく今日最初のピークの雪池山(ゆきいけやま)への分岐に着いた。
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このあと、少し登って四等三角点のあった所で、今日初めて腰を下ろしておにぎり休憩にした。
樹林帯で展望がきかないので、ここが雪池山の山頂かと思っていたのだけれど、実は山頂はもう少し先だった。
ピーク(988m)へはなかなかの急登で、おまけに踏み跡もあまりはっきりせず、わずかではあったけれど息を上げて登った。
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ほとんど 1000m だと言うのに、雪はほとんど無い。緯度がほとんど同じくらいの大峰は、最近の豪雪の前でも 1000m まで上がればかなり雪が現れてきていたのに、どういうことなのだろう。おまけに北斜面だと言うのに。
予定ではこのまま南下して楊柳山(ようりゅうやま)の方へ向かうつもりだった。
実はその方向に踏み跡があったのだけれど、そちらは方向がおかしいと思い込んでいて、実は変な方向にあったテープマークに引かれてそちらへ下りてしまった。
少し下りて方向がおかしいということに気が付いたのだけれど、あの急登をまた登り返す気力が出ず、ピークを巻いて元の道に戻ることにした。
無事、黒河道に戻って、南へ向かう。平坦な道だ。
途中、雪池山への分岐の標識があったので、あの踏み跡を辿ればここに出てきたのかも知れないと思った。
楊柳山への分岐の子継峠(こつぎとうげ)に到着。
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この先で、今日初めて単独行の登山者に出会った。
楊柳山(1008.6m)には 11 時 27 分に到着した。出発して4時間 20 分。
写真を撮っただけで先を急いで、11 時 52 分に摩尼山(まにやま、1004m)。
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ここから一旦、弘法大師廊へ下る。どういうわけかこのあたりはわりと積雪がある。
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地形図ではこのあたりから左へ、転軸山(てんじくやま)へ上がる道があるのだが、その登り口がわからない。
さすがにこのあたりは観光客で混雑していて、こんな所にこんな場違いな格好でウロウロしていたくない。
この左(西側)の転軸山の斜面のあたりに古いお墓がたくさん建っている所があったので、そこに突入して行った。
ヤブはそれほど濃くなかったので、そのまま強引に gps のルートの方向に上がって行った。
ほどなく、かすかな踏み跡に合流した。
それを辿ると、無事、転軸山の山頂(915m)に出ることができた。
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さて、これで今日のメインイベントの高野三山を巡ることができた。
できれば 12 時には高野山の街に出たかったのだけれど、街に出るのは午後1時くらいになりそうだ。
金剛峯寺までの道は以外とわかりにくかった。一度は大きな公園に入ってしまって、分岐に戻るのが面倒で車道脇のヤブを這いずり上がった。まさか街中でヤブこぎをすることになるとは思わなかった。
当たり前と言えば当たり前なのだけれど、宗教色の強い街だ。
立派な建物がたくさんあって、これだけの施設を維持しようと思ったら、財テクでもやらないと資金繰りが大変なのかもと思ったりした。
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メインストリートを西に向かって大門へ。
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そして最後のピークの弁天岳へ向かう。
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ここの登りはなかなか苦しかったが、午後1時 45 分に弁天岳山頂(984.2m)に到着した。
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登山道で女人堂に下りる。女人禁制の時代の名残。
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あとは京大坂道をひたすら下るだけだが、まだ距離はたっぷりある。
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不動坂は土道の旧道と石畳の道があって、私は旧道を下ったのだが、部分的にはずいぶん荒れていた。
距離的には旧道の方が若干短いけれど、時間的には石畳の道の方が早そうだった。
極楽橋には午後2時 35 分に到着した。
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ひょっとしたら「ここから電車で」という気持ちが出るかも、と恐れていたけれど、幸いそういう気持ちはまったく湧かず、迷うことなく車道を下った。
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ここの車道は道幅が狭くて、中型車なら歩行者は思いっきり避けないとすれ違えないくらいなのだが、生活道路などでわりと車が走る。朽木の県道をもっと道幅を狭くしたような感じだ。
途中に見所は所々あって、白藤小学校(廃校)。
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結構な急坂があったりして、随分下りてきたのだが、進む方向に丘があるのが気になる。
ここは九度山で、丹生神社・日輪寺の前から登り坂が始まった。
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あとは淡々と下るだけと思っていたので、この期に及んでの登りは気分的に(体力的にも)堪える。
とは言っても登りは 10 分くらいで、峠に上がるともう登りの無い景色が広がっていた。
学文路(かむろ)では苅萱堂へ立ち寄った。
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最後の悪魔の囁きの学文路駅への誘惑も断ち切って、紀ノ川まで戻ってきた。
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橋本高野橋を渡って、橋本駅には午後4時 50 分にゴールした。
約 42km、9時間 45 分の旅でした。