祭りのあと

燃え尽き症候群である。
レースの終盤は自分でも信じられないくらい脚が残っていて、ゴール後はまだ余裕がありそうなくらいだった。
しかし電車を乗り継いで家にたどり着いて玄関に座り込むと、それまでの緊張感が一気に緩んで、ショーズも脱げずに横たわってしまった。空腹感があったので何とか着替えて食事を済ませたが、そのまま床で横になると、もう朝まで起きることができなかった。
筋肉痛はそれほどではなかった。終盤にポールを使ったせいか、大腿四頭筋にはほとんど筋肉痛が残らず、むしろ大臀筋やハムストリングなど、背部に大きな疲労が残った。これはいい身体の使い方ができていた証拠だ。
翌日は当然のごとく完全休養。その次の日も朝は走りに出かける気分にならなかった。
その後、軽いジョグは再開しているが、まだまだ身体の芯に大きな疲れが残っている。
今週末は温泉旅行の予定なので、ちょうど良かった。ここでゆっくり疲れを取ってこようと思う。
六甲往復を終えて思ったのは、自分にとってはおそらくおんたけウルトラトレイルよりも充実感のあるコースだったであろうということ。これならおんたけがエントリーできなかったこともさほど残念ではないと本気で思えた。
おんたけはトレイルとは言っても実際はコースのすべてが林道で、山道の部分はまったく無い。私が目指す高山のロングルートとは性質の異なるコースだ。
そういう意味では、今回完走できたことで、今夏の水晶往復の可能性が大きくふくらんできたと言える。次回は新穂高からの往復で再チャレンジしようと思っている。

六甲縦走キャノンボールラン完走!!復路編

湯元台の広場では片道コースの参加者がたくさん集まっている。スペースを見つけて座ったところ、ちょうどその横にいたのはしばらく一緒だった男性。
コンビニでどん兵衛きつねを買ってきて、往復コース参加者のみサービスのおにぎりを食べてエネルギーを補給する。そして少しでも脚が休まるようにマッサージしておく。
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7時32分にいよいよ復路がスタート。天気は良さそうだが、ジャケットを着たままスタートした。
復路はすぐに上り坂になるので、最初から歩きで入る。集団の後ろの方からスタートしたつもりだったが、片道の人たちはスタートしたばかりで元気なので、どんどん追い抜かれる。
塩尾寺までは坂が結構きつい。みんなショートカットの山道へ行くので、一緒にその流れに入る。細い道で追い越しができないので、前から遅れないようについていくのが精一杯だ。車道に出たときはほっとした。
塩尾寺からはトレイルに入る。まだしばらく登りが続くが、このあたりになると身体が少し慣れてきたようで、脚は疲れているが、それなりのペースでは登って行ける。
道がなだらかになってくると、所によっては走れるようになってきた。思ったよりも楽に大谷乗越に着いた。
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所々現れる急な登りも以外とスムーズに登れて、2時間ほどでドライブウェイに出ることができた。そして一軒茶屋のエイドに到着。
おなかはまだ十分という感じなので、水分だけ3杯ほど補給した。
宝塚から須磨へ向かうのは初めてだが、ショートカットもしっかり辿れて、ほどなく次のエイドに到着。ここは往路でポタージュをいただいたところ。
コロッケがあって、みんなおいしいと言っていたが、さすがに油ものは避けて、草餅の大福と飲み物をいただいた。
日は差しているが、薄い雲がかかっているので、日射しはそれほど強くなく、絶好のコンディションという感じだ。自分ではあまり感じていないが、やはり汗をかいているようで、ノドが乾く。
自然の家で車道に出てから、アゴニー坂への山道に入るのを見落としたようで、そのままドライブウェイ沿いに掬星台まで行ってしまった。せっかくこれまでうまくショートカットをたどってきたのに、ムダをしてしまって残念。
掬星台のエイドではチキンラーメンと巻き寿司一切れをいただく。水分も補給したいところだったが、何と酒しかない。自動販売機があるが、高そうなのでパスする。
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ここからの下りは結構急なところもあるので、ここでトレッキングポールを出した。これは大正解だった。
市ヶ原への分かれをミスして少し大回りしてしまったが、大きなミスにはならずに市ヶ原を通過。そしてしばらく車道の登りを歩いて大龍寺へ向かう。
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大龍寺の少し上のエイドでの水分を期待して自動販売機をパスしてきたが、今度も酒しかなかった。
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豚汁のサービスがあったが、かなり塩辛かった。バナナがあったので、3切れほどもらって口直しした。
ここを越えると鵯越まで自動販売機が無いので、水分が不安だったが、仕方ない。鍋蓋山を越えて、ここは試練になるだろうと思っていた菊水山も思ったより楽にクリアできて、完走への希望が大きくふくらんできた。
ゴルフ場を左手に眺めて階段を下りていたところ、菊水山を下りきる手前に水場があったことをふと思い出した。さっそくそこへ行って、冷たくておいしい水をたっぷり飲んで、ボトルにも一杯補給した。
ほっと一息をついて、やれやれと安心して車道に出たところ、予想外のエイドに出会う。ここでははちみつレモン、オレンジなど、今日のコンディションには一番うれしいものが並んでいた。
ここまで来ると下り気味の車道でももうまともには走れない状態になっていたが、登りは相変わらずしっかり歩ける。これなら思ったよりも早くゴールできそうだといい気分になっていたところ、鵯越の駅を過ぎてからの住宅街で何度か道に迷ってしまう。GPS で地図がちゃんと表示されない状態になっていたが、復路なので大丈夫だろうと安易に考えていたのが間違いだった。運悪く、前後には誰も見あたらない。
明らかに間違いと気づいて戻っていたところ、少し先に何人かのグループが歩いて行くのが目に入った。やれやれと思って彼らを追うことにする。
追いつきそうで追いつかないという状態だっったが、高取山の登りの途中、月見茶屋手前の公園で彼らが少し休憩しているところで追いついた。往路でしばらく一緒だった男性もいる。関東から一人でやってきたらしい女性がいるが、どうしたことか片眼に絆創膏をしている。しかも往復コースだ。片眼でトレイル、しかも夜間走なんて信じられない。
その後、私を含めて5人のグループで、時には離れたりしながらもほぼずっと一緒に行くことになる。
妙法寺の私設エイドでコーラとポカリをもらって、いよいよ最終章の須磨アルプス、横尾山を越えて、旗振山へ向かう。
グループでしゃべりながら歩いているので、一人よりも疲労感が少ないように感じる。脚はまだ若干の余裕がありそうで、登りも何とか歩き続けられる。
少し薄暗くなってきたが、暗くなるまでにゴールできるだろう。
旗振小屋から瀬戸内海を眺めている時、女性が『苦しかったけれど、もう終わるのかと思うとちょっと寂しい』と言ったが、まさにそういう心境だった。
石段をリズミカルに下りて、最後は5人で手をつないで一緒にゴールした。17時48分。トータル19時間10分の旅が完成した。
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六甲縦走キャノンボールラン完走!!往路編

六甲縦走キャノンボールラン、完走した!! 往路8時間26分、復路10時間44分。トータル19時間10分でした。
夜10時のスタートということで時間の余裕があったので、交通費節約のために大江橋から阪神梅田まで歩いて、山陽電鉄に乗り継いで須磨浦公園に向かった。須磨駅ではキャノンボーラーがたくさん乗り込んできたが、みんな若そうで、ロードレースでよく見かける私と同年代のような人間はまったく見あたらない。
ナンバーカードをもらって用意をする。寒いのでスタート直前までジャケットを着ていたが、ファイントラックのノースリーブシャツの上にいつものながそでスポーツシャツで走ることにする。
そして今回の秘密兵器はストレッチストッキング。と言っても SKINS のような高価なものではなく、以前に鎖骨骨折した時に全身麻酔の手術による血栓予防のために使ったものをもらってきたやつ。これをタイツの下にはいた。
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ちょっと遅れる人がいるとのことで、スタートが10時15分になる。そんなノリの大会なのだ。
その人は何と、ランパン一丁に上半身裸で、荷物のザックをかついで改札から出てきた!! 昨年のビデオで。吹雪の中をランパン一丁、上半身裸で走っていた人だ。
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復路は宝塚スタート組と同時スタートなので明朝7時30分。自分としての制限時間は9時間30分だったが、この遅れで15分余裕が減ってしまった。できれば宝塚のローソンでカップ麺を食べるだけの時間の余裕がほしい。
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宝塚に向けていよいよ100名以上がスタート!! 結構みんな速い。最初は集団なので周りのペースに合わせて走っていたところ、旗振山を越えたところでコースミス。すぐに気が付いて戻った。
おらが茶屋のエスケープルートはみんなそちらへ行った。
不安だった須磨アルプスを無事通過すると気分が楽になったが、はたして明日、ここまで戻ってこれるのか、もし戻ってこれたらその時、心身がどんな状態になっているのか、そんなことが頭をよぎった。
横尾の住宅街に入る。このあたりに最初のエイドがあるはずだが、そういう気配はまったく無し。
妙法寺のショートカットもみんな知っている。
いろんな場所で神戸やその他、きれいな夜景が望めるが、そんな感傷にひたっている余裕はまったく無い。
菊水山の登りの手前でパワーバージェルを補給。最初のペースチェックの目安となる菊水山は、これまでの2回の試走よりも速いタイムで到着して、うれしさ半分、不安半分というところだが、今回は攻めるということでこのまま行くことにする。
大龍寺近くのエイドが見えてきた。ようやく補給できると思ったところ、ギャグ写真を撮っただけで、まともな補給食は無しでがっかり。
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前回は市ヶ原でおにぎりを食べて登りに備えたが、今回はエイドが充実していると思っていたので、軽量化のために補給食は万が一のための小豆モチ1個だけしか持ってきていない。スタート前にしっかりと食べてきたので、今日はこのままスルーして登りに入る。
後ろから追いついてきた人としばらくしゃべりながら登る。私はどちらかと言うと一人マイペースで黙々と行きたいタイプなので、しゃべりながら行くのはあまり好みではないのだが、気さくな感じの人で、なんだかんだとこの人とは最後まで付きつ離れつ、一緒にゴールすることになった。
しかしこのあたりから脚筋疲労を感じるようになってきた。私が前を走っているのでついついオーバーペースになってしまっているような気がするので、先に行ってもらう。
最後の階段のショートカットもしっかり見つけられて、掬星台に到着。この登りも試走よりも速いタイムだったが、今度こそと楽しみにしていたエイドにまた振られる。
ここで覚悟を決めてたった一つの補給食を食べることにする。そして寒いのでジャケットを着る。
一旦離れた彼氏とまった一緒になり、記憶を頼りにルートを正確にたどる。
ガーデンテラスの少し手前のところで今日、初めて、エイドらしいエイドに出会う。食べ物は無いが、あたたかいポタージュをもらって、腰を下ろしてのんびりする。これはおいしかった。
いつものショートカットもしっかり見つけられて、ほどなく一軒茶屋のエイドへ。今度はトマト味のマカロニ入りスープ。ついでに小さな稲荷寿司も一つもらう。のどにつまって戻しそうになるが、何とかこらえた。
お腹が落ち着いたところで再スタート。東六甲縦走路に入るときに4人ほどの集団になっていたが、私は下りが遅いのでみんなに先に行ってもらう。やはりすぐにみんな見えなくなってしまった。
まだ7時半のスタートまでは2時間以上余裕があるので、何とかカップ麺が食べられるくらいの時間はありそうだ。
下りなので追い抜かれるだろうと思っていたが、登ってくる人以外は誰も会わずに塩尾寺まで来た。
車道の下りになるとますます脚筋疲労を感じる。この後、何人か抜かれたが、下りで極力脚を使わないようにして、湯元台広場に到着した。8時間26分。目標の9時間以内をクリアして、試走よりも速いタイムで往路を終えることができた。
これでここで45分ほど休憩できるのが良かったが、その間に脚筋疲労がどれくらい回復できるかが大きな問題だ。しかし体感的には試走時よりも疲労感が少ないように感じる。やはりこれが大会というものなのだろう。

いよいよ

いよいよ六甲縦走キャノンボールランだ。今晩10時、須磨浦公園スタート。
何故か昨日の朝ジョグの後、突然右の内転筋と股関節に違和感!!。大事をとって夕方は走らず。その後の状態は変化無しだが、歩きでは何とも無いのでおそらく大丈夫だろう。
メンタル面では以前より少しはタフになってきたと思う。以前ならレース直前にこういう状態になったらパニックのような気分になったに違いないが、今回は『痛くなったらそれはその時のこと』という気分になれた。
ロングトレイルでは最後までどこにも痛み無く走り切れることの方がまれなはずなので、痛みと共に走るのも練習のうち。それを楽しめるくらいにならなければ。もしアルプスの稜線でそういう状態になれば這ってでも自力下山しなければならない。それに較べれば六甲なら庭先程度のものだ。
何とか完走したい。

プレッシャー

これまで大会と称するものにはおそらく200回以上参加してきたと思うが、どんな小さな大会でも大会前には何らかのプレッシャーや緊張感を感じてきた。しかし今回の六甲縦走キャノンボールランはちょっと特別だ。
その理由は、『完走できるかどうかわからない』ということである。
これまでのプレッシャーはすべて結果のタイムに対するものであり、完走できない可能性に対して不安を感じたことは一度も無かった。逆に言えば、そういう大会にはそもそもエントリーしてこなかったということでもある。
正確に言えば、別大マラソンでレース前に大きな故障をして、本番まで2週間ほどまったく走らずに出場した時は『完走できないかも知れない』と感じていたが、それは故障が原因なので、今回とは状況が異なる(実際に30kmを過ぎてヒザの痛みのためにリタイアした)。
かつてハセツネに出場した時も、スイスアルパインマラソンに出場した時も、ケガさえしなければ完走は絶対にできると思っていた。
これまで一度に走った最長は120kmである(途中、だいぶ歩いているが)。旧東海道を京都から桑名まで20時間ほどかけて行ったが、翌朝は起きられずに、東京まで行く予定がわずか初日だけでリタイアとなってしまった。
それ以外では100kmを越える距離を経験したことは無いし、ハセツネなどのロングトレイルももう20年近く前のことだ。
今回は公称112kmだが、実際は95kmくらいだろう。それにしても自分の経験では最長の部類に入る。おまけにコースの半分以上はトレイルである。
しかし不安感は徐々に少なくなってきた。気持ちが前向きになってきているのが一番良いことだと思う。
あまり守りに入らずに、攻めの走りをしたいと思っている。

ワクワク、ドキドキ・・・

いよいよ六甲縦走キャノンボールランのスタートが4日後に迫ってきた。

1ヶ月前は『完走はとてもムリ』という気分だったが、今月の試走で『ひょっとしたらいけるかも???』という気持ちになってきて、今は『絶対完走してやる!!!』モードに切り替わってきている。
おそらく先週末の練習がうまくいったせいだと思うが、ロードの30km走がうまく走れたからと言って、100km近いトレイルが走れるということにはつながらないということは頭では十分にわかっているのに、何故か気分が良くなってきているのだ。
まぁ、何に関しても気持ちは大切なので、ここはこのままハイな状態をキープしてレースに突入したいと思う。戦略的にもアグレッシブに行きたいと考えている。
先週はその前の六甲試走の疲れで平日はあまり走らなかったので、今週もその流れで行こう。
ただ、天気予報は微妙。少なくとも好天は期待できなさそうだ。やっぱり・・・。

競技場インターバル

今日は競技場での練習会で、予定表ではペース走かビルドアップになっていたが、なぜかインターバルをやることになった。
先週、一人でやろうとして失敗しているので、今日は1000mを4分ペースの集団に入ることにした。
インターバルは久しぶりで、しかも先週失敗した後なので、かなり不安を抱えてスタートした。こういうスピードで走るのは本当に久しぶりだが、何とか1本目を3’58″で終えることができて少しほっとした。
2本目から4本目までは若干余裕がある感じで、4分チョイでクリア。タイム的には満足できるものではないが、少し身体も慣れてきて、気持ちが楽になった。
ラストの5本目は目一杯までいこうと思って、最初から速めで出る。みんなも同じ気持ちで、ラスト200mでさらにギアチェンジして、3’52″で終了した。
心拍数が170前後まで上がったのは久しぶりで、まだこういう走りができることが確認できてほっとした。
午後にスーパーに買い物に出かけたら、公園にユキヤナギが咲いてきていた。もう春だ。
次の土曜日夜からキャノンボール。この大会はこれまでことごとく雨や吹雪などの悪天に見舞われているようだが、雨や雪だけは勘弁してほしいと思っている。

山田池30kmジョグ

今日は予定通り、山田池で30kmジョグをやった。
来週の六甲キャノンボールに向けて、距離よりも少しスピードにウェイトを置いた走りをしたいので、あまりチンタラペースにはならないようにしたいと思った。
ロングジョグにはちょうど快適な気候で、暑くもなく寒くもなく、快適に走ることができた。
全体の平均では昨日とほぼ同様のキロ5分20秒ペースだったが、終盤の10kmはほぼキロ5分までペースアップできたので、いい練習ができたと思う。あまりペースアップを意識せず、自然な感覚で良いペースが維持できた。
今日は久しぶりにウォークマンをつけて走った。気分転換という意味合いだったが、leyona のライブ盤 Rollin’ & Tumblin’ の軽快なリズムも良かったように思う。

山田池ジョグ

六甲の疲労が思ったより残って、今週は夕方はこれまでほとんどまともに走っていなかったが、今日は1週間ぶりに山田池へ行った。起床時の心拍数もようやく48と落ち着いてきていた。
そんなにペースを上げるつもりはなかったが、10kmを平均でキロ5分20秒ペースだったので、夕方のジョグにしてはそこそこのペースだった。気温も低めだったので、久しぶりに気分良く走れた。
穂谷川は菜の花が咲いてきていた。時期的に例年より早いのかどうかはわからないが、今年は冬が寒かった割には桜の開花は早いと予想されている。山田池の梅林も、この1週間の間に満開を過ぎてしまっていたようだった。
今週末は気温が上がるらしい。週末はトレイルへは行かず、普通のジョグと練習会だけにしておこうと思う。

ゾーンに入る

スポーツの世界では『ゾーンに入る』という言葉がよく使われる。ゾーンに入っている状態というのは競技の特性(チームスポーツか個人スポーツか、相まみえる競技か記録を争う競技か、など)や個人のメンタリティによって様々だとは思うが、基本的には自分のプレーやパフォーマンスに対する集中力が高まって、周囲にまどわされることなく没頭できている状態のことだろう。
こういう状態というのはスポーツに限らず、音楽や絵画、演劇などの芸術活動、さらに職人工芸的な作業においても生じると思う。ビジネスの世界でも緊張感あふれるような状況では、ゾーンに入ったような状態もあり得るだろう。
私もマラソンでは何度かそういう経験をしたことがある。
フルマラソンがきっちりと走れていた頃は、後半もあまりペースが落ちないのが自分のスタイルだった。それでもだいたいは30kmあたりから少しペースが落ちてくる。ここでのペースダウンを最小限度に抑えられると、35kmからまた盛り返してくる。
ラスト5kmを過ぎるとラストスパートモードに入って、さらに40kmを越えると全力を出し切ろうと踏ん張る。
肉体的には一番きつい状態だが、精神的には非常に充実していて、まるで頭の上の方にもう一人の自分がいて、そいつが走っている自分に対して『最後まで頑張れ!!』と励ましているような気持ちになるのだ。
こういう状態は42.195kmのフルマラソンでしか経験したことが無い。ハーフや30kmではここまで力を出し切るという感じにはならないし、逆に距離がもっと長いと力をセーブしてしまう。かと言って余力を残してゴールしているわけではないのだが。
私がフルマラソンにこだわってきた理由は、これが一番大きいと思う。この感覚をまた味わいたくて、何度もフルマラソンにチャレンジしているのだ。この感覚が味わえれば結果のタイムは大した問題ではない。
しかし残念ながら49歳の時の加古川マラソンを最後に、この感覚には出会えていない。50歳を過ぎてからのフルマラソンでは最後まできっちりと走り切れたことが無いし、トレイルのレースはロードとは感覚が随分違う。
これまでの経験で言うと、こういう感覚はリズムに乗って一定ペースで走れている状態でないと発現しないように思える。だからマラソンでも福知山のような、ラストで急な上り坂になるようなコースではたとえうまく走れていたとしても、おそらくこの感覚は得られないだろう。
また、トレイルで周回コースの場合は初めてだとコースがわからないので、なかなかラストに思い切ってスパートするということができない。ロードレースと違って距離も結構いい加減だし、アップダウンの具合もやはり実際に走ってみないとどんなものなのかはわからない。
トレイルでは、シングルトラックで緩いアップダウンが続くようなところを走っていると(こんな場所はあまり無いのだが)、非常に気持ち良くなることがある。ただこれは、ゾーンに入るというよりはランニングハイに近い感覚のように思う。
クラブに入ってからは、どちらかと言うとレースよりも練習会の時の方が充実感を感じて終われることが多いように思う。
いずれにしてもこのような快感はやはり、自分の限界に近いところまで追い込まないと感じられないはずで、いつまでそんな走りができるのかはわからない。もう最終章に近づいてきていることは間違い無いと思うが。
何とかもう一度マラソンでゾーンに入ってみたい。