大台ヶ原は観光客だらけであまり近寄りたくない場所だけれど、台高山脈はなかなか魅力的な山域である。
ただ、台高山脈も大峰山脈と同様に、一部山域以外は山脈の東西の道が少なく、道路事情も悪くて日帰り周回コースが取りにくい。公共交通機関は北端の高見山と南の大台ヶ原以外は無いに等しい。
おかげでこの二箇所以外の山域は歩く人が少なくて、豊かな自然がたっぷり残っている魅力的なエリアだ。
大台ヶ原の少し北にある大台辻という峠がどんな所なのか、一度訪れてみたいと思っていた。
川上村の筏場(いかだば)から大台ヶ原に至る道で、ドライブウェイができる前まではかなり歩かれていたらしいが、昨今は随所で崩壊も進んでいてあまり整備されていない。奈良県では通行禁止にしている。ちょうど筏場から上がった稜線の峠が大台辻である。
谷崎潤一郎の「吉野葛」によると氏は明治の末か大正の始め頃にこの辺りを歩いたように思われるが、白洲正子の「かくれ里」には氏は実際にはここまでは行っていないはずという、考古学者の末永雅雄博士の話も書かれている。
いずれにしても昔はそれくらい一般的な道だったということだろう。
基本的には通行禁止なのであくまでも自己責任ということで、大台ヶ原から大台辻を訪ねてみることにした。
9/5 の土曜日、途中でパンとジュース、コーヒーの朝食をとって、家から3時間ほどで大台ヶ原の駐車場に着いた。ここは休日は早朝から一杯になるという話も聞いていたのでちょっと心配だったけれど、コロナの影響かどうかはわからないがまだまだ余裕たっぷりだった。
ビジターセンターのそばの日陰に車を停めた。
ついでなのでまずは日出ヶ岳に向かう。7時40分にビジターセンター横の登山道に入った。
この時間だとまだハイカーはあまりおらず、駐車場でもすでに標高が 1500m を越えているので、気持ち良く歩ける。
展望台からの熊野灘の方は雲がかかっていて海は見えない。
駐車場から 30 分少々で日出ヶ岳の山頂(1695.1m)に到着した。三重県の最高峰。
展望台からの大峰山脈。主要な山々がほぼ全部見える。
さて、ここからは良い子は入ってはいけません。
当然ながら踏み跡はあるような無いような・・・。トリカブト。
ネットに阻まれて、下に向かう踏み跡があったので少し下ってみたが、どうも来た道に出てしまいそうだったので上に戻った。
ほどなく巴岳。標高不明。
川上辻に向かって下る。ササに覆われていて地面が見えないので非常に歩きにくい。
9時過ぎに川上辻。ドライブウエイはすぐそば。
ここから先は多少は踏み跡が明瞭になった。少し進むと筏場道への分岐。右へ進む。道標は無し。
道は明瞭。しかしずっと山腹をトラバースする道で、沢と交差する所がことごとく崩れている。
安心橋というらしい。確かに丈夫そうでした。
たぶんこれが金明水。冷たくておいしかった。
所々に道標は残っている。
まるで古寺の庭のよう。
10時36分、大台辻に到着した。標高約 1200m。目的地の標高がコース上で最も低いという奇妙なルート。
ここで腰をおろしておにぎり休憩にした。
筏場道はここから北西に川上村に下っていく。そちらの道も私が歩いてきた道も、いずれもロープが張られて立ち入り禁止になっている。通行が許されているのは台高山脈主稜線の北側のみという場所。
さて、これで目的の大台辻を訪れることができたので、大台ヶ原に向けて引き返す。ただし西側にあるいくつかのマイナーピークを踏むために、コブシ峠から稜線に上がる。
ここは道はまったく無し。しかし所々に古いテープが残っている。稜線は明瞭なのでルートファインディングに苦労は無い。
標高が 1600m あたりになると周囲が開けてササ原になってきた。稜線に向けて薄い踏み跡が見えるが、ずいぶん疲れてきた。大して登ったわけでもないのに・・・。
12時過ぎ、大台辻から1時間15分くらいでようやく稜線に出た。ここで腰を下ろしてフルーツゼリーを食べた。凍らせてきたけれどすでにとけてた。
左手に次なる目標の大和岳。実はここより低い。
何かと思ったらロボット雨量計。
12時20分、大和岳(1597m)に到着した。
真ん中右が山上ヶ岳。真ん中左が大普賢岳。左端に釈迦ヶ岳。
あとは大台ヶ原へ戻るだけだが、しばらく登り返しになる。一箇所だけトリカブトの群生。
一登りで三津河落山(さんづこうおちやま)。
少し進んで如来月(1654m、読み方不明)。
あとは下るのみと思っていたら、想定外の登りが。帰ってから地図をしっかり見たらナゴヤ岳というのがありました。この登りはわずかだったけれど苦しかった。
何とか登りきって下りになったが、これがまた道が不明瞭で、しかもあの地面の見えないササ原の下りで、非常に歩きにくかった。
午後1時13分、川上辻の車道に出た。
ドライブウェイは登りだったので走る気にはなれず、15分ほどの歩きで駐車場に戻ってきた。
車に戻ったのは午後1時半だった。歩行距離も標高差も大したことのないコースだったのに、思いのほか疲労感が大きかった。
で、初めて行ったのが「あすかの湯」。明日香村からはずいぶん離れていて、実は橿原市。
駐車場も大きくて、風呂もいろいろあって、もちろん露天も。水風呂もあって、洗い場もたくさんある。お湯は無色透明であまり温泉ぽくないけれど、全体的に非常に良かった。週末は 750 円。最近行った銭湯の中では一番良かった。