天候に恵まれた四連休だったが、残念ながら二日目の日曜日に随行の仕事が入っていたので、出かけることができるのは後半の二日間しかなかった。
7月はほぼ月末まで梅雨で、8月も週末の天候は今ひとつだった。
たまにはテント泊もやりたいと思っていたが、なかなかチャンスが無かった。
そんな中、先の連休は後半の二日間もそこそこの好天が期待できそうだったので、ぜひどこかへと思って数日前から行き先を探っていた。
人気エリアはかなり混雑しそうで、それなりに楽しめて人もあまり多くなさそうな場所というのはなかなか思いつかない。
久しぶりに比良でのテント泊というのも考えたけれど、どうも今ひとつ気持ちが盛り上がらない。
大峰や台高、鈴鹿などは適当な周回コースを見出すことができなかった。
八ヶ岳も考えてみたけれど、混雑しそうな気がする。
散々迷ったあげく、出発二日前にようやく蝶ヶ岳から常念岳の周回コースに決めた。上高地は混雑間違い無しなので、東側の三股から周回することにした。ここならそれほどの大混雑にはならないのではないかと思った。
中学三年生の時、初めて登った北アルプスの山が常念岳と蝶ヶ岳だった。
学校のワンダーフォーゲルクラブの夏山で、東側の一ノ沢から登って常念小屋に泊まって、翌日、常念岳から蝶ヶ岳、そして徳沢に下山して宿泊した。前年の白山はずっと雨だったけれど、この時は好天だった。ご来光を見たのを覚えている。確か雲海もこの時に初めて見たような気がする。
そんな懐かしい記憶を思い出しながら出発の準備をした。
21 日の早朝に家を出て、途中で朝食を取りながら三股の駐車場に向かった。
林道に入ってしばらく進むと、駐車場まではまだかなり距離がある場所から路肩駐車の車が出てきた。まさかこれ、駐車場からはみ出した車? まだ駐車場までは 4km くらいある。
路肩駐車はよくこれほどきっちりと停めたものだと感心するくらいずらっと並んでいた。
下山する人もいるはずなのでどこかに空きスペースがあるはずと期待して進んだが、最終の三股駐車場まで見事に車がびっしりと停められていた。
一瞬、行き先を変えるべきか悩んだ。まさかここまで人が多いとは思ってもみなかった。とにかくまずは少し戻って再度スペースを探すしかない。
1km 以上戻ったいちばん下の駐車スペースで周囲をうかがっていたところ、一台の車が出て行った。ここから登山口まで車道を歩くのはたまらないが、もはやここしか停める場所が無い。
覚悟を決めてここに車を停めて出発の準備をしていたところ、3台ほどの車が上から降りてきた。空きスペースができたことは間違いない。しかしそれがどこかはわからない。
もう一度戻ってみるかどうか迷った。一度はもうここから歩いて行こう思ったが、はやり諦めきれずに上に行ってみることにした。
先ほどは無かった路肩のスペースが見つかったが、念のために登山口の駐車場まで行ってみた。そして中を回ったところ、空きスペースを発見!! 歓喜した。もし下の駐車スペースから歩いて上がってきてここに空きスペースがあったらひどく落胆して登る気力が失せてしまうと懸念していた。
もう 11 時前なので、次々と登山者が下りてきている。ほどなく目の前に2台のスペースができた。戻ってきて本当に良かった。
10 時 55 分に出発した。駐車場の奥から登山道に入る。
未舗装の林道を 10 分ほど歩いて登山指導所へ。ここで計画書を記入して提出する。
降りてくる予定の常念岳からの道を見送って、力水で気合を入れる。冷たくておいしい。
斜面は結構急で、木の階段が次から次から出てくる。
もう昼なので下山者が多い。昨今は「登山道では登り優先」というルールはもはや有名無実化していて、街中の自転車ルールと同じような状態になっているのだが、ここで出会う登山者は大半がこのルールを守ってくれている。
中には私が登るのを止まって待ってくれている人の横をすり抜けて下りてくるような不届き者もいなかったわけではないが、多くの下山者とのすれ違いがそれほどストレスを感じずにやり過ごすことができた。
「ゴジラみたいな木」。
出発して1時間半ほどで「まめうち平」。
ここを過ぎたあたりから先行者に追いつくようになってきた。抜いたり抜かれたりはわずらわしいので、ここでおにぎり休憩にした。
このところ脚力の低下を痛感していて、昨年 11 月の中辺路以来のテント泊なのでしっかり登りきれるかどうか不安があったのだが、ここまでは何とかおにぎり休憩以外はノンストップで歩き続けている。
ようやく大滝山への稜線に出た。
午後 2 時 17 分、出発して 3 時間 20 分ほどで蝶ヶ岳ヒュッテのテント場に到着した。
下での車の多さから登山者の混雑ぶりは覚悟していたとは言うものの、それにしてもここまで混んでいるとは・・・。下での路肩駐車並みにテントがびっしりと建てられていて、苦労してようやくギリギリのスペースを確保した。
その後もテント客が何人もやってきて、「よくこんな場所に張れるなぁ」と感心するような場所にもテントが張られていった。
最近はテントも軽量化が進んでいて、昔よくあったような大きなテントはまったく見かけなくて、パーティーで来てもテントは一人ずつ。複数人で同一テントというのは夫婦かカップルくらいのようだ。
おかげで夜遅くまでべちゃくちゃしゃべっているようなテントはまったく無くて、夜の8時にもなれば聞こえてくるのは寝息だけという状態だった。
テントを張り終えたらそばの 2677m 地点まで行った。
地形図では「蝶ヶ岳」という単独のピークは無くて、このあたりのいくつかのピークの総称になっている。ここがその中の最高峰。
槍穂高は上部がガスに覆われている。
テント場では携帯は圏外だったけれど、ここまで来ると通話可能になった。