台高山脈の桧塚奥峰(ひのきづかおくみね)が以前から気になっていた。しかし主稜線からはかなり離れているので、ちょっと寄り道というわけにはいかない。
ここを主目的として大又から往復というのは行程としてはちょっと物足らない感じがする。
何とかうまいコース設定ができないものかと調べていたら、大又から薊岳へ直接上がれるルートがあるということを知った。地図には記載されていないが、そこそこ登られている模様。
大又からまず薊岳へ登って、それから明神岳。そして桧塚奥峰を往復して明神平から通常ルートで大又に下れば満足できそうに思った。
しかしなかなか実行に移すチャンスが無いまま年末になってしまった。
今月最後の週末はおそらく今年最後の山行になるだろう。
最後を締めるには十分価値のあるルートだが、むしろこの積雪期にこのコースを踏破できるかどうかという方が問題だ。
天気予報では土曜日の方が天気が良さそうだったので、12/26(土)の早朝に大又に向けて車を走らせた。
家から2時間少々で大又の駐車場に到着した。まだ7時半のちょっと前だが、すでに半分以上が車でうまっている。私が着いた時にも前後して4台くらいの車がやってきた。
この時期にこんなにたくさんの人がやってくるとは思っていなかった。こんなことは初めてだ。
準備を整えて7時45分に駐車場を出発した。今日は上部はたっぷり雪があることは間違いないので、靴はしっかりしたゴアテックスの登山靴にした。ただし念のためにと思って持って来たワカンは置いていくことにした。
朽ちた林道を少し行ったところにある階段が薊岳へのルートの取り付きになる。
なかなか急な階段だが、その上の道はさらに急斜面だった。写真では傾斜の程度がよくわからないけれど、足を滑らせたらまず下まで止まらないような急斜面で、こんな道は絶対に下りたくない。
本日デビューのブラックダイアモンドのウィペットポール(ピック付きポール)のピックまで登場する場面もあった。
地面には先行者の足跡がうかがえる。
ルートが不明瞭な場所もあってちょっと苦労したが、30分もすると傾斜が穏やかになってきた。
標高が 1000m を過ぎると雪が出てきて風が冷たくなって耳が冷えるので、ネックゲイターを出して帽子の上から被った。
さらにそこから数分で雪が多くなってきたのでアイゼンを着けた。今日は 10 本爪のアイゼンを用意してきている。装着する時に、前方に単独行者がちらっと見えた。
しばらく快調に登っていたのだが突然、右のアイゼンがはずれた。何と、前と後ろをつないでいるプレートを止めるネジがはずれて無くなってしまっている!!
取りあえずバンドをきつくしばって歩いてみたが、やはりその程度ではまたすぐにはずれてしまう。
これは困った。このあともずっと雪の斜面だと言うのに。
やはりここは諦めて下りるしかないのだろうか。
一度は安全最優先で下山と思ったのだが、もっと総合的に考えるとあの急斜面を下るのはそれほど安全なことではない。
もうかなり上まで来ているし、稜線は何度か歩いたことがあって、ほとんどなだらかで危険な箇所はなかったはず。
気持ちを取り直して先に進むことにした。ただしこの時点で桧塚奥峰は諦めることにした。明神岳まで行って、明神平から下山する。
幸い、雪はキックステップが効く程度の固さで、斜面も序盤のような急な場所は出てこなかったので、思いのほかすんなりと稜線に登り上げた。
まずは西にある薊岳を目指す。風が冷たいがヤッケを羽織るのは面倒くさい。
だいぶ山頂に近づいた頃、上から一人の登山者が下りてきた。たぶん登りの時に前にいた人だと思う。
10時6分、三年ぶりの薊岳(1406m)に到着した。
残念ながら展望はまったく無し。
写真を撮ったら早々に引き返して明神岳に向かう。
大又から登り上げたところを過ぎてしばらく進むと、先ほど出会った単独行者に追いついた。ここから先は新しい踏み跡は無かった。明神平から薊岳に向かう登山者がいるだろうと思っていたが、そういう人には出会わない。
風が当たらない場所で今日初めて腰を下ろして、クッキーなどを少し口に入れた。
明神平の手前の前山を越える。
明神平はと言うと・・・。
ここまで来るとちらほら登山者に出会うようになってきた。どうもこのあたりは雪山入門ハイキングコースのようになっているようだ。
11時32分、明神岳(穂高明神、1432m)に到着した。実は薊岳よりも高い。ここは一年半ぶり。
桧塚奥峰はここから先に進むのだが、今日はやめておく。おそらくラッセル間違い無しだと思う。
何人かの登山者とすれ違いながら明神平に向かって下る。
テントを張っているパーティがあった。もう雪山テント泊はやりたいとは思わない。
明神平の中心部の東屋には休んでいる人が何人か見えた。おそらくコンロでも出しているのだろう。私は最短経路で下山路に向かう。
下山路の途中にある湧水はこの時期でもまだ流れていた。
もう少し下って、見覚えのあるベンチに腰掛けておにぎり休憩にした。
まだまだ登ってくる人たちがいる。駐車場はどうなっているのだろうか。
下りでは片足アイゼンはやはり要注意だ。たくさんの人が歩いて踏み固められているので、うっかり足を下ろすとずるっと滑ってしまう。
沢の水嵩は少なめで、何ヶ所かの渡渉地点はまったく問題無かった。
ようやく林道の終点が見えてきた。
ここの橋を渡ったところでアイゼンを脱いだ。
林道のそばに滝があった。二階滝というらしい。記憶に無い。
登った斜面を見上げてみたら、女性が一人で下りてきていた。大したものです。
午後1時20分、駐車場に戻って来た。やはり車はあふれていた。
今日も温泉は無しで帰ることにする。そして今日の締めは・・・
丹生川上神社中社。これまで何度も前を通りながら、一度も立ち寄ったことが無かった。
今年は丹生川上神社上社と丹生川上神社下社にも参拝したので、これで三つとも参拝したことになる。何かご利益があるだろうか。
序盤のアイゼントラブルで一時はどうなることかと思ったが、あそこで下山しなくて良かった。まぁ結果論かも知れないけれど、一年最後の山行が途中敗退ではあまりにもなさけない。
今年はコロナ禍で例年に比べると出かけにくい状況ではあったけれど、そういう状況の元ではそこそこ満足することができた一年だったと思う。