六甲縦走キャノンボールラン

一昨年のこの時期に初めて参加してから4回目のこの大会。これまで須磨スタートゴールを1回、宝塚スタートゴールを2回完走してきたので、今回2回目の須磨スタートゴールを完走して卒業ということにしようと考えていた。
スタートは須磨浦公園を午後9時。少し寒かったが、いきなり石段の登りが続くので、ノースリーブのメッシュシャツと長袖ジップシャツ、ロングタイツという定番スタイルで走り始めた。2回目を除いては荷物はすべて担いでいるが、念のために今回もそうした。
割と前の方からスタートして、階段もそれほどの渋滞にはならずに旗振茶屋まで上がる。体調はいい感じ。
栂尾山のピークカットはうまくいったが、横尾山のトラバースは見落としてしまった。須磨スタートのコースは目をつぶっていても大丈夫と思っていたので、ちょっと残念。
1時間足らずで須磨アルプスにさしかかる。ここは何度通っても緊張するが、夜だと下が見えないので楽に通過できる。
東山を越えたあたりで集団の先頭に出されてしまう。しかし特に不安も無く進んでいたのだが、ジャンクションピークを越えるところで『これで良かったかな?』と少し不安が頭を過ぎった。
少し行くと鉄塔があった。こんなところの鉄塔は記憶に無い。しかし道はしっかりしているのでそのまま進んでいたら、板宿への道標が現れた。やはりコースミスしていた。後ろには 10 人あまりが続いている。
ところが後ろにいた一人が、このままでも本来のコースに合流できると言って、みんなそのまま行こうとした。しかし私は方向がおかしいと思って、一人で元に戻ることにした。ここで戻ればロスタイムは数分くらいで済むはずだ。はやりジャンクションピークでは左に曲がらなければならなかったのだ。あのまま進んだ人たちはあの後どうしたのだろうか。
横尾の住宅街に向かって下っていく。道が広くてなだらかな、広い間隔で木の段のある場所になってきて、左側に住宅街が見えてきた。ここで安心して気が緩んだのか、足を何かにひっかけて前に転倒してしまった。
両手をついたが、勢いで側頭部と右膝を少し打った。両方とも擦り傷は負っていると思うが、それほど影響は無いだろうと感じた。右膝は本当なら少し止まって休んだ方がいいくらいだったが、走れないほどではないので、走っているうちに痛みも収まるだろうと思って、すぐに立ち上がって住宅街を走り続けた。
序盤からコースミスや転倒など、やはり気が緩んでいるのだろうと思った。いくら慣れたコースとは言え、トレイルは一瞬のミスが大ケガにつながる場合がある。ヒザの痛みは自然と収まった。
妙法寺の交差点を渡って少し行くと、ショートカットできる箇所がある。気を引き締めて十分に注意していたつもりなのだが、うっかりと見過ごしてしまった。見慣れない光景になったので気が付いて振り返ったら、50m ほど行き過ぎていた。あわてて戻る。
高取山の登りに入ると前の集団に追いついてきた。こういう登り勾配の箇所では私はそこそこのペースで行けているようだ。
高取山の下りに入るといつの間にやら集団の先頭の位置になっていた。しかし下りでまた道が不安になる。参道を下って途中で左側の公園のようなスペースに分かれるのだが、ずっと手前でそこと間違えそうになった。
う〜ん、どうもよくない。おまけにこのあたりから一旦痛みの収まった右膝がまた痛み出した。ちょっと不安な痛みだ。
丸山の住宅街に入る。ここからはしばらく登り基調になるので、ヒザの痛みもさほど気にならなくなった。
鵯越を越えて、水道局のところで今日初めてのエイド。ビールが盛況だが私はそこまでの余裕は無いので、小さなおにぎりと具入りスープをいただく。
この後も右に入る道があって一瞬不安を感じたが、無事菊水山の登りに入った。
スタートして3時間少々で菊水山を通過した。コースミスのロスタイムを考えると悪くないタイムだ。夜景が素晴らしい。
山頂はカットしてそのまま下りに入る。走りやすい尾根道への分かれはしっかりと確認できて、ちょっと気分良くなる。ヒザが少し不安だが、もうすぐ登りになるので何とかなるだろう。
天王吊り橋を渡って鍋蓋山の登りに入る。ここの登りはいつも気分的にこたえるのだが、それほど長く続くわけではないので、息が上がらない程度のペースで一気に登り切る。
それにしても今日はよくシューズをひっかける。転倒したのは一度だけだが、登りですら何度か引っかけている。気の緩みが一番だろうが、筋力の低下というのもありそうだ。また転倒して同じヒザを打ったりしたらそこで終わってしまいそうだ。
鍋蓋山の下りに入ると、右膝の痛みが一段と大きくなってきた。着地の時の足の動きを少し調整しなければならないくらいで、普段通りのスムーズな動きでは痛みが大きくてたまらない。
大龍寺で今日二つ目のエイド。豚汁をいただく。ここまでほぼ4時間。
市ヶ原では沢を渡ってからの上がり口がはっきりわからず、またもやムダに行き過ぎてしまった。こんな所でミスをするのは初めてだ。
トイレに寄って、いよいよ往路最大の登りに入る。おおむね1時間程度だが、以外に細かいアップダウンがあって、走ったり歩いたりの繰り返しになる。
登りが急になってきて、大きな岩の間を手を使って登ったりするようになると、かなり上部にさしかかってきている。なぜか gps の高度が 308m のまま変わらないので、どのくらいまで上がっているのかわからないのだが、前方が見える場所で確認したら摩耶山の鉄塔の明かりが思ったより先に見えた。
念のためにとジェルを補給したが、そこからは数分程度で山頂エリアに出た。スタートして 5 時間 10 分くらいだった。
掬星台では麺類とカレーの二つのエイドがある。食事のできるエイドはできれば離れた箇所にバランス良く配置してほしいのだが、参加費 3500 円の草レースなので、エイドがあるだけでも感謝しなければならない。
さすがにここまで上がってくると寒いので、あたたかい麺類が食べたかったのだが、どうも準備に時間がかかりそうな雰囲気だったので、カフェテラスのカレーの方へ行った。カレーはセルフサービスで、ご飯もルーも自分でよそうようになっていたので、すんなりと補給できた。おいしいカレーだったが、香辛料もしっかりと効いていて、後から身体が冷えそうな感じ。
ここまで来ると大きなヤマを越えたと感じるのだが、今日はいかんせんヒザ痛を抱えている。それでなくてもロードでペースが上がらないのに、一段とスローペースになってしまう。序盤は今日の往路は8時間少々くらいでいけるかもと思っていたが、9時間くらいになりそうだ。それよりもヒザの調子を考えるとむしろペースを落として復路に備えた方が良さそうな気もする。
みよし観音手前のエイドであたたかいスープをいただいて、一軒茶屋のエイドではソーセージを一つつまむ。このエイドではバラ肉の焼き肉もあったが、どちらかと言うとこういう大会のエイドでは炭水化物系の方がありがたいのだが。そう言えば大龍寺のエイドではフライドチキンがあった。
ここでスタートしてから7時間少々。おそらく往路は9時間くらいだ。
ここが今日の最高地点なので、これからずっと下り基調になる。しかし東六甲縦走路はなだらかなアップダウンが長く続いて、いつもならなかなか標高が下がらずにイライラさせられるのだが、今日のヒザの具合ではむしろありがたい。ずっと下りが続くと壊れてしまいそうだ。
5時を過ぎるとうっすらと空が白んできて、塩尾寺に近づく頃にはほぼ夜が明けていた。
休憩時に飲む味噌汁用の水を、塩尾寺で調達しようと考えていたのだが、門が閉まっている。横の方に隙間があったので、こっそりと境内に入ってみたが、手洗水のようなものが見あたらない。以前に一度境内に入ったことがあって、そんなものがあったように記憶していたのだが、記憶違いだったようだ。
がっかりして車道を下ると、ヒザの痛みが一段とこたえる。今回は往路のみで終わりにしようかという気持ちが大きくなってきた。篠山に続いての連続リタイアは極力避けたいところだが・・・。
レースではなくて個人的な行動でも途中でケガをしてしまう可能性はある。むしろそういう場合の方が自己責任で下りてこなければならないので、それに備えて六甲のようなほぼどこでもリタイアできるようなコースでケガを負いながら行動を続けるというのも大切なトレーニングかも知れない。
取りあえずは往路ゴールの塩尾寺下の広場で休んで様子を見ることにした。往路は 8 時間 55 分だった。
持参したおにぎりを食べて、アルミのレスキューシートに入って横になる。復路スタートは8時だが、7時頃から雨が降り出してきた。モチベーションが一気に下がった。体力的にはまだ余裕はあるが、精神的に前向きになれない。
おそらく復路はもう走ることはできないので、上部のドライブウェイでも歩くしかないだろう。それも雨の中、足を引きずって。そこまでやって自分を納得させるか、その後のダメージを避けて早く次の目標に向かうかという葛藤で、結局今日は往路で終えることにした。
ここから宝塚駅までは急な道をしばらく下って行かなければならないが、ヒザの調子は休んで良くなるどころか一段と痛みが増していた。まともに前に足を出して着地できない状態で、やはり止めて良かったと思った。駅の階段の下りもつらかった。
ヒザ痛のことは横に置くとしても、もう大会に参加するのは終わりにしようという気持ちが非常に大きくなった。このところずっとそういう気持ちがくすぶっていたが、いよいよ決心がついたという感じがする。
今のところエントリーしているのは7月のおんたけウルトラトレイル 100k のみで、9月の UTMF は抽選待ちだ。UTMF は当初から当たってほしいような当たってほしくないような微妙な気分だったが、今となっては当たってほしくないという方に大きく傾いた。そうすれば気持ちもすっきりする。
もし当たったらどうするか? この後の二日間、じっくりと考えておきたいと思う。