どういうわけかなかなか寝付けなかった。
夜中には風が強くなってきて、結露のしずくが顔に降りかかってくる。便宜上「テント」と書いてはいるけれど、実際はシングルウォールのシェルター。モンベルでは「これはテントではありません」と表記している。
おまけに雨まで降り出してきた。これは想定外。一気に意気消沈して、これでは往路を下山するしかないと諦め気分になった。
そうこうするうちに雨は止んだようだ。ひょっとしたらそれほどの雨ではなかったのかも知れない。風も収まって、おだやかな天気になってきた模様。
少し明るくなってから出発の準備を始めた。ご来光が拝めそうな感じ。
5 時 25 分、テント場を出発した。槍穂高は昨日よりははっきり見えている。
ヒュッテのそばのピークでご来光を待ち受ける人たち。
まだ日の出まで少し時間がありそうなので先に進む。
そして 5 時 38 分、雲海の向こうから美しいご来光。
朝日を浴びる槍穂高連峰。
横尾へ下りる分岐を越えて少し登って蝶槍。
ここからはしばらく下る。標高差 200m くらい下って樹林帯に入って、ここが最低鞍部かと思ったら、このあとも標高差 100m くらいのアップダウンが3回もあった。蝶・常念ってこんなにきつい稜線だったのか・・・。中学生の集団でこんな道をよく歩いたものだと思った。
最後のジャンクションピークからの常念岳。あと1時間くらいだろうか。
ここから後は岩のゴロゴロする歩きにくい道が続く。昔の記憶は皆無だ。
アップダウンの繰り返しがボディブローのように効いてきてきついが、ここで立ち止まるとずるずると落ちてしまいそうなので何とか歩き続ける。登山地図のコースタイムが距離の割には長いと感じていたが、こういうことかと納得した。
急な斜面をぐいっと上がったら目の前に山頂が見えた。
8 時 35 分、常念岳の山頂(2857m)に到着した。山頂は写真待ちの行列。
40 年ほど前に友人と二人で登った槍ヶ岳の北鎌尾根。私の登山歴の中で5本の指に入る思い出の山行だった。
乗鞍岳(右)と御嶽(左)。
大天井岳(左)と燕岳(真ん中手前)。
南アルプスも。
富士山も見えていた(下の方)。
山頂直下にイワギキョウ。
ひとしきり展望を楽しんだら、前常念の方に下る。槍もこれが見納めかな?
少し下ったところでおにぎり休憩にした。
そしてしばらく下って前常念岳(2661.9m)。
少し下ったところに岩小屋がある。避難小屋のようにしつらえられていて、中に入ることができる。しかし水が無いので非常時のみという感じ。
ここからしばらくは大きな岩がゴロゴロした非常に歩きにくい道(?)が続く。危険ということではないが、万が一、足を踏み外して岩の間に足を落としたりしたら大怪我になりかねない。安全第一で慎重に下る。
もう 30 年以上も前に一度ここを下ったことがあるのだが、その頃はまだ一般路にはなっていなかった。それにしてもこんなに歩きにくい道だったとは・・・。
後から考えるとひどい場所はそれほど長くはなかった。次第に普通のアルプスの稜線のような道になって標高 2350m くらいで突然樹林帯に入った。
その後、一度だけ腰を下ろして数分休憩して、急斜面をジグザグに下りていった。
今回のシューズはサロモンのゴアテックストレランシューズを履いてきた。このシューズはソールが滑りやすいのだけれど、HOKA に比べると造りがしっかりしているので、荷物が重いことを考慮してこれを選択した。
やはりと言うべきか、急斜面や段差などで何度も足を滑らせて、大腿四頭筋の脚筋疲労を感じるようになってきた。
このシューズももう数年履いているので、今回でお終いにしよう。
ようやく昨日通った分岐まで下りてきた。登山指導所がすぐそこに見えている。
それにしてもこの下山ルートはなかなか厳しい道だった。標高差も 1500m くらいある。登ってくる人にもわりと出会ったが、ここを登るのは厳しいと思う。
先の分岐の道標のそばに看板があって、このルートは長くて厳しいので体力に自信のない人は行かないようにと注意書きされていた。例年、疲労による救出事故が発生しているらしい。そりゃあそうだろうと思う。ちなみに手元の登山地図のコースタイムでは登り7時間、下り5時間半となっている。
12 時 33 分、無事、駐車場に戻ってきた。駐車場にはまだかなりの車が停まっていた。
荷物を整理して、穂高温泉の「しゃくなげの湯」に向かう。ここは初めて。お湯は中房温泉から引いているらしい。
露天や水風呂はもちろん、洗い場もたくさんあって、いい温泉だった。
さすがに四連休の最終日ともなれば渋滞間違い無しだろうと覚悟はしていたが、普通の渋滞だけではなく事故渋滞にも出会って、5時間で来た道を帰るのに7時間以上かかった。
今回の目的は久しぶりのアルプス稜線でのテント泊。そしてご来光を眺めて、展望を楽しむことだった。そのすべてを味わうことができて、満足のいく山行だった。
さらに、このコースを歩いている人たちのマナーの良さはうれしかった。白山とは随分違う。このルートを選んだのは正解だったと思った。