熊野古道中辺路1日目

せっかくの3連休。特に日曜日と月曜日は天気も良さそうなので、久しぶりにテント泊で出かけたいと思った。しかしさすがにこの時期に積雪のあるようなまともな山は気が向かない。さりとて街中歩きでは芸がなさ過ぎる。
そこで思いついたのが熊野古道の中辺路(なかへち)。
2年前に小辺路を歩いた時から中辺路の事は知ってはいたけれど、車道部分が多そうであまり惹かれなかった。しかし今回の目的にはかなり合致しそうだ。標高も高くて 700m 未満程度なので、雪が舞うことはあっても積雪は無いだろう。
紀伊田辺から新宮までの全コースだと 130km くらいになるけれど、よく歩かれているのは滝尻王子から熊野本宮大社までの約 40km。紀伊田辺からスタートすれば 60km 少々ということで、2日行程にはちょうどいい感じだ。小辺路よりは若干短く、アップダウンも少ない。
ただ、アプローチが遠くて、しかも時期的に日照時間が短いので、実質行動時間は限られる。さすがにこういうコースで夜間ヘッドランプ歩行はやりたくない。
それと、小辺路の時は5月だったのでシェルターと薄いシュラフで何とかなったけれど、この季節は標高が高くなくてもしっかりしたテントとダウンのシュラフでないと不安だ。当然、荷物は重くなる。結果的には荷物は 11kg くらいで収まったけれど、体感的にはずっしりと重い。
早い時間は特急列車が無いので、5時3分の始発で出ても紀伊田辺に到着したのは 10 時前だった。

小辺路の時の帰路以来の紀伊田辺駅。駅前で準備をして、出発したのは 10 時 15 分だった。
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ハナから改札口は駅の北側と思っていたので、出発早々、反対方向に歩き出してしまった。地図にははっきり南側になっているというのに、何たること。gps のおかげですぐに気が付いた。
コースガイドに記載されているように、秋津王子に寄るために会津川を渡る。
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ちなみに「王子」とは「王子社」のことで、熊野の神様の御子神(みこがみ。子にあたる神のこと)が祀られているところで、参詣者の休憩所でもあった所のこと。中辺路の道中にたくさんある。
平坦な道なのでちょっとジョグにしてみたが、すぐにやめた。とても続けられないと感じたし、ムリに続けたら後でとんでもないことになりそうだった。
実は 30 年くらい前に、テントとシュラフ、コンロを担いで3日間で琵琶湖を一周したことがある。確か年末だったように思う。琵琶湖一周は 180km くらいあるので、1日目と2日目は 60km 超を進んだはずだ。
食事は現地調達だったものの、山岳テントに今より重いシュラフ、ガスコンロだったので、荷物の重さは今日のものとほとんど変わらなかったはずだが、途中で店に入って食事をしたりしていたので、走る時はキロ6分くらいだったと思う。
キロ6分なんて今なら練習会でトラックを走る時でもそんなに楽なペースではない。フルマラソンで4時間10分くらいのペースなので、大阪マラソンなどではこれくらいのランナーが一番多いのではないだろうか。
そんなことを思い出しながら好天の車道を先を急いで歩いた。
出発して 30 分足らずで秋津王子に到着した。下調べでわかってはいたけれど、元の本当の場所がどこだったのかは今はもうわからないとのことで、わざわざ立ち寄るほどのものではないのだけれど、まぁせっかくなのでついでに・・・という程度のこと。単なる自己満足です。
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ひたすら車道で次は万呂王子。単なる道標にしか見えない。
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次に三栖王子を目指すが、ようやく古道らしき道に入った。
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三栖王子跡。
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王子跡にはだいたいこういうデザインの標識が立っている。じっくり読んでいると時間がかかるので、写真を撮ったら先に進む。ここではそばで大福休憩にした。
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しばらく古道を行く。どうもあまり歩かれていない様子で、枯れ枝などで結構道が荒れている。
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南方熊楠山中裸像撮影場所。
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不明瞭な道を辿って新岡坂トンネルの先で車道に出て、八上王子。
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ここの旧道トンネル越えで結構時間がかかったので、稲葉根トンネルは車道を行く。
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トンネルを出たら稲葉根王子。
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富田川左岸の車道から少しそれて、一瀬王子。ここでおにぎり休憩にした。そろそろ肩の裏側が痛くなってきた。
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おにぎりを食べながら地図を見ていたが、どうも期待していたほど行程が進んでいない。今回のコースは2万5千の地形図を A4 サイズで6ページ(3枚)にプリントしてきたのだけれど、何とか今日中に3ページ目の最後くらいまでは進んでおきたい。明日は帰りの最終バスの時間が決まっているので(4時40分)、何が何でもその時間までには熊野本宮大社に着かなければならない。
そんなわけでこの先、富田川右岸に渡って少し登って行くルートをやめてこのまま左岸を進んで、鮎川王子だけ橋を渡って寄ることにした。
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鮎川王子が合祀された住吉神社。
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このあとしばらく車道を進んで、藤原定家の歌碑を過ぎると古道になった。
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川の右岸には交通量の多い R311 が見えるので、ちょっと不思議な雰囲気。対岸に道の駅があるけれど、立ち寄ることはできない。
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車道に出て R311 を渡って右岸に移って、清姫の墓所。清姫がどういう人なのか、私はよく知りません。
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そのあと単調な車道を淡々と進んで、午後4時15分、6時間かかってようやく滝尻王子に到着した。ここまで 26km くらい。
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ここから本格的な古道が始まる。しかし日没までもう1時間も無い。持ってきた地図の2ページ目がようやく終わったあたりだ。3ページ目の終わりまで行くことは到底不可能なので、今日の目標を高原熊野神社にした。ここは水があるらしい。明日の行程はかなり長くなってしまうが仕方無い。
パンを食べて、4時半に出発した。念のために水を 1L ほど詰めておく。ここからは 500m 毎に標柱がある。ここが起点。
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いきなり急な石段が始まる。
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少し上がると胎内くぐり。時間があればザックを下ろしてくぐってみたいところだけれど、そんな時間は無い。
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そして乳岩。昔、奥州の豪族・藤原秀衡(ひでひら)とその妻が熊野詣でに来た時、ここで妻が産気づき、この岩屋で出産したという伝説がある。
夫妻は赤子をここに残して熊野に向かったのだが、その子は岩から滴り落ちる乳を飲み、狼に守られて無事だったので、奥州へ連れ帰ったと伝えられている。
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さらに登って、不寝王子(ねずおうじ)。
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少し道がなだらかになってきたけれど、またこの先にはしっかりした登りが待っていた。そろそろ薄暗くなってきた。
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飯盛山展望台はカットして先に進む。5時半近くになって、ついにヘッドランプの登場となった。そして車道に出た。
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実は車道に出たらすぐに反対側の古道に入らなければならなかったのだけれど、暗くて気が付かずにそのまま車道を進んでしまった。地図を見るとこのまま進むと先で合流するので、もうそのまま進む。
標識に従って横道にそれると、細い急な登りの石畳の道になった。
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ひょっとしたら高原熊野神社は過ぎてしまったのではないかと思ったら、車道に合流した所に標識が立っていた。案の定、400m も行き過ぎていた。古道沿いにあったのかも知れない。
ちょうどこのそばに涸れた芝生の広いスペースがあって、絶好のテント場だ。夕食分の水はあるし、さっき登ってくる途中に送水パイプのようなものから水があふれている所があった。6時前、今日のねぐらはここにする。
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帰ってから gps のトラックを確認したら、31km ほど進んでいた。一般的にはハイキングや登山の案内表示は実際の距離よりも長めに表記されていることが多いけれど、和歌山県が提供している中辺路の案内は実際の距離より短く表記されているようだ。標準コースタイムよりは早かったけれど、それにしてもわりと厳しいタイム設定だと感じた。
夕食後に地図を眺めていたが、まだ全体の4割くらいしか進んでいない感じだ。最終バスまでに熊野本宮大社まで行くのはかなり厳しそう。地図4ページ目終盤の継桜王子(つぎざくらおうじ)は R311 のバス停が近いようなので、ここがゴールになるかも知れない。ここを過ぎると途中敗退はできなさそうだ。この先、熊野本宮大社まではまだ 22km くらいあって、標準コースタイムは6時間50分となっている。もし10時までに継桜王子に着いたら先に進もうと考えたけれど、かなり厳しそうだ。
夜中にトイレで外に出たら、素晴らしい満天の星空だった。すでに月が沈んでいるので、目のいい人なら天の川が見えたかも。

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