熊野古道中辺路は今年の1月に二日かけて紀伊田辺から熊野本宮大社まで歩いた。
中辺路には熊野本宮大社から熊野速玉大社までの道もあるが(熊野本宮大社に向かって歩かれることが多い)、これらを直接結ぶルートは一部熊野川で船を使うことになるので、熊野那智大社を経由するルートを辿るのが一般的である。
1月に歩いたあと、残りの熊野本宮大社から熊野那智大社を経由して熊野速玉大社までを二日で歩きたいと思っていたが、天候と自分の都合が合致するタイミングがなかなか無く、標高が低いので暑い季節は避けたかったこともあって、行けないままになっていた。
そうこうするうちにちょっと考えが変わってきた。
前回は紀伊田辺発にこだわったために序盤の下道部分に予想以上の時間がかかってしまって、本当の古道部分になる滝尻王子以降がバス時刻との競争になって、いくつかの見所を駆け足で通り過ぎざるを得なかった。
その心残りが次第に強くなってきて、好天の三連休に滝尻王子から熊野速玉大社まで行きたいと思うようになった。
そのチャンスがようやく訪れた。先の三連休(11/2〜4)はまさにその絶好の機会となった。
前回とほぼ同じ電車で10時前に紀伊田辺駅に着いて、ここからバスで滝尻まで行った。滝尻に着いたのはすでに11時前だった。今回はハイカー風情の人が数人一緒に降りた。
滝尻王子の向かい側には熊野古道館という施設がある。前回は素通りしたのでちょっと立ち寄ってみたが、小さな施設で、中をぐるっと回っただけですぐに出た。
滝尻王子で出発の準備をする。
ここで水が得られるのを覚えていたので補給した。そして11時17分に出発した。
ここからしばらくは急登になる。久しぶりの重荷でいきなりの急登はなかなかこたえる。
10分ほどで胎内岩に到着。前回は中をくぐる時間が無かったので、今回は荷物を置いてくぐってみた。
出口はかなり狭い。体重70kgくらいの人なら通過できないかも。
前回寄らなかった展望台からの眺め。どこの山かわからず。
一旦車道に出る。前回すでに薄暗くなっていて見過ごした古道への標識に入る。
12時38分、前回訪れることができなかった高原熊野神社に到着した。
高原の休憩所の前の展望場所でおにぎり休憩にした。さすがに今回はしばしばハイカーと出会う。
今回もそれほど時間の余裕があるわけではないので、王子跡や茶屋跡などは写真だけ撮って足早に通過した。
歩き出して2時間を経過した頃からまた肩の裏側が痛くなってきた。今回はテントはモンベルの軽いシェルターにしたけれど、シュラフはダウンを持ってきた。前回はテントもビッグアグネスのダブルウォールだったのでその分はちょっと軽いのだけれど、今回は二泊なのでビールと酒、そして食料が多い。とは言ってもおそらく12kgだと思う。
牛馬童子には立ち寄っておく。
このあと少し進んで、近露(ちかつゆ)の集落が見える展望場所でぼたもち休憩にした。肩が痛いので気安めにロキソニンを投入。
車道に降りて、近露王子。
このあとはしばらく、一部を除いて車道が続く。肩が痛い。
さすがに4時を過ぎるとハイカーにも出会わなくなった。
4時37分、継桜(つぎざくら)王子に到着した。ここも前回は王子跡には寄らなかった所。
ここは前回、先に進むかどうか悩んだ所。ちょうどすぐそばの茶店が店仕舞いをしていて、女将らしき人がこのあとどうするのかと尋ねてきた。
「テントなので行ける所まで」と返事したら随分心配してくれた。テント泊で中辺路を歩く人はそんなにめずらしくないと思うのだけれど。
しかし時間的にはおそらく5時半くらいがタイムリミットだと思うので、どこでも泊まれるようにここの「野中の清水」で水を補給しておく。
ここも前回は訪れることができなかった。下の車道まで急な道を下らなければならず、2kg以上増えた荷物での登り返しはこたえた。
まだ車道を進む。そろそろ薄暗くなってきた。そうしたら散歩しているおじさんに声を掛けられて、また同じように「テントなので行ける所まで」と返事したら、「ウチに泊まっていけ」と誘われた。当然、丁重にお断りして、先に進んだ。
5時を過ぎて、いよいよ見通しがきかなくなってきた。そしてここも前回は王子跡に行かなかった中川王子。車道から長い階段が延びているのを見て、車道の標識を写真に撮っただけで通過した。
今回は気力で王子跡まで上がった。
どこかテントを張れそうな場所が無いかと探しながら進む。ちょうど少し先の車道の三叉路の所に東屋があるのが目に入った。ここが良さそうと安堵したところ、何と先客のテントがすでに二張り。落胆して先に進んだ。
そして5時半頃、何とかまっ暗になる前に車道から少し入った所に草の生えた小さなスペースがあるのを見つけた。地面のデコボコがさほどひどくないことを確認して、ここを今宵のねぐらにすることにした。
思ったほどは進めなかったので、翌日は夜明けから日没までの長時間行動になる。この肩の状態で歩き続けられるかどうか、いささか不安である。