竜在峠から細峠にかけての道はこれまでに何度か歩いている。しかし細峠(ほそとうげ)は稜線を通過しただけである。
細峠は奈良から吉野へ出る主要なルートの一つで、かつては峠付近に集落や宿もあった。芭蕉もここを通っている。その古道がかすかに残っているそうなので、そこを訪ねてみようと思った。
吉野側に少し下ったところに三津(みづ)という集落があるので、ここもどんな集落なのか一度見てみたいと以前から思っていた。
アプローチは桜井からコミュニティバスで多武峰まで行くことにした。
10/18の水曜日、桜井からバスで多武峰まで行った。
正面は談山神社へ行く参道。そばのコンビニは休業日で、公衆トイレは閉鎖されていた。
10時20分に出発。しばらく車道を行って、新鹿路(しんろくろ)トンネルの手前で旧道に入る。道標が立っている。
鹿路というだけあって鹿が何度か道路を走って行った。
30分ほど歩いて旧道のトンネルの手前で荒れた林道に入る。
10分ほどで荒れたコンクリート舗装が終わって、ようやく古道へ。
かろうじて残っている踏み跡を数分であっさり細峠に到着した。
芭蕉の句碑。「雲雀より空にやすらう峠哉」。
さて、今日はここから吉野側に下る。
アケボノソウ。
10分ほど下ると庚申塔があった。
そばに立派な作業道完成の碑があったが、そんな立派な作業道はそばには見当たらない。
このあたりが昔の集落の跡のようだ。「細峠むらあと」。私の生まれた昭和30年頃はまだ住んでいる人がいたらしい。
石垣。
車道に出る前に間違って変な方向へ少し行ってしまったが、無事旧道の車道に出た。
車道部分は意外と長くて、20分ほど歩いてようやく分岐と思われる場所まで来た。
しかしその前に三津の集落に向かう。
坂の車道を上がるとほどなく集落が現れた。生活感があって、以前に訪れた滝畑とはずいぶん違う。
バスも来ているもよう。
ここで引き返して、地形図にある細峠の北東の鞍部につながる道を行く。
かつて林道だったような広い道。
道なりに10分少々進んだら石垣の跡が出てきたので、このあたりも以前に集落があったのかと思ったら、実は先ほどの集落跡に戻ってきていた。
地形図に記載されている道とどこで分かれたのかまったくわからなかった。
12時半過ぎに細峠に戻ってきて、峠にある五輪塔のそばで腰を下ろしておにぎり休憩にした。
ここからしばらくは何度か歩いたことのある竜在峠への道。非常に気持ちがいい。
途中で脇道に入る。ここは以前から片側が切れた急斜面で、来るたびに危険度が増している。
細峠から20分ほどで「むかしの茶屋跡」。昔は雲井茶屋と呼ばれていた。本居宣長も訪れている。
ここは冬野や鹿路からの道も合流しているのだが、以前は無かったこんな看板が。
実は同様の看板が細峠にもあった。単に車(まさか!)やバイク(バイクのタイヤ跡のようなものは何度か見かけた)の通行を禁じているのか、誰も入るなと言っているのか、よくわからない。鹿路側ではこういう看板は見かけなかった。
ここから5分弱で竜在峠に到着。
ここからもしばらく気持ちのいい稜線歩き。展望は無いけれどおかげで日差しが遮られて快適である。思わず一人で歓声を上げて歩いた。
芋峠への分岐に到着。今日は入谷(にゅうたに)に下りる。この道は初めて。
意外と歩きにくい道を30分ほど下って、天空の展望台へ。
以前に一度訪れているが、再訪するとは思っていなかった。
展望台からの金剛山と葛城山。
少し下ったところから入谷の集落と遠方に二上山。
栢森(かやのもり)で加夜奈留美命(かやなるみのみこと)神社へ寄りたいと思っていたが、よくわからないうちに通り過ぎてしまった。以前に一度訪れているのだが、もう記憶を失っているので再訪したかった。
栢森をはずれたあたりに案内板があったのでそれで場所を確認して引き返した。前回はすんなり来ているでこんなに苦労するとは思わなかった。
祭神は名称通りの加夜奈留美命。
栢森まで来る観光客はあまりいないので、奥明日香の静かで静逸な気分が味わえる。車道のすぐそばにこんな渓流が流れている。
あたりが開けると雌綱。
こんな神事が行われている。
少し下ると飛鳥川上坐宇須多岐比売命神社(あすかかわかみにいますうすたきひめのみことじんじゃ)。日本で一番長い名前の神社。日本一ということはおそらく世界一。
以前に一度上まで上がって参拝しているので今日はパス。
そして稲渕の男綱。
稲渕は棚田が有名で、このあたりまで来る観光客は多い。
しばらく単調な車道を進んで、久しぶりのマラ岩。
石舞台古墳の裏側を通って、亀石へ。
✳︎この写真は以前のもの。今日は観光客がまわりを占領していた。
その後は先日と同じルートで午後4時12分に橿原神宮前駅に到着した。
思った以上に楽しい一日だった。やはり明日香村は中心部を離れて奥に入らないとおもしろくない。また明日香村通いを再開してみようかという気持ちになった。