飯田線、夏焼集落

たまたま見たテレビ番組でJR小海線のことを紹介していて、一度乗ってみたいと思っていた。

小海線は山梨県西端の小淵沢から長野県の小諸を結ぶ路線で、小淵沢に行くなら名古屋から中央本線で行くのが一番都合がいいのだが、ついでなのでこれも一度乗ってみたいと思っていた飯田線を経由して行こうと思った。

12/23(火)の朝に出発して、まずは新幹線で豊橋まで。

ここから各停で飯田線を北上する。駅の成城石井でお昼の巻き寿司を買っておいた。

思ったよりも住宅街が続く。

2時間以上走って、ようやく天竜川が望めるようになってきた。巻き寿司を頬張りながら車窓から眺める。

午後1時過ぎに最初の目的地の大嵐(おおぞれ)駅に到着した。

何とも魅力的な駅名。もちろん無人駅。

そばに鉄橋があって、天竜川の対岸にちょっとした集落があるので、電車の時刻に合わせてバス便が運行されている。

山肌の崩れやすい急斜面のことを「ザレ」と呼んだりするが、このあたりの天竜川の河岸はそういう地形が多いので、その「ザレ」がなまって「ゾレ」になったとか。

が、それが目的で下車したわけではなくて、ここから少し離れたところに夏焼(なつやき)集落という廃村がある。絶壁にへばりつくような地形から「天空の集落」とも呼ばれている。そこを訪れてみたいと思ってやってきた。

まずは1km少々のトンネルを抜ける。

狭いトンネルだがトンネルを抜けた先は行き止まりなので、車で通るのは夏焼集落目的の人くらいしかいない。トンネルは短いのと長いのと2つある。

まるで胃カメラの映像を見ているよう。

ヘッドランプを持ってきているのだが、蛍光灯が点いているので着けずに進む。部分的に真っ暗になるところもあった。

向こうから一人の人がやってきた。同じような人がいるのだ。

トンネルを抜けたら佐久間湖が広がっていた。

集落の方へ行こうとしたらロープが張られていた。

入るなということかと思ったが、そういう表記も見当たらないので、突入することにした。

道は少し崩れているところもある。

この先には荷物運搬用のモノレールの残骸があった。座席も二人分ある。

この先から急な石段が始まる。

振り返ると佐久間湖が見下ろせる。

茶畑の跡。

階段を5分ほど上がると集落にたどり着いた。

郵便配達の人は大変だっただろうと思う。

建物の間を上がると神社がある(諏訪神社?)。

戸を引いてみたら開いた。

床にこんなものが置いてあった。

せっかくなので「大阪から来ました」と記しておいた。

このあたり、祠がたくさんある。

この横にも建物があったので戸を引いてみたらここにも祠。

祠の扉を開いてみると、

モノレールの終点。

家の玄関の戸に手をかけてみたら開いた。

最後の住民が2015年に離村して廃村になった。

人が住み始めたのは16世紀の頃で、戦いに敗れた一族が住み始めたらしい。

春に焼畑をして生活を始めたので夏焼という名称になったとか。

今でもたまに旧住民が訪れているらしい。

帰りはトンネルでヘッドランプを着用した。

時間があるので駅の先に行ってみたら、こんな立て看板があった。

どこが大嵐峡なのかわからない。

今宵の宿はここから数駅先の平岡駅にある。

飯田線には魅力的な駅名がたくさんあるのだが、中井侍(なかいさむらい)駅というのはちょっとびっくりした。

調べたところ、かつてこのあたりに中井姓の侍がたくさん住んでいたということで付けられた駅名とか。

宿は平岡駅の駅舎を兼ねた龍泉閣。

1泊2食で8000円という格安料金。夕食はシンプルな定食レベルだがボリュームはしっかりあるので満腹になった。

風呂は天然温泉。ただし源泉から引いているのではなく、天龍温泉から運んでいる。

ヌルヌルのアルカリ泉で、分析表によるとpH9.7。いわゆる美人の湯。

夕食の前後に2回入って温まった。