またもやトレイルランナーの事故

稲葉実さんと言ってもご存じの方はほとんどおられないと思う。かく言う私もたった1回、インターネットのライブストリーミングに出演(?)されていたのを見ただけだ。

※右端の方
東京在住で 50 歳のトレイルランナーだが、私よりははるかにハイレベルとは言え、大きなレースで上位にからむほどのレベルではない方。ランナーとしての実力よりも、トレイルランニングの普及のような文化的な活動の方で、一部の方々では有名な存在だったらしい。
私が王滝ダートマラソンを走った連休は天気が良くて、山ではずいぶん事故の情報がテレビなどで伝わっていた。北アルプスの鹿島槍でも滑落死亡事故があったのをかすかに記憶していたのだが、これが稲葉実さんだった。
私が鹿島槍を歩いたのはもう何十年も前のことで、唯一の記憶は稜線の西側斜面の少し下の方にクマがいたことくらいで、滑落するような岩場があったのかどうか、まったく思い出せない。少なくともマッターホルンのような緊張感の中での登山では無かったことだけは間違い無い。
昨日、上州武尊山スカイビューウルトラトレイルという大会が開催されたが、このコースの試走に行かれた方が試走中に亡くなる(心臓麻痺か何か?)という事故も少し前にあった。
これらは非常にまれなケースだと思うが、トレイルランナーというのは山ではどちらかと言うと疎まれる存在で、特にアルプスの稜線などをランニングシューズで軽装で走っていると、一般登山者からのキビシイ視線を受けることが少なくない。
事故でも起こせば『バカモノが。ざまぁ見ろ!!』と思われることは間違い無い。
だから、私自身は特にアルプスのような高山では事故を起こさないように非常に注意している。六甲や生駒程度であればケガをしてもまぁ何とかなりそうだが、アルプスではそうはいかない。
とは言っても注意しただけで事故が無くなる訳ではないので、非常用のブランケットや最低限度の救急用具などは持っておいて、できる範囲でのセルフレスキューはできるようにしている。
保険に入ったからと言って、油断しないように十分注意したい。

王滝ダートマラソン考察

王滝ダートマラソンの公式記録が公開された。
42km 部門は参加 227 名、完走者 222 名。私は全体で 69 位、50 台で 30 人中 12 位だった。
優勝タイムは 3:01:40。女性で私より前は一人だけだったが、この人は 3:41:44 で、全体でも 21 位という快足ランナーだった。
私より年上で私より早くゴールされたのは、私の数分前に 64 歳の方のみ。50 台で私より前の人はみんな 50 台前半だった。
この数字を見る限りでは結果は悪くないと思うが、定員 500 人に対して 300 人以下しか集まらない不人気大会なので、招待されていると思われる一握りの選手以外はそれなりのレベルということなのだろう。
一昨年と詳しく較べてみると、約 20km の中間あたりで前回より約2分の遅れ。後半の登りが終わったあたりで約4分、下って 32km あたりのロードに出たところで5分くらいの遅れだった。
何と残りの下りロード約 8km の間で数分もタイムを落としてしまっていた。キロ1分近い遅れだ。右足の不調があったとは言え、ここまで落ちているとは思わなかった。細かく見てみると、キロ6分より落ちている部分も少しあった。
しかし冷静に考えると、このところはロードのフルでも最後の 5km は 30 分以上かかっていることが多いので、それに較べればまだマシかも知れない。
ロードレースは引退気分だが、レース参加を辞めてしまうとさらに落ち込みに拍車がかかると思って、年末には2年ぶりに加古川のフルを走ることにした。
王滝ダートマラソンの翌日は信越五岳が開催されていた。絶好のコンディションだったようで、原良和さんが大会記録を大幅に更新して優勝された(これまでの記録保持者は相馬剛さん)。『UTMB で結果を出したかったので、気持ちは複雑』という弁だった。
このレースは 110km だが、トレイルレースの中ではかなり走れるコースのようで、写真を見るとトップグループの人たちはほとんどが手ぶらで走っている。エイドステーションも充実しているようで、上位3人はキロ6分を上回るペースだった。
平地のウルトラのスペシャリストの原さんは、こういうタイプのレースではめっぽう強い。おんたけウルトラの 100km でも7時間台の驚異的な記録を持たれているが、本格的なトレイルの 100 マイルになるとまだ経験値が足りないとおっしゃっていた。
レースのタイプによる適性というのは、努力だけではどうしても越えられない何かがあるような気がしてならない。
条件が厳しくなればなるほど強さを発揮されるのが鏑木さんで、鏑木さんの練習のハードさはつとに有名だが、やはり何か持って生まれた適性のようなものがあるのではないかと思えてしまう。ご本人はそう思われたくは無いだろうが。
相馬さんもトレイルの 100 マイルでは目立った成績を残せていないので、原さんもひょっとしたら同じようなタイプなのかもと思ったりもする(昨年の UTMF で優勝されているが)。
次元が違うが、実は私もこのタイプなんだろうとな感じているのだ。

王滝ダートマラソン

土曜日の王滝ダートマラソンは、せっかくなので行くことにした。手続きは土曜日の朝なので、明日の夜に出かける予定。
ただ、このところ左足首に痛みがある。走り始めに痛みが出ても次第に何ともなくなるというタイプではなくて、最初は大丈夫だが少しすると痛みが出てきて、それがそのままずっと続くというタイプで、多少不安を感じる。
原因はわかっている。
志賀高原のコースは路面が急な斜面になっている箇所が多く、それも右側に非常に傾いた滑りやすいドロドロの道を必死で支えながら進むということが多かったので、その後遺症であることは間違い無い。
レースが終わってからもしばらく不調だったのだが、この月曜日に山田池で少しペースを上げて走ってから(と言ってもたかがキロ5分少々というレベルなのだが)、少し痛みが強くなってしまった。
昨日はクラブの最後のナイター練習会だったので、直前の刺激のために行きたかったのだが、ここでムリをすると致命傷になりかねないと思って、完全休養日にした。
しかし今朝のジョグでは期待したほどには改善していなかったので、もう本番までは走らないつもり。
今度の大会は距離は約 42km で、制限時間は8時間。ほとんどが林道で、終盤はロードの下りというイージーなコースなので、故障やケガさえなければ完走はできるだろう。
しかし油断は禁物だ。そういう時に限って思いがけないアクシデントに見舞われたりするので、気持ちを引き締めて、チャレンジする気持ちで臨まなければならないと思う。
下りでの転倒と捻挫だけは十分に注意したい。

プロの仕事

志賀高原エクストリームトライアングルは悪天が予想されたにも関わらず、白地のポリエステルの長袖ジップシャツで走った(歩いた?)。上半身が地面に着くようなハデな転倒は一度しか無かったはずだが、終わってみるとシャツが泥まみれになっていた。
帰ってからお湯につけたりして二回ほど入念に洗ったが、ひどい汚れはほとんど落ちなかった。お気に入りのシャツだったのでひどくがっかりして、困った時の最後の手段で YAHOO 知恵袋で尋ねてみたところ、『クリーニング店に相談してみたら』という回答が返ってきた。
目から鱗だった!!。さっそく近所で自家洗いしている店に持って行ったところ、信じられないくらい真っ白になって返ってきた。しかも通常の長袖シャツ料金だけだった。
せめて離れて見た時に汚れが目立たない程度になってくれればと思っていたのだが、近くで目をこらしてみたら少し汚れが残っている部分があるというレベルまできれいになっていた。
店にとってどの程度のレベルの仕事だったのかはわからないが、やはり困ったときはプロにまかせるべきだと再認識した。
それで気分が良くなったのか、久しぶりにロードレースにエントリーした。12/7 の八幡市民マラソンのハーフ。
参加費 1,000 円という今時あり得ない大会で、これまでは知らないうちにエントリーが終わっていたのだが、今日たまたま思い出して調べたところ、今日からエントリーが始まっていた。
ロードレースはもうほぼ引退気分なのだが、たまには走っておかないとタイムの劣化に一段と拍車がかかってしまう。
ちょうどいい大会にエントリーできて、今日はハッピーな気分だ。

Herbie Hancock ライブ

昨日は Herbie Hancock のライブだった。
会場の森ノ宮ピロティホールは全席 1000 名程度のやや小ぶりな会場なのだが、なぜか後方3分の1くらいはすべて空席になっている。それより前はほぼ満員状態だったが、おそらく観客は数百人くらいだったと思う。
これまでに Herbie Hancock のライブは何度も言っているが、野外のフェスティバルだったり、大きな会場ばかりだったので、この客の少なさは以外だった。それでもまだ当日券を売っているくらいだった。
今回の目玉は Hancock よりはドラムの Vinnie Colaiuta。Jeff Back のバンドで演奏しているのを見て驚いて、機会があればぜひ生で見てみたいと思っていた。
バンドメンバーはあとベースの James Genus とギターの Lionel Loueke。二人とも知らないが、James Genus は Brecker Brothers にいたらしい。
オープニングは予想通りの Actual Proof。Colaiuta のドラムは期待に違わず素晴らしい!!。私が生で見た中では Tony Williams(故人)、Jack DeJohnette に並ぶ世界最高レベルのドラマーだ。
その後は Watermelon Man や Cantalope Island など、ほぼすべて 60 年代から 70 年代の曲ばかりだった。唯一の例外はアンコールで Rockit のリフだけをやったくらい。それもすぐに Cameleon に移っていった。
Hancock はもう年も年なので(74)、あまり熱い演奏は期待していなかったのだが、予想をはるかに上回る素晴らしい演奏だった。これまでに見たのはすべてアコースティックバンドばかりで、エレクトリックは初めてだったが、これまでで一番良かったのではないかと感じた。
ただ、15,000 円はちょっと高いなという感じ。12,000 円くらいが妥当なところだ。また、個人的な好みで言えばやはり Hancock はウッドベースのアコースティックバンドの方が好きだ。
とは言え、期待が大きすぎてちょっと不完全燃焼だった Jeff Beck に較べると、予想以上に素晴らしいライブで、満足感を感じながら大阪城公園をジョグして京橋に戻った。

エクストリームトライアングル2014リザルト

エクストリームトライアングルのリザルトが公開された。参加者 516 名、完走者 315 名で、完走率 61% とのこと。
関門通過タイムを細かく見てみると、第2関門を私より1時間ほど前に通過して完走した人が一人いたが、完走者のほとんどは2時間以上前に通過されている。
ギリギリ完走くらいの人はだいたい最終セクションが8時間くらいかかっているので、私の見通しはおおむね当たっていたと思う。
第1関門を私より後に通過して、第2関門を私より先に通過した人は二人だけで(そのうちの一人はすぐ前にいた女性)、第2セクションではフラットや下りでずいぶん抜かれた印象があったが、セクション全体で見ると順位はむしろ上がっているくらいだった。
今回の結果は妥当なものだったと思う。もしコースのコンディションが良ければ完走できたかと言うと、微妙なところだ。まったく不可能だったとは思わないが、完走できたと言える自信は無い。
また来年、開催されるかどうかわからないが、少なくとも今は再挑戦したいという気持ちは無い。
これからどうするかはまだ気持ちが定まらないが、今朝エントリーの始まった 10 月末のキャノンボールはまた往復でエントリーした。
昨年、須磨スタートゴールと宝塚スタートゴールの両方を完走して、今年の3月の大会は直前にヒザを痛めて棄権して、もういいかなという気持ちも若干あったのだが、今となっては数少ない自分自身が楽しめる大会なので、やはりエントリーだけはしておこうと思った。
私たちが志賀高原で泥まみれになっているころ、海の向こうでは UTMB が開催されていた。
大本命の François D’Haene が大会記録を更新して優勝したようで、今やこの世界では Kilian Jornet と並んで東西の横綱というところだ。
期待の原良和さんは今年も途中リタイア。昨年の UTMF で優勝して一躍時の人となった原良和さんだが、元々ロードのウルトラのエキスパートだ。この春からはそれまでの仕事を辞めて(病院勤務の医師)、メーカーのサポートなどを受けるプロランナーとしての生活をスタートされている。
しかし今年の UTMF は途中リタイア。四万十のウルトラは連覇されたものの、Western States は終盤歩いてのようやく完走という結果で、UTMB も途中リタイアということで、これから先が難しくなってきているように感じる。
おそらく年齢的に(41 歳?)思い切ったチャレンジにはラストチャンスと考えられたのだろうが、今後が多少心配ではある。まぁ、登山をやる方ではないので、相馬さんのようなことにはならないと思うが。

保険エントリー

今日、初めて気が付いたのだが、今月初めに来年の UTMF の概要案内が発表されていた。
ポイント対象レースが公表されていて、期待通り志賀高原エクストリームトライアングルは2ポイントの予定とのこと。
おんたけウルトラトレイルの 100km は従来通りの3ポイントなので、志賀が完走できればエントリー資格の4ポイントをクリアできるのだが、このレースはおんたけ以上に厳しくなることが予想されるし、天候もどうなるかわからないので、正直なところ不安を感じていた。
一昨年は9月の王滝クロスマウンテンマラソン(現在は王滝ダートマラソン)が1ポイントで対象レースになっていたのだが、昨年は対象レースからはずれていた。
この大会は一昨年に参加していて、様子もわかっているので、これが対象レースなら志賀ではなくてこちらにしたのだが、今年も対象レースにはならないだろうと思っていた。
ところが今年は、対象レースに復活している。
このレースはおんたけウルトラトレイルとコースがかなり重なっていて、林道ばかりの約 42km のコース。一昨年は4時間 13 分くらいだった。アクシデントでも無い限りは間違い無く完走できるレースだ。
調べてみたところ、オンラインでのエントリーはすでに締め切られていたが、振り込みならまだいけるようだったので、志賀の保険としてエントリーすることにした。OSJ の大会なので参加費も良心的な 5,000 円。もちろんエイドは水しかないが。
志賀が完走できればおそらく不参加ということになるだろうが、これで随分気持ちは楽になった。
この安心感が志賀でプラスに働いてくれればと思っている。

トランスジャパンアルプスレース

2年に一度開催されるトランスジャパンアルプスレース(TJAR)は、富山湾の日本海岸をスタートして北アルプス、中央アルプス、南アルプスを縦走して静岡の太平洋岸をゴールとする 400km を越える超ハードレースで、今回で7回目になる。
スタートしたのは台風が本土に近づいていた 10 日の午前0時。スタートを遅らせるのではないかと思ったが、危険な剱の早月尾根を避けて立山室堂経由にコース変更して、予定通りに開始された。事前の選考会をクリアした 30 名ほどが参加している。
昨年、NHK でドキュメンタリーが放送されて一躍知名度が上がった。私も概要は知っていたが、詳しく知ったのはこの放送がきっかけだった。
途中で何カ所か関門があって、ゴール制限は8日間(今回は急遽3時間延長されることになった)。スタートして2日近くだが、トップは早くも上高地を越えているようだ。
大会記録は5日と6時間くらいらしいが、今回は台風の影響によるコース変更(距離が延びた)や途中の停滞などもあったようなので、記録更新はおそらくないだろう。
興味はあるとは言うものの、さすがにこの大会は参加したいとは思わない。一番の理由は、この暑い時期に長いロードを走らなければならない(おそらく走れないと思うが)というのは苦痛以外の何物でも無いということだ。
ただ、アルプスの稜線の一気の縦走はいつか挑戦してみたいという気持ちは持っている。その場合は北アルプスなら栂海新道から焼岳。中央アルプスは木曽駒から摺古木山。南アルプス甲斐駒から光岳だ。
はたしてこれらに挑戦する時間と体力が残っているかどうかが最大の問題なのだが。

Chromecast

先日、たまたま開いたジョーシンのチラシで見つけた google の Chromecat。おもしろそうなのでオークションを利用して少し安く入手した。
基本機能は YouTube の動画をテレビ画面で再生できるというものだが、これはなかなか便利だ。
最近は YouTube で1〜2時間のライブがフルで登録されているものもたくさんあるが、やはりこういうのはテレビの大きな画面でゆっくり見たい。これまでは一旦手元にダウンロードして、それを dvd に焼いていたのだが、長いもので pc でしっかり内容を確認せずに焼いてしまって、見たら実はあまりおもしろくなかったということもあった。それに dvd に焼くのは時間もかかる。
しかし Chromecat を使うとその場ですぐにテレビで再生できる。画質も元データが良ければなかなかの品質だ。これで定価 4,200 円(税別)はなかなかのお買い得だと思う。
さて、今週末はまた御嶽へ。
今度は登山教室の随行なので登山路を頂上まで行くのだが、中高年の皆さまと一緒なので、ゆっくりハイキングというところ。3,000m は私自身も久しぶりだ。天気も悪くなさそうなので、のんびり楽しんできたいと思う。

トレイルランナーの遭難

トレイルランナーの相馬剛さんがマッターホルンで遭難されたと報道されてから数日が経過した。荷物は発見されたものの、ご本人はまだ見つかっていないようだ。
当初から、稜線から 800m ほど滑落されたと報道されていたので、生存の可能性は極めて少ないと思われていたが、もはや絶望的と言わざるを得ない。
相馬さんは 40 歳。最近の成績を見るとそろそろピークを下りかけているかなという感じだが、まだまだトップレベルにあることは間違い無い。少し前までは日本人のトップスリーは鏑木さん、石川さん、相馬さんと言われていた。
ハセツネでの2回の優勝や信越五岳3連覇、ロードのマラソンでも 2 時間 30 分を切るレベルのランナーだった。
長年勤めておられた海上保安庁を辞めて、昨年トレイルランナーとして独立されたばかり。今回は Eiger Ultra Trail を 11 位で完走されて、おそらく楽しみ気分でマッターホルンに登られたのだと思う。
トレイルランニングの前はトライアスロンやクライミングを経験されていて、おそらくクライミングのレベルでは私より上だと思う。楽しみ気分とは言っても決して軽い気持ちで挑まれたのではないはずだ。
私も 20 年少々前にマッターホルンに登っているが、私が登った山の中では間違い無く一番難しい山だった。
単にクライミングのグレードで言えばもっと難しいルートはいくらでも行っているが、登山として求められるトータルな技術力という意味ではマッターホルンは剱や穂高の岩場を攀じるのとはちょっと違う。
ルートのグレードとしては上部でも3級くらいで、このあたりは固定ロープが張ってある。しかし傾斜が中途半端な箇所がたくさんあって、急な壁なら手も使ってよじ登れるのだが、なまじ傾斜が緩いと足元の悪い傾いた平均台の上をバランスを取りながら渡るような状態になってしまう。おまけに左右は北壁と東壁で、バランスを崩したらまず助からない。
ガイド登山であればガイドがロープで確保してくれるが、相馬さんは単独だったようで、私も単独だったので、まさに命がけである。
800m も滑落されたということは、このあたりでバランスを崩されたのではないかと思う。浮き石もあるし、場合によっては落石に当たるということも有り得る。
トレイルランニングという言葉がまだ無かった 1986 年に『ランニング登山』という刺激的な本を書かれたのは東工大の教授だった下嶋浩さん(出版当時は助教授)。私より 10 歳ほど年上の方だった。
この頃、富士登山競争はあったがハセツネはまだ始まっていなかった。今は無くなってしまった六甲全山縦走タイムトライアルで、下嶋さんのタイムを上回った時は本当にうれしかった。
その下嶋さんも、1999 年にマッターホルンで滑落して死亡された。下嶋さんも登山のベテランだった。
普段、山を走っていると、本能的に岩場でもスタスタと行きたくなるものだ。特にクライミングの経験があると、これくらいなら大丈夫という気持ちがどうしても出てきてしまう。
本格的な岩場のルートならロープを使って安全を確保するのだが、マッターホルンのルートというのはこれが微妙なレベルで、私もそうだったが、ロープを出して確保するのが面倒なのだ。
単独で岩場でロープを使うとすると、同じラインを2度登らなければならない。下を固定して登って、上を固定してまた下まで下りて、固定をはずしてまた上に登るということになる。急な壁なら致し方ないが、マッターホルンくらいの傾斜だとどうしても行ってしまいたくなるのだ。
相馬さんにしても下嶋さんにしても、事故の時の状況が実際のところどうだったのかはわからないが、私自身経験したことのあるルートなので、非常にリアルにイメージできてしまうのだ。
相馬さんはまだ子供さんも小さいし、公務員も辞めておられるので、ご家族のことを思うと何ともやり切れない気持ちになる。
せっかくこれまで事故を起こさずにやってこられたので、山では絶対に死なないようにしたいと再び強く思った。