高島トレイル 大御影山、三重嶽、武奈ヶ嶽

先の日曜日(11/24)は高島トレイルを周回してきた。この日は少し前までの天気予報では雨予報だったのが、次第に雨が遅れてきたので、思い切って出かけることにした。

朝4時半に家を出て、途中でカップ麺とおにぎり、コーヒーで朝食をとって、7時前にビラデスト今津に到着した。ここに来るのは初めて。

初めてなので様子がわからず、立て看板で場所を確認してから平池(だいいけ)そばのスペースに車を停めた。実は離合用のスペースでした。

準備を整えて7時ちょっと過ぎに出発した。林道を少し戻って登山口へ。

道標に導かれて登山道に入る。

自然感たっぷりの気持ちのいい道。稜線に上がると木々の向こうに琵琶湖が望めた。

さらに進むと古道近江坂とバイパスの分岐に出会った。近江坂へ入る。

しばらく進むとバイパスと合流して、その後、林道と交差。

少し登ると大谷山からの高島トレイルに合流した。

このあとはしばらく素晴らしいブナ林が続く。思わず歓声が出る。

9時10分、最初のピークの大御影山(949.9m)に到着した。

ここでちょっと腰を下ろして一休みしようと思っていたのが、まさかの先客。単独行の男性でした。

写真を撮ったら早々に先に向かった。西側にはこのあと目指す三重嶽。

少し進んだところでぼたもち休憩にした。

一旦下って登り返して、小一時間で三重嶽分岐。

ここも気持ちのいいブナ林。稜線からは来し方の大御影山。

まさに極楽!!。こんなに気持ちのいい場所がこの世にあるのかと思えるほどの桃源郷だ。

11時ちょっと過ぎ、三重嶽(973.9m)に到着した。本日の最高峰。



幸い一人だったので、腰を下ろして琵琶湖や伊吹山、鈴鹿の山並みを眺めながらおにぎり休憩にした。真ん中左の突起が伊吹山。右の一番高いのが御池岳。その右に藤原岳。

さて、これから本日最後のピークの武奈ヶ嶽に向かう。比良の武奈ヶ岳には中学生以来もう何度も訪れているけれど、この武奈ヶ嶽はずいぶん以前から知ってはいるものの行くのは初めてだ。

結構距離があるので気持ちを引き締めて足を進めた。

テープマークを目印に進んでいたが、急坂を随分下ってきた。標高がどれくらいなのか確認しようと gps を眺めたところ、何とロストしていた!!。南の稜線を下っている。

テープマークはしっかりしているのでおそらくこのまま下って車道に出られるとは思うが、ここまで来て武奈ヶ嶽に行かずに終えるわけにはいかない。戻るしかないだろう。

標高差で100mくらいをヒイコラ登り返して間違った場所に戻ったら、標識の無くなった柱と高島トレイルのテープがあった。まったく気がつかなかった。

気を取り直して先に進む。若狭湾と琵琶湖が両方望める。これは若狭湾方面。たぶん小浜。

こんな稜線に結構大きな池がある。ここの水はどこから?

午後1時10分、ようやく武奈ヶ嶽(865m)に到着した。湖北武奈ヶ嶽と表されているが、どちらかと言うと湖西では?

今日、最後の展望で、比良山系。真ん中の一番高いのが比良の武奈ヶ岳。

高島トレイルに別れを告げて東側に下りる。

立派な道標があったのに、急に踏み跡が不明瞭になった。少ないテープマークを拾いながら何とか赤岩山(740.1m)まで来た。あとはひたすら下るだけ。

何の疑いも無くこの角川区という標識に従って下った。急坂を下ると下からバイクのエンジン音が聞こえてきた。

どれくらい下ったかなと gps を見たら、何とまたまたロスト!!。東側に下らなければならないのに南に下っていた。

たぶん集落までは下れるだろうが、戻る場所からは大きく離れてしまう。登り返すしかない。

結局、赤岩山まで登り返したが、東側には道は見あたらない。ヤブに少し入ってみたら、古いテープが見つかった。

古いテープを探しながら慎重に下った。こんな所を適当に下ったらとんでもないことになる。これまで何度も痛い目に遭ってきた。

それにしてももはや踏み跡すらほとんど無く、目印は古いテープのみ。しかもそれも倒木で先が見えない。

荒れた急斜面に難渋して、さらにテープ探しにも神経をすり減らし、午後2時35分、ようやく林道に下り立った。よくこんなルートでテープマークを見失わずに下りてこられたと我ながら感心した。

もうすでに快適だった稜線歩きの感動は醒めてしまっていたが、まだこの先、スタート地点までの林道走りが残っている。距離ははっきりとは確認してきていないけれど、おそらく1時間くらいはかかるだろう。しかも gps を見たところ、スタート地点まで標高差で 200m くらい登らなければならない。

石田川ダムを背にしてスロージョグで進む。

思ったより遠い。1時間たってもまだまだ先がある。対岸に天狗岩。

後ろから走ってきた軽トラの男性が「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。車道になってから初めて出会った車で、出会った車は後にも先にもこの1台だけだった。

もちろんここまできてキセルするわけにはいかないので「少し先に車を置いているので大丈夫です」とお返事した。

車に戻ったのは午後4時ちょっと過ぎ。出発してからちょうど9時間だった。後から調べたら車道部分はほぼ10km、トータル約32kmでした。

車に戻った時はやれやれという気分だったが、やはり今日のコースは本当に素晴らしかった。高島トレイルは部分的にはこれまでに何度も歩いているけれど、これまでで最高の雰囲気だった。

高島トレイルは全般的にアプローチが非常に不便なので、おかげで歩く人が少なくて自然感がたっぷり残っている。登山者が多いのは大谷山から三国山の間くらいだろう。ここはマキノ高原からすんなり来られて、周回もやりやすい。

今日のコースはぜひ雪のシーズンに再訪してみたいと思った。

書写山

11/18(月)は連チャンで姫路の書写山へ行ってきた。本来は1週間前の予定だったけれど、天気予報で降水確率が高かったために延期になった。

書写山は名前は知っていたけれど行くのは初めて。

姫路駅に集合してバスでロープウェイ乗り場へ。このバスも結構混んでいた。

ロープウェイには乗らずに住宅街を歩いて登山道へ。

ここも丁石があります。しかしここもゴールが何丁かはわからない。

五丁の展望台から瀬戸内海方面。実は淡路島が見えていた。

歩き出して1時間ほどでロープウェイの山上駅に到着した。

圓教寺へ。人気の観光スポットらしいが私は初めて。

入山料を500円払って中へ入る。

摩尼殿は立派。まるで清水寺。

そして大講堂(右)と食堂(左)。

さらに上に上がって、書写山の山頂(371m)で昼食にした。

元に戻って、摩尼殿は上から中に入った。紅葉を上から眺める。

実は摩尼殿のそばで猿まわしをやっていた。あまりそばでじっと見ているとチップを出さなければならなくなりそうなので、遠回しにチラッと見た。

下山は西坂参道へ。

ほどなくコンクリートの坂道になって、日吉神社に出た。

このあと下道を40分ほど歩いて、播但線の余部駅で解散した。

圓教寺はなかなか立派なお寺で、人気観光スポットというのはわかるような気がした。

和泉葛城山

先の日曜日(11/17)は講座で和泉葛城山へ行ってきた。和泉葛城山は3年前に個人的に行って以来。

登山口の牛滝山までは遠かった。好天の日曜日ということもあって、岸和田駅からのバスが超満員。ぎゅうぎゅう詰めのバスに小一時間揺られて9時半ちょっと前にようやく到着した。

まずは大威徳寺(大徳寺)へ。

紅葉が見事でした。

登山道に入って、一の滝。

このあたりはダイトレからは離れているけれど、やはり出てきた木の階段。

丁石が置かれているが、どこが終点なのか、そこが何丁なのかさっぱりわからない。

山道を1時間ほど登ったら車道に出た。しばらく車道を行く。この道は和泉葛城山頂に向かう道なので車がよく通る。

山上の駐車場に出る少し手前でブナ林の山道に入る。ここのブナ林は国の天然記念物に指定されている。

石段を上がって山頂の葛城神社へ。

高おかみ神社とも言うらしいが、こんな漢字パソコンにある?

山頂(858m)がどこなのかよくわからなかった。

展望台まで行って、そこで昼食休憩にした。

展望台から大阪湾方面の眺め。

展望台は人が多かったので、私は下の駐車場エリアに下りた。

午後は帰り道から少しそれてブナ林を散策した。

しばらく下ると杉(?)の植林になった。

林道に出て、ハシカケノ滝。

あとはひたすら車道で蕎原(そぶら)に向かう。渓流園地やレストランがあって、わりと観光客も来ている。

午後2時20分、蕎原のバス停に到着して、ここからバスで水間観音駅に向かった。

奥比叡

11/13は京都一周トレイルの講座で奥比叡を歩いてきた。

今日の集合地は前回解散したケーブル比叡駅。しかし私はいつもと同じく八瀬駅から歩いて行く。

浄刹結界の石柱も倒木に埋もれている。

峠から尾根に入るが、この道は歩くたびに踏み跡が不明瞭になってきている。しかし何度も歩いている安心感で油断していたのか、いつの間にやら山肌をトラバースする踏み跡に入り込んでしまった。

先月に下った道を上がるつもりだったけれど、トラバースになるのがちょっと早すぎるし、こんな道ではなかったように思う。

左の稜線を目指して適当に這い上がって、本来の道に戻った。今日は仕事なので一瞬不安になった。

八瀬から1時間20分ほどでケーブル比叡駅に到着した。

集合して、まずは林道を行く。蛇が池のスキー場跡。私の人生初スキーはここだった。確か小学生くらいの頃。転倒して捻挫して、その後はしばらくスキーへは行かなかった。

展望場所からは絶景が堪能できた。正面奥に蓬莱山と打見山。写真では霞んでいるけれど、右に琵琶湖が見えている。

歩きにくかった浄土院への石段は改修されていた。

浄土院は伝教大師(最澄)廟がある。これは拝殿。

そして西塔へ。

ちょっと寄り道してみろく石仏。鎌倉時代のもの。

峰道レストランのエリアで昼食休憩。好天のせいか平日にも関わらず車が多い。

レストランの展望台から眺める琵琶湖。遠方は鈴鹿山系。

玉体杉では先客が宴会をやっていた。

せりあい地蔵。

今日の一周トレイルコースは一旦ここで打ち切って横川(よかわ)へ向かう。

来月になると比叡山エリアの公共交通機関が冬場の運休に入るので、ここからの続きは来春に持ち越し。

そして横川のバスターミナルで解散した。

いつもはここからせりあい地蔵に戻って歩いて大原側へ下山するのだけれど、今日は事情があってバス、ロープウェイ、ケーブルで八瀬に下りた。

シャトルバスは大変な混みようで、横川が始発だったから良かったものの、途中の停留所では乗れない人も出た。このあたりの乗り物に乗るのは初めての経験でした。

釈迦ヶ岳、仏生岳

大峰の釈迦ヶ岳へは今年の4月に行った

この時は仏生岳まで足を延ばすつもりだったのだが、思いがけない残雪と厳しい斜面に阻まれて、逆の南の方に少し歩いてから戻って来た。

それが心残りだったので、快晴間違い無しの日曜日(11/10)に再度このコースに出かけてみることにした。

途中でカップ麺とおにぎり、コーヒーの朝食をとって、3時間以上かかって太尾登山口にやってきた。すでに正規の駐車場は満車で、手前の路肩のスペースに停めた。

準備を整えて8時前に出発した。

ここまで来る途中にも何カ所かクマの情報の看板が立っていた。でも今日は大丈夫。

「熊撃退スプレー カウンターアソールト・ストロンガー」。比良でクマに出会ったあと、ついに購入した。

本当に冷静に使えるかどうかはその場になってみないとわからないけれど、持っているというだけで安心感はずいぶんと違う。一度試してみたいという気持ちも少なからずあります。

急登を上がって稜線に出ると、大峰おなじみの光景が現れた。正面奥に釈迦ヶ岳。登山口の標高がすでに1300mほどあるので、登りは500m足らずくらいしかない。

ちょっとした出っぱりの古田の森。

まさに稜線漫歩そのもの。快適です。

かくし水は今日は流れていました。近くにテントが数張り。ここにテントを張ったら快適だろうなとは思うが、私は性格的にこういう場所でのんびり時間を過ごすということができない。

9時21分、出発して1時間25分ほどで釈迦ヶ岳山頂(1799.9m)に到着した。

山頂には10人くらいの登山者がいた。右のなだらかな山頂が仏生岳。真ん中奥が八経ヶ岳。

写真を撮ったら早々に仏生岳に向かう。いきなり古いロープの垂れた急な下り。前回敗退した箇所。滑りやすい急斜面をゆっくり下る。

前回は早々と敗退しておいて本当に良かったと思った。こんな場所にあんな装備(トレランシューズにチェーンスパイク)で突っ込んだら事故間違い無しである。

ヤセ尾根のなかなか厳しい道が続く。左側の高度感はかなりのもので、馬の背と書いてあったけれど須磨アルプスのそれとは比べものにならない。

大岩を鎖で強引に上がって空鉢岳(読み方不明)。後ろは釈迦ヶ岳。

なかなか荒々しい山容です。急斜面の細いトラバース道でちょっと緊張する。

水場は涸れていた。稜線直下なのでこんな場所に水場があるのが不思議だ。

このあたりに来ると道は穏やかになってきた。こんな道が続いてくれることを祈りながら足を進めた。それにしても釈迦ヶ岳から先は歩く人がかなり少ない感じ。おかげで静かで非常に気分がいい。

どうも奥駆道は孔雀岳のピークをトラバースしているもよう。一瞬、戻ってピークを経由していこうかと思ったけれど、どうせ同じ道を戻ってくるので帰りに立ち寄ることにしよう。

仏生岳もピークを経由していないようで、古い道標に従って山頂を目指す。

踏み跡があったのはこの少し上までで、そこから先はヤブを適当に上を目指して登った。

10時56分、仏生岳(1805.2m)に到着した。釈迦ヶ岳より少し高い。展望は無し。

ここで今日初めて腰を下ろしておにぎり休憩にした。

下りも適当で、行きに出会った道標より少し先で奥駆道に下りてきた。

そして帰りは孔雀岳を目指す。道はまったく無いので適当に進む。

仏生岳から30分ほどで孔雀岳(1779m)に到着した。

山頂からの下りは踏み跡があった。奥駆道に合流した場所には標識が立っていた。何とこんなはっきりした標識を見落としていた。

さて、いよいよ最後のいやらしい箇所の登りに近づいてきた。

このあたりの残置ロープは古くて細くて頼りない。鎖はしっかりしているのだけれど。

12時37分、釈迦ヶ岳に戻ってきた。やれやれ、これで一安心。

山頂は人だらけなので早々に退散する。

せっかくの好天なのであまりあせって下ってしまうのももったいないので、古田の森でどら焼き休憩を取った。

午後2時ちょっと過ぎ、無事駐車場に戻ってきた。

さすがに好天の日曜日ということで登山者は多かった。しかし釈迦ヶ岳から仏生岳の間では出会ったのは単独行男性二人だけ。おかげで気持ちのいい山行を楽しむことができた。

熊野古道中辺路3日目

今日の目的地は熊野速玉大社。そしてそこから新宮駅に向かう。しかし途中で那智駅のそばを通るので、時間次第では那智駅で終わることもできる。

一応の目安として、熊野那智大社が10時。那智駅に12時をタイムリミットにしようと思った。これを過ぎていたら熊野速玉大社には向かわないつもり。

那智駅から熊野速玉大社までの道はほとんど下道で、おそらく紀伊田辺から滝尻王子までのような道程になると思うので、時間によっては割愛してもいいと思っている。

定番の棒ラーメンとコーヒーで朝食を済ませて、朝5時にヘッドランプで出発した。夜中に少し雨が降ったようで、地面がちょっと濡れていた。

まずは昨日確認しておいた大雲取越の登山口へ。

5時45分に休憩所を通過。なかなか厳しい登りだった。昨日ならたとえ時間があったとしてもかなりしんどかったと思う。案内にある通り、水道が設置されていた。

厳しい石畳の登りが続く。胴切坂はいつ終わるのか。この先で終わりかと思ったら道が曲がってさらに登るということが何度か繰り返された。

ずっと樹林帯で、御来光を拝むことはできなかった。

歩き出して2時間、ちょうど7時にようやく中辺路最高地点(と看板に書かれていたが、実は先にもっと高い地点があった。ここは標高870m)の越前峠に到着した。

登山口の小口が標高65mなので、標高差800mの登りだった。ここで腰を下ろしてソイジョイなどを補給した。

行程から考えると熊野那智大社10時は厳しそうだ。

今日、初めての下りの道。かなり稜線に近い場所なのだけれど、少し下ったらしっかりした流れの沢筋になった。

越前峠から10分ほどで迂回路への分岐に出た。

ここも西側に林道で大きく迂回しなければならない。初めのうちは「これが林道?」というような荒れた道だったけれど、ほどなく林道らしくなってきた。とは言ってももはや車は通っていない感じ。

迂回路に入ってから40分ほどで元の道の地蔵茶屋跡に到着。

車道に合流したせいか、何と自動販売機がある。よく見ると下町の自動販売機より少し安い。何でこんな場所にある自動販売機が安いの? ひょっとしたら新しい機械に置き換える方がコストがかかるのかもと思った。

しばらく車道を進む。中辺路ではルート上に 500m 間隔で標柱が設置されているが、ここに来てその標柱の形状が変わった。何となくこちらの方が古くからある感じ。

ようやく大雲取越の半分を少し過ぎたくらい。もうすでにほぼ3時間かかっているので、熊野那智大社10時はムリだろうと感じた。

登り基調の車道をしばらく進んでいたら、古道に入る道標が現れた。あれっ? どうも手前で古道に入る分岐を見過ごしていたようだ。

このあとまた石畳のしんどい登りがしばらく続いた。

9時11分、ようやく舟見峠まで来た。標高883mと表示されている。越前峠よりも高い。

ここから太平洋が見えるので舟見峠という名称が付けられたようだが、今は木が茂っていてほとんど見えない。

しかしこの少し先の舟見茶屋跡の休憩所からは太平洋の絶景を眺めることができた。もう熊野速玉大社は諦めようと思っていたので、ゆっくり眺望を楽しんだ。

熊野那智大社に向けて石畳の道を下る。

おそらくワラジで歩いていたであろう昔の人にとっては問題無かったのだろうけれど、現代のゴム底の靴にとってはコケの生えた石畳の下りは最悪である。

道を石畳で整備するのは本当に大変な労力だっただろうと思う。おそらく現代に道路を舗装工事するよりもはるかに大変だったと思う。

しかし現代人の自分勝手を言わせてもらえれば、土道のままにしておいてほしかった。

タイムリミットの10時をすでに過ぎた10時12分、ようやく大雲取越の山道を越えてきた。

熊野那智大社に近づいて来たら、何とも表現できない騒音が耳に入ってきた。エンジン音のような気もするけれど、ずっとほぼ一定の状態で聞こえてくる。

わかった!! 那智の滝の水が落ちる音だ。木が茂っているのでここからはまだ滝は見えないけれど、もうあと少し。

10時33分、熊野那智大社のエリアに下り立った。急な雰囲気の変化にちょっととまどった。

とにかくまずは那智の滝へ向かう。標識に従ってガンガン下る。こんなに下って大丈夫なのかちょっと不安になる。しかし滝はまだまだ下のよう。

10分ほど下ってようやく滝壺に到着した。

ここは5年前に初の100キロマラソンの時のスタート地点で一度だけ来たことがある。しかしその時はまだ夜明け前で暗かったので、轟音が聞こえるだけだった。

熊野那智大社は那智の滝がご神体と思っていたのでこのそばにあると思い込んでいたのだけれど、実はここは別宮の飛瀧神社。熊野那智大社はどこ?

エリア全体を解説した看板をしみじみ眺めてみたら、熊野那智大社は何とこのエリアに下り立った所から少し横へ行った所だった。つまりこれまで下ってきた石段を登り返さなければならないということ。

大きく落胆したが、ここまで来て熊野那智大社にお詣りせずに先へ行くわけにはいかない。覚悟を決めて登り返す。

登り返しの途中でちょっと横道にそれて、人通りの無さそうな場所で補給休憩した。

滝から15分ほどかかって、ようやく熊野那智大社に到着した。ここまで無事に来られたことに感謝して、しっかりお詣りした。

そして表参道の階段を下る。もし最初に位置関係を把握して熊野那智大社に参拝してから滝に向かっていたら、表参道は通らずに終わってしまっていたので、登り返しも決して無駄では無かったということ。

そして大門坂の石の階段を下る。

久しぶりの王子跡で多富気(たふけ)王子社跡。

大門坂の入り口。ここから歩き始めて熊野那智大社まで行くのはなかなか大変だと思うが、大門坂を登っている人はたくさんいた。

ここを過ぎると道は何と言うことも無い普通の車道になる。

しばらく歩いて市野々王子。

ひたすら車道を進む。ずっと車道を歩いてきたせいか、このままずっと車道を行くのだといつの間にか思い込んでしまっていた。

「補蛇洛山寺・浜の宮王子」という標識を見つけてそちらに向かって、尼将軍供養塔まで行ったのだけれど、熊野古道の標識があったにも関わらず、元の車道に戻らなければならないと錯覚していて、ここまで登ってきた道を下まで戻った。

そして元の車道を少し先に進んでからミスに気がついた。しかし今さら戻る気にはなれない。なぜならこの道をこのまま進めばさほど遠くない場所でまた古道と合流できるのだ。

その古道の部分に何か見所でもあるのなら何が何でも戻らなければならないけれど、特にそういうものがあるわけでも無さそうなので、このまま先に進むことにした。このあと15分くらいでまた古道に合流した。

さらに広い車道を行く。これでも「世界遺産・熊野古道」の道ですか?



そして午後1時12分、最後の見所の補蛇洛(ふだらく)山寺に到着した。

すぐそばに浜の宮王子社跡。

那智駅はもう目と鼻の先だった。

すぐそばに道の駅(小さいけれど)や観光センターがあるので、紀伊田辺駅と同じような規模の駅かと思っていたら、実は無人駅でICカードも使えない。

列車の時刻も調べずに着いたのだが、ちょうど駅舎に入った時に乗りたい方向の列車が入ってきた。想定外の事態で、これに飛び乗っていいのかどうか判断できなかった。先の乗り換えなどを調べずに飛び乗るのは不安だったので、この列車は見送ることにした。

次の列車を調べてみたら1時間以上あと。しかし二つ先の紀伊勝浦駅で特急に乗り換えることができるので、これなら8時過ぎくらいには家に帰れそうだ。

駅の近くの酒屋の自動販売機でビールを買って、駅のそばの青空スペースに腰掛けて一人打ち上げをやった。

もうこれ以上先には進めない時間だったのでのんびり過ごせたけれど、もし自分で決めたタイムリミットより早い時刻に到着していたら非常に悩んだだろうと思う。

朝5時に出発したのですでに8時間以上、27kmほど歩いている。ここから先はほとんど下道歩きで、さらに14kmほど残っている。

もうすでに下道歩きはうんざりという気分だったので、本心はタイムリミットに間に合わなくて幸いという気持ちだった。巡礼者ではないので熊野三山へのこだわりはあまり無い。

3日間で85kmほど歩いた。熊野古道歩きはこれで一段落という感じ。熊野那智大社と熊野速玉大社の間はほとんど下道歩きなので、これのためにわざわざやってこようという気持ちにはなれない。

世界遺産の古道と言えども実は林道や車道部分はかなり多い。小辺路も10km以上車道が続くような場所もあった。

私の場合は山道を長く歩きたいというのが主目的なので、未舗装の林道ならまだしも車の走る舗装道路を延々と歩くというのはあまりうれしくない。

帰りの電車の車窓からは太平洋の海、そして美しい海岸線を楽しむことができた。


最初の目標地点までは行けなかったので、本当の意味での満足感は得られなかったけれど、この三日間に訪れたあちらこちらの光景を思い出しながら、心地良いまどろみの中に落ちていった。

熊野古道中辺路2日目

夜の冷え込みはそれほどではなくて、持参した中綿ジャケットやダウンパンツは着用する必要は無かった。

朝は6時5分に出発した。まだしばらく車道で、空が開けているのでもうヘッドランプは不要。10分ほどでようやく古道になった。

この先、沢筋のスペースに二張りのテントがあった。

しばらく進んで車道に下りて、前回迂回路だった場所に出る。今回も迂回路にまわる。

この迂回路はしっかりした登りがしばらく続いて、結構しんどかったのを覚えている。特に前回はバスの時刻に追われていたのであせった。

峠を越えて下ると林道に出る。林道をしばらく進んで、蛇形地蔵に向かう道も迂回路を行くようになっている。このことは事前の情報で知っていた。前回は蛇形地蔵の前を通ったのだけれど、今夏の大雨でその先が崩れているらしい。蛇形地蔵は前回通っているのでいいだろう。

わずかな距離の所を北側に大きく迂回して、前回出てきた場所に合流した。

湯川王子の前で腰を下ろして休憩した。出発して2時間少々。すでに肩が痛い。

このあと20分ほどの登りで三越(みこし)峠に到着した。

しばらく下って、また林道に出る。そしてこの先がまた迂回路。単調な林道歩きは肩の痛みが一段とこたえる。

9時48分、ようやく発心門(ほっしんもん)王子に到着した。ここはすぐそばまでバスで来られるので、突然観光客だらけになった。

ボランティアのような案内人が何人かおられて、ガイド付きの団体ツアー客もいる。欧米系の外国人客が多い。

少し戻って物陰で荷物を下ろして休憩した。

ここまで来ると熊野本宮大社がかなり近づいてきた感じがする。前回はここでようやくバスの時刻に間に合いそうという安心感を得た。しかし今回は熊野本宮大社はゴールではなくて、実質的なスタート地点である。ここで安心するわけにはいかない。

ここからしばらくは舗装道路で、ハイカーと観光客が一気に増えた。

水呑王子で水を補給しようと思っていたが、観光客でごったがえしていたので諦めた。

このあとはトレイルになる。今回唯一見かけた花らしい花。このあたりから翌日にかけて随所で見かけたけれど、名前はわからず。← アサマリンドウ(11/8)

三軒茶屋跡にはまたもや団体客。ここに来るのは三回目だけれど、こんなに人がいるのは初めて。

11時45分、ようやく熊野本宮大社に到着した。せっかくなのでお詣りをしていこうと思ったが、いずれも参拝者の行列ができていたので諦めた。こんなことは初めてだ。

表参道の長い石段を下りて、街のコンビニでコーラと菓子パンを買った。本当はおにぎりか総菜パンが食べたかったのだけれどいずれも無かった。橋のたもとに下りて休憩した。

今回はここが本当のスタート地点。しばらくは請川に向けてチョーつまらない車道歩き。

熊野本宮大社からほぼ1時間かかって午後1時2分、ようやく小雲取越の登山口に到着した。

熊野古道によくあるパターンで、民家のそばの細い路地を抜けて山に入っていく。

山に入って最初の頃にこちらに下ってくる何人かの人に出会ったが、1時間も進むと人にはまったく出会わなくなった。

なだらかな歩きやすい道で、しかも静かで気分がいい。

小雲取越に入って1時間40分くらいで小雲取越最高地点(おそらく。標高450mくらい)の百間ぐらに到着した。

中辺路では随一の絶景ポイントで、北西には果無山脈が見える。写真では霞んでいるけれど。

午後4時37分、ようやく小雲取越を越えて小口の赤木川にたどり着いた。

小口の集落の中の道は非常にわかりにくかった。ここも民家の軒下のような所をくねくねと通り抜ける。実は車道をそのまま行っても良かったようだが、案内に従って横道に入ったらよくわからなくなった。

大雲取越の登山口まで何だかんだで30分くらいかかった。

本当は大雲取越に入って最初の休憩所くらいまで行きたかったのだけれど、時間的にもうタイムリミット。このあたりでテントを張るしかないけれど、水が無い。

案内には大雲取越の登山口のそばで水が得られると書いてあったけれど、そんなものは見あたらない(後から考えたらあそこだったのかもというのはあった)。

ここから数分程度の所に「小口自然の家」という施設があって、そこなら水が得られるということだったのでそちらの方に向かったところ、民家の前におそらく湧き水であろう水が流れているのを見つけた。飲んで大丈夫かどうかはわからないけれど、おおむね湧かして利用するので、それを拝借することにした。

そしてそばに流れている川の河川敷に下りて、そこの河原で砂地の所にテントを張った。

昨日と同じく、真っ暗になる直前だった。時刻は午後5時半くらい。

約11時間半、37kmほど歩いた。疲れました。

残りの距離と帰りの電車の時間を考えると、明日はもっと早く出発しなければならないだろう。熊野古道をヘッドランプで歩くというのは避けたかったけれど、そうも言っていられない。明日は今日より1時間早く、5時には出発するようにしようと思う。

熊野古道中辺路1日目

熊野古道中辺路は今年の1月に二日かけて紀伊田辺から熊野本宮大社まで歩いた。

中辺路には熊野本宮大社から熊野速玉大社までの道もあるが(熊野本宮大社に向かって歩かれることが多い)、これらを直接結ぶルートは一部熊野川で船を使うことになるので、熊野那智大社を経由するルートを辿るのが一般的である。

1月に歩いたあと、残りの熊野本宮大社から熊野那智大社を経由して熊野速玉大社までを二日で歩きたいと思っていたが、天候と自分の都合が合致するタイミングがなかなか無く、標高が低いので暑い季節は避けたかったこともあって、行けないままになっていた。

そうこうするうちにちょっと考えが変わってきた。

前回は紀伊田辺発にこだわったために序盤の下道部分に予想以上の時間がかかってしまって、本当の古道部分になる滝尻王子以降がバス時刻との競争になって、いくつかの見所を駆け足で通り過ぎざるを得なかった。

その心残りが次第に強くなってきて、好天の三連休に滝尻王子から熊野速玉大社まで行きたいと思うようになった。

そのチャンスがようやく訪れた。先の三連休(11/2〜4)はまさにその絶好の機会となった。

前回とほぼ同じ電車で10時前に紀伊田辺駅に着いて、ここからバスで滝尻まで行った。滝尻に着いたのはすでに11時前だった。今回はハイカー風情の人が数人一緒に降りた。

滝尻王子の向かい側には熊野古道館という施設がある。前回は素通りしたのでちょっと立ち寄ってみたが、小さな施設で、中をぐるっと回っただけですぐに出た。

滝尻王子で出発の準備をする。

ここで水が得られるのを覚えていたので補給した。そして11時17分に出発した。

ここからしばらくは急登になる。久しぶりの重荷でいきなりの急登はなかなかこたえる。

10分ほどで胎内岩に到着。前回は中をくぐる時間が無かったので、今回は荷物を置いてくぐってみた。

出口はかなり狭い。体重70kgくらいの人なら通過できないかも。

前回寄らなかった展望台からの眺め。どこの山かわからず。

一旦車道に出る。前回すでに薄暗くなっていて見過ごした古道への標識に入る。

12時38分、前回訪れることができなかった高原熊野神社に到着した。

高原の休憩所の前の展望場所でおにぎり休憩にした。さすがに今回はしばしばハイカーと出会う。

今回もそれほど時間の余裕があるわけではないので、王子跡や茶屋跡などは写真だけ撮って足早に通過した。

歩き出して2時間を経過した頃からまた肩の裏側が痛くなってきた。今回はテントはモンベルの軽いシェルターにしたけれど、シュラフはダウンを持ってきた。前回はテントもビッグアグネスのダブルウォールだったのでその分はちょっと軽いのだけれど、今回は二泊なのでビールと酒、そして食料が多い。とは言ってもおそらく12kgだと思う。

牛馬童子には立ち寄っておく。

このあと少し進んで、近露(ちかつゆ)の集落が見える展望場所でぼたもち休憩にした。肩が痛いので気安めにロキソニンを投入。

車道に降りて、近露王子。

このあとはしばらく、一部を除いて車道が続く。肩が痛い。

さすがに4時を過ぎるとハイカーにも出会わなくなった。

4時37分、継桜(つぎざくら)王子に到着した。ここも前回は王子跡には寄らなかった所。

ここは前回、先に進むかどうか悩んだ所。ちょうどすぐそばの茶店が店仕舞いをしていて、女将らしき人がこのあとどうするのかと尋ねてきた。

「テントなので行ける所まで」と返事したら随分心配してくれた。テント泊で中辺路を歩く人はそんなにめずらしくないと思うのだけれど。

しかし時間的にはおそらく5時半くらいがタイムリミットだと思うので、どこでも泊まれるようにここの「野中の清水」で水を補給しておく。

ここも前回は訪れることができなかった。下の車道まで急な道を下らなければならず、2kg以上増えた荷物での登り返しはこたえた。

まだ車道を進む。そろそろ薄暗くなってきた。そうしたら散歩しているおじさんに声を掛けられて、また同じように「テントなので行ける所まで」と返事したら、「ウチに泊まっていけ」と誘われた。当然、丁重にお断りして、先に進んだ。

5時を過ぎて、いよいよ見通しがきかなくなってきた。そしてここも前回は王子跡に行かなかった中川王子。車道から長い階段が延びているのを見て、車道の標識を写真に撮っただけで通過した。

今回は気力で王子跡まで上がった。

どこかテントを張れそうな場所が無いかと探しながら進む。ちょうど少し先の車道の三叉路の所に東屋があるのが目に入った。ここが良さそうと安堵したところ、何と先客のテントがすでに二張り。落胆して先に進んだ。

そして5時半頃、何とかまっ暗になる前に車道から少し入った所に草の生えた小さなスペースがあるのを見つけた。地面のデコボコがさほどひどくないことを確認して、ここを今宵のねぐらにすることにした。

思ったほどは進めなかったので、翌日は夜明けから日没までの長時間行動になる。この肩の状態で歩き続けられるかどうか、いささか不安である。