熊野古道中辺路2日目

朝5時前に起きて、6時15分にヘッドランプで出発。寒かったので雨具の上下を羽織って歩き出した。

歩き出してほんの少しの所に水場があった。明るかったら見えていただろう。そして、ほどなく石畳の道になった。
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不気味な池は高原池。写真ではよく見えない。ずっと登り基調で早くも暑くなってきたので雨具を脱いだ。
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大門王子。
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稜線の向こうに陽が昇ってきた。私が山で一番好きな時間帯。
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十丈王子。平安・鎌倉時代は重點(じゅうてん)王子と呼ばれていた。
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小判をくわえたまま、飢えと疲労のためにここで倒れたという巡礼を弔ってまつられた小判地蔵。
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悪四郎屋敷跡、上多和茶屋跡を越えて、大坂本王子。
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R311 がすぐそばに迫ってきて、道路の反対側に道の駅・熊野古道中辺路が見えた。先を急ぎたいのでパス。
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そしてようやく牛馬童子像に到着した。実は明治時代に造られたものらしい。
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時間は9時ちょっと過ぎ。思ったよりも順調に進んでいる。トレイル区間の方が標準コースタイムがゆるい感じがする。ひょっとしたら継桜王子10時の関門に間に合うかも・・・。ほとんど諦め気分だったのが、ちょっと希望が蘇ってきた。
展望台から近露の集落を見下ろす。
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近露王子には9時15分に到着した。
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しばらく車道を行って、比曽原王子。
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そして関門の継桜王子に10時7分に到着した。
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ここで茶屋の前のベンチに座って補給しながら、これからどうするか思案した。リタイアするのならここが最終ポイントになる。
ここから熊野本宮大社までの標準コースタイムと最終バスの時刻までの時間はまったく同じ6時間30分。トレイル区間ではわりと短縮できていて、滝尻王子からここまでの標準コースタイム6時間50分のところを5時間半ほどで来ている。アクシデントさえ無ければ間に合いそうだけれど、余裕があるとは言えない。
もしここでリタイアしたら再挑戦するかどうかは微妙なところだ。紀伊田辺から滝尻王子までの車道区間はもう歩きたくない。しかし滝尻王子スタートの再挑戦ではやはり満足感に欠けるだろう。熊野速玉大社まで行くのであれば話も別だけれど。
もうあと30分早く出発していれば迷うことは無かったのだけれど、今となっては後の祭りだ。
やはり覚悟を決めて行くしかないだろう。まるで関門に追われるトレランレースのようだけれど、久しぶりにそういう気分を味わうのも悪くは無い。そういう状態だからこそ 100% の力が発揮できるということもある。それに正月早々、連続敗退というのは何としても避けたい。
10時20分、熊野本宮大社に向かって出発した。
しばらく車道を行く。まずは中川王子。しかし本当の王子跡は山道を少し登っていかなければならないのでパスした。
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お次は小広王子。ここも同様、山道には上がらず。すでに肩の裏側がかなり痛い。
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このあと山道に入って、しばらく登って熊瀬川王子。このあたりで反対向きに歩いているパーティに出会った。山道で他のバーティに出会ったのは今回初めて。
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どんどん下ると車道に出た。ところがここから先が通行止め。実は 2011 年の台風での被害とのこと。
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そう言えば案内に一部迂回路があることが記載されていた。本道との合流地点まで1時間半と書かれている。案内の標準コースタイムは本来の道で書かれているので、実際には迂回分をプラスして考えなければならない。さて、どれくらい余計にかかるのだろうか。こんなに長い間通行止めになっているのであれば、ネットで公開している案内は最近のコースで記載しておいてほしい。
いずれにしてもここまで来たら先に行くしかないので車道を進む。このまま車道で行くのかと思ったら、トレイルに入る道標があった。以外としっかりした道で、ずっと以前からあった道ではないかと思う。それにしても登りがずっと続く。
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関門時間が気になってきたけれど、ここはあせらずにじっくり歩く。ロングトレイルを最短時間で歩くコツは、体力を消耗するような登りはあまり頑張らずに、平坦や緩い下り道、そして林道でペースを上げること。登りで頑張っても実はそれほどの時間短縮にはならない。
と思ってじっくり構えて登って、峠を越えて下りになったところで一息ついて大福休憩にした。そこでコースタイムを確認したところ、この先、本道に出会うまでどのくらいかかるのかがわからないのだけれど、ざっくり関門時刻から 30 分くらいは遅れている感じだ。
ギアチェンジして急いで下って、その後の林道部分は小走り。またトレイルに入って、迂回路に入ってから約1時間で本道合流地点手前の蛇形(じゃがた)地蔵に着いた。
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ほどなく本道に合流。
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少し行って湯川王子。おおむね標準コースタイムくらいまで戻っていた。ちょっと安心した。
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この後、三越峠(みこしとうげ)までの登りは九十九折れで苦しかった。
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次の目標は船玉神社なのだけれど、ここに向かう古道がまたもや通行止めになっていた。これは昨秋の台風の影響のようだ。林道をそのまま進む。重荷がこたえるので時々腕を後ろに回してこぶしでザックを支える。
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迂回路ということになっているけれど、時間的にはショートカット。三越峠から1時間、2時前に発心門(ほっしんもん)王子に到着した。
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標準コースタイムであと2時間くらいのところ、最終バスまで2時間 40 分あるので、もう大丈夫だ。一気に気が楽になった。
ここからはずっと車道で猪鼻(いのはな)王子。王子跡には多くの場所でこのような水飲み場や水道がある。
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トレイルになったかと思ったらまた車道になって、思い出の果無山脈(遠方の山脈)。
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そして伏拝(ふしおがみ)王子。
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3時7分、小辺路との合流点の三軒茶屋跡に到着した。ここははっきり覚えている。時間があるのでベンチでパウンドケーキを食べた。
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小辺路で来た時はここから先は観光客風情の人たちがたくさんいたけれど、今日は真冬のせいか誰にも会わない。
車道に下りて、最後の祓殿(はらいど)王子。
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3時48分、熊野本宮大社の裏門に到着した。
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中は撮影禁止なので写真は無し。無事到着したお礼に本殿でお参りした。もっと感激するかと思っていたけれど、それほどでもなかった。小辺路の時の方が満足感が大きかったように思う。
石段を下りて正面の山門に到着したのは3時55分だった。
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ここの前にあるバス停を見ると、誰もいない。本当に便があるのか心配になったけれど、時刻表を見ると間違い無い。
時間があるのでバス停に荷物を置いて大鳥居まで行ってみた。日本一の高さ(33.9m)で、大神神社の大鳥居(32.2m)よりも大きい。ただし平成12年完成の鉄筋コンクリート製で、大神神社の大鳥居も昭和61年。歴史的価値は現時点ではまだ無いと言ってもいいでしょう。
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明治22年の水害まではここの先の大斎原(おおゆのはら)に社殿があった。
バスは定刻(4時40分)をちょっと過ぎてやってきた。乗客は私以外は出発直前にやってきた中国人らしき女性二人連れだけ。この二人も少し行った温泉で下りて、その近くの温泉で男性客が一人乗ってきて、田辺の市街地に近づくまではずっと乗客二人だけという状態だった。
2時間10分ほどかかって、前日出発した紀伊田辺駅に戻ってきた。
gps のトラックによると今日のコースは約 33km。二日で 64km ほど歩いた。古道を楽しむというよりは関門に追われるトレランレースのようになってしまったが、あまり文化的な素養のある人間ではないので、自分としてはこういうのが一番楽しい。
中辺路はこの先まだ熊野那智大社、そして熊野速玉大社まで続くけれど、これをやるかどうかはちょっと微妙。気が向いたらということにしておこうと思う。

熊野古道中辺路1日目

せっかくの3連休。特に日曜日と月曜日は天気も良さそうなので、久しぶりにテント泊で出かけたいと思った。しかしさすがにこの時期に積雪のあるようなまともな山は気が向かない。さりとて街中歩きでは芸がなさ過ぎる。
そこで思いついたのが熊野古道の中辺路(なかへち)。
2年前に小辺路を歩いた時から中辺路の事は知ってはいたけれど、車道部分が多そうであまり惹かれなかった。しかし今回の目的にはかなり合致しそうだ。標高も高くて 700m 未満程度なので、雪が舞うことはあっても積雪は無いだろう。
紀伊田辺から新宮までの全コースだと 130km くらいになるけれど、よく歩かれているのは滝尻王子から熊野本宮大社までの約 40km。紀伊田辺からスタートすれば 60km 少々ということで、2日行程にはちょうどいい感じだ。小辺路よりは若干短く、アップダウンも少ない。
ただ、アプローチが遠くて、しかも時期的に日照時間が短いので、実質行動時間は限られる。さすがにこういうコースで夜間ヘッドランプ歩行はやりたくない。
それと、小辺路の時は5月だったのでシェルターと薄いシュラフで何とかなったけれど、この季節は標高が高くなくてもしっかりしたテントとダウンのシュラフでないと不安だ。当然、荷物は重くなる。結果的には荷物は 11kg くらいで収まったけれど、体感的にはずっしりと重い。
早い時間は特急列車が無いので、5時3分の始発で出ても紀伊田辺に到着したのは 10 時前だった。

小辺路の時の帰路以来の紀伊田辺駅。駅前で準備をして、出発したのは 10 時 15 分だった。
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ハナから改札口は駅の北側と思っていたので、出発早々、反対方向に歩き出してしまった。地図にははっきり南側になっているというのに、何たること。gps のおかげですぐに気が付いた。
コースガイドに記載されているように、秋津王子に寄るために会津川を渡る。
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ちなみに「王子」とは「王子社」のことで、熊野の神様の御子神(みこがみ。子にあたる神のこと)が祀られているところで、参詣者の休憩所でもあった所のこと。中辺路の道中にたくさんある。
平坦な道なのでちょっとジョグにしてみたが、すぐにやめた。とても続けられないと感じたし、ムリに続けたら後でとんでもないことになりそうだった。
実は 30 年くらい前に、テントとシュラフ、コンロを担いで3日間で琵琶湖を一周したことがある。確か年末だったように思う。琵琶湖一周は 180km くらいあるので、1日目と2日目は 60km 超を進んだはずだ。
食事は現地調達だったものの、山岳テントに今より重いシュラフ、ガスコンロだったので、荷物の重さは今日のものとほとんど変わらなかったはずだが、途中で店に入って食事をしたりしていたので、走る時はキロ6分くらいだったと思う。
キロ6分なんて今なら練習会でトラックを走る時でもそんなに楽なペースではない。フルマラソンで4時間10分くらいのペースなので、大阪マラソンなどではこれくらいのランナーが一番多いのではないだろうか。
そんなことを思い出しながら好天の車道を先を急いで歩いた。
出発して 30 分足らずで秋津王子に到着した。下調べでわかってはいたけれど、元の本当の場所がどこだったのかは今はもうわからないとのことで、わざわざ立ち寄るほどのものではないのだけれど、まぁせっかくなのでついでに・・・という程度のこと。単なる自己満足です。
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ひたすら車道で次は万呂王子。単なる道標にしか見えない。
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次に三栖王子を目指すが、ようやく古道らしき道に入った。
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三栖王子跡。
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王子跡にはだいたいこういうデザインの標識が立っている。じっくり読んでいると時間がかかるので、写真を撮ったら先に進む。ここではそばで大福休憩にした。
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しばらく古道を行く。どうもあまり歩かれていない様子で、枯れ枝などで結構道が荒れている。
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南方熊楠山中裸像撮影場所。
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不明瞭な道を辿って新岡坂トンネルの先で車道に出て、八上王子。
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ここの旧道トンネル越えで結構時間がかかったので、稲葉根トンネルは車道を行く。
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トンネルを出たら稲葉根王子。
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富田川左岸の車道から少しそれて、一瀬王子。ここでおにぎり休憩にした。そろそろ肩の裏側が痛くなってきた。
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おにぎりを食べながら地図を見ていたが、どうも期待していたほど行程が進んでいない。今回のコースは2万5千の地形図を A4 サイズで6ページ(3枚)にプリントしてきたのだけれど、何とか今日中に3ページ目の最後くらいまでは進んでおきたい。明日は帰りの最終バスの時間が決まっているので(4時40分)、何が何でもその時間までには熊野本宮大社に着かなければならない。
そんなわけでこの先、富田川右岸に渡って少し登って行くルートをやめてこのまま左岸を進んで、鮎川王子だけ橋を渡って寄ることにした。
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鮎川王子が合祀された住吉神社。
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このあとしばらく車道を進んで、藤原定家の歌碑を過ぎると古道になった。
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川の右岸には交通量の多い R311 が見えるので、ちょっと不思議な雰囲気。対岸に道の駅があるけれど、立ち寄ることはできない。
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車道に出て R311 を渡って右岸に移って、清姫の墓所。清姫がどういう人なのか、私はよく知りません。
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そのあと単調な車道を淡々と進んで、午後4時15分、6時間かかってようやく滝尻王子に到着した。ここまで 26km くらい。
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ここから本格的な古道が始まる。しかし日没までもう1時間も無い。持ってきた地図の2ページ目がようやく終わったあたりだ。3ページ目の終わりまで行くことは到底不可能なので、今日の目標を高原熊野神社にした。ここは水があるらしい。明日の行程はかなり長くなってしまうが仕方無い。
パンを食べて、4時半に出発した。念のために水を 1L ほど詰めておく。ここからは 500m 毎に標柱がある。ここが起点。
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いきなり急な石段が始まる。
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少し上がると胎内くぐり。時間があればザックを下ろしてくぐってみたいところだけれど、そんな時間は無い。
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そして乳岩。昔、奥州の豪族・藤原秀衡(ひでひら)とその妻が熊野詣でに来た時、ここで妻が産気づき、この岩屋で出産したという伝説がある。
夫妻は赤子をここに残して熊野に向かったのだが、その子は岩から滴り落ちる乳を飲み、狼に守られて無事だったので、奥州へ連れ帰ったと伝えられている。
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さらに登って、不寝王子(ねずおうじ)。
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少し道がなだらかになってきたけれど、またこの先にはしっかりした登りが待っていた。そろそろ薄暗くなってきた。
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飯盛山展望台はカットして先に進む。5時半近くになって、ついにヘッドランプの登場となった。そして車道に出た。
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実は車道に出たらすぐに反対側の古道に入らなければならなかったのだけれど、暗くて気が付かずにそのまま車道を進んでしまった。地図を見るとこのまま進むと先で合流するので、もうそのまま進む。
標識に従って横道にそれると、細い急な登りの石畳の道になった。
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ひょっとしたら高原熊野神社は過ぎてしまったのではないかと思ったら、車道に合流した所に標識が立っていた。案の定、400m も行き過ぎていた。古道沿いにあったのかも知れない。
ちょうどこのそばに涸れた芝生の広いスペースがあって、絶好のテント場だ。夕食分の水はあるし、さっき登ってくる途中に送水パイプのようなものから水があふれている所があった。6時前、今日のねぐらはここにする。
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帰ってから gps のトラックを確認したら、31km ほど進んでいた。一般的にはハイキングや登山の案内表示は実際の距離よりも長めに表記されていることが多いけれど、和歌山県が提供している中辺路の案内は実際の距離より短く表記されているようだ。標準コースタイムよりは早かったけれど、それにしてもわりと厳しいタイム設定だと感じた。
夕食後に地図を眺めていたが、まだ全体の4割くらいしか進んでいない感じだ。最終バスまでに熊野本宮大社まで行くのはかなり厳しそう。地図4ページ目終盤の継桜王子(つぎざくらおうじ)は R311 のバス停が近いようなので、ここがゴールになるかも知れない。ここを過ぎると途中敗退はできなさそうだ。この先、熊野本宮大社まではまだ 22km くらいあって、標準コースタイムは6時間50分となっている。もし10時までに継桜王子に着いたら先に進もうと考えたけれど、かなり厳しそうだ。
夜中にトイレで外に出たら、素晴らしい満天の星空だった。すでに月が沈んでいるので、目のいい人なら天の川が見えたかも。

鈴鹿縦走3日目 御在所山から綿向山

夜は薄いシュラフに入ってちょうどいいくらいの気温で、熟睡することができた。
昨夜もそうだったのだけれど、深夜にシカがテントのすぐそばまでやってきて、鳴き声を上げてしばらく様子を窺っていた。シカなので襲ってくるようなことは無いと思うけれど、あまり気持ちのいいものではない。

昨日よりは少し早く、5時25分に出発した。今日も暑くなりそうだ。しかし2本ずつ持ってきたビールと日本酒、そして食料もほとんど無くなって、背中は軽い。
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しばらく舗装道路を歩いて、石段を上がって御在所山山頂(1209.4m)へ。
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しかし真の最高地点はここから少し先に見える所にある。
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当然、こちらにも立ち寄る(1212m)。
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西側にはこれから向かう雨乞岳。
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武平峠へは下らずに、主稜線から南西に下る不明瞭な道を目指す。この道は長者池のそばから出ているので、まずは長者池へ。
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池のそばの木に古いテープが巻かれていたので、これが目印かと思ってその方向に入ってみたけれど、すぐに道は無くなった。それにこの方向は沢筋で、目指す道は尾根筋のはずなので、ヤブの斜面を適当に尾根に向かって上がったところ、御岳大権現(おんたけだいごんげん)に出た。ここには木曽の御岳権現の分霊が祀られているらしい。
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ここの裏あたりに道があるはずと思って背後に出たところ、テープマークを発見。この道が見つけられるかどうか心配だったのだけれど、これで一安心。その後はテープマークに導かれてのんびりと下って行った。
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30分ほどで武平峠の下から東雨乞岳に向かう道に合流した。ここから東雨乞岳へはなかなかタフな登りが続いた。歩く人が少なそうで、踏み跡も所々不明瞭な部分がある。1時間15分くらいでようやく開けた稜線部分に出て、雨乞岳が見えた。
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7時54分に東雨乞岳(1225m)に到着した。
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雨乞岳(1237.7m)には8時5分に到着した。鈴鹿山脈2番目の標高の山で、今回の最高峰。個人的にも初めてだ。
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東側には昨夜を過ごした御在所山。右の突起は鎌ヶ岳。
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これから先が今日のふたつめの不安ポイント。綿向山まで不明瞭な破線ルートになっている。大峠への道標に従ってヤブ原に突入したが、それはそれはとんでもない状態だった。地面には数十センチ程度のヤブが苅られた道があるとは言うものの、背丈くらいの濃いヤブに覆われていてどこが道なのか目ではまったくわからない。
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ヤブをかき分けて足元の道を確認しながら一歩一歩進むという感じで、いったいいつまでこれが続くのだろうかと不安になる。
しかしこんなに濃いのはほんの数分程度で、ほどなくうっすらと道が判断できるくらいの丈になった。
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またこんなヤブが出てこないことを祈りながら足を進めたが、このあたりは展望の開けた気持ちいい稜線歩きだった。ただし暑い!!
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そして清水頭に到着。
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このあとは次第に樹林帯に入って、最後は一気に下って大峠に出た。ここが雨乞岳と綿向山の間の峠。
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綿向山への登りの道はよくわからなかったが、方向を見定めてしばらく登ると古いテープが出てきた。
次第に傾斜がきつくなって、木の根などをつかまないと上がれないくらいの斜面が続く。さらに稜線の左側はこんな斜面。
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稜線の少し右側の斜面を這うようにテープマークがあったけれど、あるところで先のテープが見えなくなった。踏み跡もわからない。直登は難しそうに見えたのでトラバース気味に進んでみたけれど、どうにもおかしい。また戻ってそのあたりをうろうろしてみたけれど踏み跡は不明。先ほどのトラバースをさらに進んでみたところ、斜面が崩壊してとても進めない場所に出てしまった。
これは困った。ルート的に、安全な場所に戻るとしたら雨乞岳まで戻らなければならない。大峠からは簡単に下れる道が無い。雨乞岳まで戻っても公共交通機関があるのは一番近くて三重県側の湯ノ山温泉。そこまで行くとしたら5時間くらいかかるだろう。何が何でも前に進むしかない。写真を撮る余裕などまったく無い。
gps のルートからはさほどはずれていないので、また戻って急斜面を這いずり上がって稜線に向かって進んだところ、踏み跡に合流できた。胸をなで下ろした。
ほどなくイハイガ岳(964.1m)に到着した。立派な標識が場違いな感じ。
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ここから先は穏やかな稜線になった。暑さは厳しかったけれどこれで最後の山場を越えたという感じがして、気分的に余裕が出てきた。
遙か彼方に見えた綿向山も指呼の距離に近づいてきた。左奥が綿向山。
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竜王山への分岐に出て、もうあと一息。
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ブナの珍変木。気持ちに余裕が出てきたのでくぐっておいた。
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綿向山の山頂はすぐそこ。滅多に無い心の高ぶりを感じた。
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11時18分、綿向山の山頂(1110m)に到着した。
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東側の奥に見えるのは御在所山かと思ったら実は雨乞岳だった。御在所は雨乞の後ろに隠れている(雨乞の方が標高が高いため)。あそこから3時間少々で来たというのは自分でもちょっと意外な感じがした。
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気分的にはもう終わった感じだけれど、ここは標高 1000m 超なので、まだたっぷり下りが残っている。しかし道はしっかりしているはずなので不安は無い。
少し下った所に金明水。がぶ飲みして、ボトルを満タンにした。
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緩い傾斜のつづら折れが続く。こういう道は気持ちが緩むので意識的に気を引き締める。
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行者コバでは消防隊員が訓練をやっていた。祝日だと言うのにご苦労様です。
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うんざりする単調な道を1時間10分ほど下って、登山道末端のヒミズ谷出合小屋まで来た。
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しかしまだ車道がたっぷり残っている。下界に下りてきたので気温はさらに高い。御幸橋では河原で水遊びをしている家族連れが何組かあった。
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昼下がりの炎天下の車道歩きは苦行以外の何物でも無い。平日は一日何本かのコミュニティバスが運行されているけれど、休日は歩くしかない。体力的にはこの3日間の中で一番苦しかった。
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近江鉄道バスの北畑口に着いたのは1時36分だった。3日間の鈴鹿縦走が完成した。感無量だった。
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ここから近江八幡駅へのバスは1時間に1本ある。次は2時24分。待合室の陰で濡れタオルで身体を拭いて着替えて、自動販売機でコーラを買ってカロリーメイトで小腹を満たせた。
昨年の小辺路で久しぶりに山中1泊をやったけれど、山中2泊というのは本当に久しぶりだった。山スキーで麓にベースキャンプのような形でテントを張って複数日過ごしたことはあったけれど、テントを背負って次のテント地まで歩くというのはいつ以来か思い出せないくらいだ。
それにも増して今回、大きな満足感が得られた要因は、この酷暑で最後まで歩き通したこと。
私は昔から暑さが苦手で、若い頃は夏になると食欲が落ちて体重を減らしていた。とは言ってもその頃は暑いと言ってもせいぜい33度くらいで、今のような酷暑ではなかった。アルプスなどの涼しい高山に行っても食欲が出ず、まともに歩けずに下りてきたこともある。
今回、途中敗退にならずに済んだ原因は、途中下山後の交通機関の不便さが最大の歯止めになったのだけれど、それにしても何とか最後まで歩ききる気力と体力があったということは素直に喜びたいと思う。
ただし歩くスピードは期待したほどでは無かった。今回は暑さの影響があるにせよ、昨秋の黒部五郎や今春の乗鞍などにしても、おおむね標準コースタイム10時間くらいのコースを8時間くらいで歩くというのが一日の行動の基準という感じがする。
次に泊まりで行けるのは秋になりそうだけれど、このあたりを基準にコース設定しようと思う。

鈴鹿縦走2日目 石榑峠から御在所山

石榑峠の標高は 700m くらいだけれど、さすがに夜の暑さは下界よりはマシで、しっかり寝ることができた。
少し明るくなってから起きて、準備を整えて出発したのはちょうど6時だった。

しばらくは車道を行く。ただし一般車は入れない。
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車道を上がりきると広場があって、その奥に登山道のテープマークがあった。
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この時間だとまだ暑さはマシ。しかし幸か不幸かピーカンの晴天。鈴鹿にはこんな箇所がたくさんあります。
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なかなかタフなアップダウンを繰り返して、7時50分に三池岳(971.5m)に到着した。ここで大福休憩にした。このあたりから多くの登山者と出会うようになってきた。
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八風峠に向けて下る。正面に次なる目標の釈迦ヶ岳。御在所はさらにその奥。
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八風峠を8時13分に通過。
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この先で細い沢水が流れている箇所があったのだけれど、運悪く数人のパーティが到着したばかりの様子で、こんなのを待っていたらどれだけ時間がかかるかわからないので、諦めて先に進むことにした。水分は多めに持っている。
気温さえ低ければ最高の稜線漫歩なのだけれど、今日はただただ苦行でしかない。三重側に下りてしまおうかという悪魔の囁きもチラッと出てくる。
しかし三重側に下りると帰りの交通機関が大変というのが歯止めになって、9時15分に釈迦ガ岳(1091.9m)に到着した。
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当初の計画では武平峠から鎌ヶ岳をピストンするつもりだったのだけれど、それはもう諦めて、今日は御在所までにしようと思った。
鈴鹿にもあった猫岳(1057.7m)。
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国見岳がはっきり見えてきたけれど、御在所はまだその先。
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この先で水場に遭遇して、ボトルに満タンにした。ちょっと気分が落ち着いた。
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ようやくハト峰(823.1m)に到着。もう勘弁してほしい暑さ!!
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見下ろすとハートマーク。あれは何?
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ハト峰峠。朝明渓谷への道標がうらめしいが、ここで下りたらさらに酷暑に見舞われる。
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登り返して金山(906m)。背景は釈迦ガ岳?
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横道にそれて水晶岳(954m)にも寄っておく。北アルプスの水晶岳を思い出す。
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ようやく根の平峠。
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さて、ここから今日最後の厳しい登りが始まる。slow but steady で黙々と足を運ぶ。
国見岳北面の巨岩が目に入ってきた。
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1時52分、ようやく国見岳(1175.2m)に到着した。山頂から伊勢湾方面の眺め。暑さのせいでかすんで遠くは見えない。
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ようやく御在所の山頂エリアが近くに見えてきた。スキー場のゲレンデもはっきり見える。
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石門に寄り道。自然にしては出来過ぎという感じがするけれど、このあたりにはこういう巨岩の重なったものが随所にある。まさか古墳の跡ということは無いだろう。
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国見峠に降り立った。
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ここはかつては何度も通った峠なのだけれど、それももう20年以上前のこと。過去の記憶はまったく無い。御在所山の山頂に直接向かえるのではと思っていたのだけれど、そういう道は無くて、ロープウェイの山上公園駅までまだ結構な登りが残っていた。
山上エリアのどこかでテントを張ろうと思っていたので、汗まみれになって最後の登りをふんばる。2時27分に突然、舗装道路に飛び出した。
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場違いな観光エリアに一瞬とまどったけれど、テントを張れそうな場所と水場を探しながらロープウェイの駅舎に向かった。
まだ2時半だけれど今日の行動はここで終わりにする。朝6時にスタートしているので、実は8時間半歩いている。
駅の建物に入って自動販売機を眺めたら、ソフトドリンク類はほぼすべて売り切れていた。致し方無く(というのは口実で)、ビールのロング缶を買って、日陰で極上のビールを味わった。
まだ観光客がいっぱいいてテントを張るわけにはいかないので、トイレの水を浄水器に通してボトル満タンにした。
そして眺めのいい場所で早めの夕食にした。辿ってきた山々を振り返りながら。
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そして公園の片隅にテント。標高が 1200m 近いので日が陰るとさすがに過ごしやすくなってきた。
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持ってきたビールと日本酒でいい気分になって、まだ残照の残るうちに心地よい眠りに落ちた。

鈴鹿縦走1日目 藤原岳から石榑峠

先の三連休(7/14〜16)は晴れ続きの予報だったけれど、好天というよりは各地で35度超の酷暑予想だった。
せっかくの晴れ続き予報なので家でクーラーという訳にはいかないけれど、かなりの高山まで出かけないと涼は期待できない。ところが例の豪雨災害からまだ1週間で、山やアプローチの林道の状況がよくわからない。わざわざ遠くまで出かけて行って登れずに帰ってくるというようなことは避けたいので、それほど遠くないエリアでどこか適当な行き先が無いかと考えて、かねてからぼんやり考えていた鈴鹿山脈の縦走をターゲットにすることにした。

家から5時間かけて10時前にようやく西藤原駅に到着した。近鉄特急は使わなかった。使っても1時間くらの短縮にしかならないし、テントを背負っているので水さえあればどこでも泊まれる。
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車なら2時間くらいで来られる。前に考えた時は車で来て休憩所の駐車場に停めて、御在所から湯の山温泉に下りて電車で戻るという1泊2日行程だったけれど、今回は2泊3日で滋賀県側に下山の予定だ。
人気の藤原岳なので登山者がたくさんいるかと思ったけれど、時間が遅いせいか下車した客は私を含めて3人で、登山者は他には無し。準備を整えて10時13分に駅を出たけれど、すでにかなりの気温だ。
休憩所の駐車場はまだ多少の空きがあった。
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登山道に入ると木陰になって多少はマシだけれど、暑さでバテないようにゆっくり登る。それでもすぐに汗が噴き出してきた。
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11時半に8合目に到着した。
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9合目の展望台から伊勢湾方面。
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藤原小屋に到着して、山頂まであとひと登り。
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藤原岳山頂(1140m)には12時15分に到着した。駅からほぼ2時間だった。
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これから向かう方向を眺める。真ん中あたりの草原のようになっているのが竜ヶ岳。
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登山地図ではここから先が破線の不明瞭ルートになっている。山頂に竜ヶ岳方向への道標が立っていたけれどその方向にはまったく道は無く、しばらく周囲をうろうろして、ようやくピンクのテープを発見した。
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これで一安心して、少し進んだ木陰でおにぎり休憩にした。
しかしこれまでのしっかりした道とはうって変わって、急に不明瞭な歩きにくい道になった。テープを見落とさないように進んで、治田(はった)峠の道標に従って下ったが、途中でついに斜面が崩れて通れなくなっている箇所に出てしまった。
少し手前の何とか登れそうな斜面を、木や岩をささえに強引に這いずり上がって、何とか上の道に出た。
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さっきの治田峠への道標は実は古いものだったようで、今は稜線伝いがしっかりした道になっているようだ。藤原岳まで結構いいタイムで来たのでいい気分になっていたのだけれど、これで一気に意気消沈してしまった。
コースタイムより多くかかって、2時前にようやく治田峠に到着した。
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このあたりからは道がはっきりしてきたけれど、それにしても暑い。気温さえ低ければ快適至極のコースなのだけれど、今日は苦行だ。
もう二度と来ないかも知れないので、銚子ヶ岳(1019m)に寄っておく。
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そして静ヶ岳(1088.5m)。
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竜ヶ岳が近づいてきた。
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稜線に上がると笹原になって日が照りつける。たまらん暑さ!! シカは暑くないのだろうか。
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4時26分にようやく竜ヶ岳(1099.3m)に到着した。
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御在所ははるか彼方だ。
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石榑峠より先まで進めるかもと思ったりしていたけれど、今日は石榑峠で打ち切ることにした。ここは水があるはずなので、そこでゆっくりした方がいいだろう。
少し下って、重ね岩。鈴鹿にはこういう巨岩が積み上がったようなものが随所にある。
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ようやく石榑峠に下りてきた。
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三重側に少し下りた所に水場。
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5時10分、今日の行動をここで終わりにする。すぐそばの平坦地にテントを張った。
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まずは冷たい(というほどではないのだけれど・・・)水をがぶ飲みして、頭からかぶって汗を洗い流して、さらにシャツとアームカバーも汗を洗い流した。
そしてポリ袋に水を満たしてビールを冷やして、夕食の準備をした。
やはりかなりの汗をかいていたようで、夜中に何度も水を飲んだ。

乗鞍スカイライン復路

夜中にトイレに起きた時、きっと星空が素晴らしいだろうと思ってメガネをかけて出たところ、期待はずれで星はほんの少ししか見えない。何故かと言うと、月明かりで影ができるほどのド満月だった。
たっぷり寝て、外がちょっと白んできたと感じた5時頃に起きた。
朝は定番の棒ラーメンにサラミを入れる。
食事の用意をしていたところ、何やら奇妙な物音が耳に入った。風はほとんど吹いていない。例えてみれば動物が鼻や喉を軽く鳴らすような音。
クマ?????
全身が凍り付いた。テントを破ってくるのではないか。もし襲われたらどうしよう。ケガをしてもあの携帯エリアまでたどり着ければ何とかなるかも知れない。
そんなことが一瞬にして頭を駆け巡った。
息をひそめてしばらくじっとしていたが、幸い何事も無く時間が過ぎて行った。恐ろしくてテントの外を見る気にならない。
やはり熊よけスプレーは早く入手すべきだと思った。
すっかり明るくなってから外に出たが、今となってはあの音が何だったのかは知る由もない。

ザックに軽食と水分と雨具だけを入れて、アイゼンを装着して出発したのは6時ちょっと過ぎだった。
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鶴ヶ池のそばの雪の斜面を上がると、スキーとスノーシューのトレースに出会った。わりと新しいトレースだが、スノーシューは歩きにくいんじゃないかという感じがする。
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そのトレースを追ってしばらく進む。富士見岳の南側の斜面にライチョウが2羽いた。小さくて写真では見えないけれど。
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剣ヶ峰への道標が現れて、ようやく剣ヶ峰にご対面。まだまだ遠い。
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スキーのシュプールの残る魔利支天岳の東斜面をトラバースぎみに進むが、なかなかの傾斜で緊張する。位ヶ原を登る登山者が見える。涸沢からザイテングラードのような雰囲気。
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今日の装備でこのままこの斜面を進むのは危険と感じた。まぁ足を滑らせても雪の斜面を滑り落ちるだけで、いずれ止まるような地形だけれど、あまり格好のいいものではない。
一旦位ヶ原に下ってそこから登り返しということもチラッと考えたけれど、剣ヶ峰手前のリッジには雪庇が出ている。ここが潮時だ。
元々この時期のこのレベルの山にトレッキングシューズと軽アイゼンで山頂まで行ける可能性はあまり高くないということはわかっていたので、迷いは無かった。標高 2,800m まで上がれただけでも十分という気持ちもあった。
テントには7時半くらいに戻ってきて、装備をまとめて8時前に帰路についた。二泊分の用意をしてきたので本当はもう一日山で過ごしたかったのだけれど、あまりにも時間が早すぎる。私はのんびりぼうっと時間を過ごせるタチではないのだ。今日中に帰ることにした。
車道のすぐそばにライチョウがいた。
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多少は荷物は軽くなっているはずなのだけれど、下りにもかかわらずペースは上がらない。昨年、小辺路の車道歩きでつらかった時よりもひどいくらいの状態になってきた。
時たま立ち止まって腰をストレッチしないと歩き続けられなくなってきた。
軽装で上がってくるハイカーと MTB に出会った。
平湯峠からの下りはさらにつらくて、1〜2分ごとに立ち止まらなければならないほどになってきた。
最もつらかったのは平湯トンネルからの車道に合流してからキャンプ場までの数百メートルで、車が通らない道はあたりを気にせずに立ち止まることができたけれど、たくさんの車が通る道ばたであまりなさけない姿は晒したくない。それくらいのプライドはまだ残している。
こんなにつらい思いをしながら歩くのは近年には記憶が無いと思いながら、最後の気力を振り絞ってキャンプ場に戻ってきた。
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12 時 36 分に到着。ザックを下ろして車のそばにあった丸太に腰を下ろして、しばし放心状態だった。
そんなせいもあって、今回は敗北感はあまり無かった。本来なら「乗鞍岳敗退」というタイトルになるはずなのだが、気持ちとしては結構満足していた。
さて、一息ついたらここへ行くしかないだろう。
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初めて「ひらゆの森」に来たのはもう十数年前だけれど、その時からずっと入浴料は 500 円のまま。消費税増税でも値上げされなかった。今までいろんな温泉に行ってきたけれど、ここに来て以降、ここを上回る質の温泉には出会ったことが無い。
無事に帰宅して、翌朝起きたら足の筋肉痛がひどかった。しかも昔にトレイルレースの後に出た筋肉痛とは場所が違っていた。昔は筋肉痛が出るのは大腿四頭筋だったのだけれど、今回は股関節や下肢のあたり。こんな筋肉痛は初めてだと思う。
ここ数年はトレイルレースの後などでも筋肉痛が出ることはほとんど無かった。その要因は決して筋力がついたのではなく、自己防衛本能で余裕のあるレベルまでしか力を発揮しないようになってきているのだと考えている。
今回くらいの荷物を持って長時間歩くのは、軽装で走り歩きする時とは違う筋肉を使っているということだ。逆に言えば、短期間にこういうことを何度か繰り返せばトレーニング効果が期待できるということかも知れない。
テント泊で山歩きをするのであればせめて 15kg くらいの荷物では普通に歩けるようにしたい。
そして悩ましいのはもう少しまともな登山靴を買うかどうかということ。昨冬からまた雪山に出かけるようになって、装備の不備を感じることが何度かあった。
私に一番向いているのは軽装でロングロートを1日で駆け抜けるスタイルだということはもうわかっているのだけれど、やはり雪山やテント泊も諦めるわけにはいかない。
アイゼンとピッケルはまだ十分使えるものが残っているので、ワンタッチアイゼンが着用できる靴さえ入手すればすべて解決するのだけれど・・・。

乗鞍スカイライン往路

今日(4/28)はスカイラインを歩くだけなので朝はゆっくりめに8時に起きた。
駐車場は満杯で、外に出たら管理事務所の前に行列ができていた。何事かよくわからなかったけれど、キャンプ場の申し込みの列のようだった。そんなに人気があるのだろうか。30 分もしたら車はほとんど無くなっていた。

準備して出発したのは9時ちょっと過ぎだった。足元はトレッキングシューズ。右手に簡易ピッケルになるピック付きのポール、左手には普通の山スキー用ポールを持った。
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それにしても荷物が重い!!。家で重さを計ったところ、水分無しで 11kg くらいだった。今回は上部で水が得られない可能性があるので、2リットルほど余分に持ってきた。最悪、雪を溶かして水を得ることはできるけれど、アルコールはそれほどたくさんは持ってきていない。最終的には 15kg 近くあったのではないかと思う。
しばらくは平湯トンネルに向かう車道の脇を歩く。
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足元にはフキノトウがいっぱい。この先、森林限界くらいまでずっとフキノトウが出ていた。上部では食べられそうなものもあったけれど、荷物になるので採らなかった。
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平湯峠への旧道に入る。車はまだ入れない。
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10 時 12 分に平湯峠に到着した。標高 1,684m。
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若山牧水の歌碑があった。
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ようやく乗鞍スカイラインに入る。道路整備の人達に何度か出会った。
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山スキーで来た時は大崩山の第一尾根や第三尾根を登るので、スカイラインは時折交差するだけなのだが、今回はひたすら車道を歩く。最初からこういう予定だったら MTB で来たのだけれど・・・。
白山の全貌が眺められる。
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11 時ちょうどに夫婦松に着いた。標高 1,900m くらい。ここでおにぎり休憩。ポールが邪魔なのでザックにくくりつけた。
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少し上の展望台からは北アルプスの素晴らしい眺め。左から笠ガ岳、弓折岳。真ん中あたりに槍ガ岳。そしてその右に奥穂高、前穂高。一番右は霞沢岳。
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何と、トレイルランナーが走って下りてきた。
それにしても荷物が重い。こっちに転戦して本当に良かったと思った。飛越新道に行っていたらおそらく1時間くらいで敗退しただろうと思う。白山でも同じようなものだ。登りとは言え車道なので何とか歩けるけれど、まともな登山道の急登ならとても歩けないと思った。
正面に山スキーで何度も行った猫岳(2,581m)が見えてきた。こういうアングルで眺めるのは初めてだ。
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お次はこれも山スキーで何度も行った四ッ岳(2,744.6m)。
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四ッ岳を眺めていたらイヤなことを思い出してしまった。実はこのあたりはクマが多いのだ。
これまで山でクマを見かけたことは何度もあるけれど、半分以上はこのあたりで、特に四ッ岳での山スキーの時が際だって多い。乗鞍では何年か前に夏の観光シーズンに土産物店にクマが乱入したことがある。何せクマ牧場があるような地域なのだ。
出会わないことを祈るしかない。
ところで、以前に山スキーで四ッ岳に来た時に頂上から携帯で電話したことがあって、さすがに乗鞍はスカイラインがあるのでこんな場所でも携帯が繋がるのかと感心したのだけれど、いつの間にか圏外になっていた。
ようやく畳平の手前までやってきた。鶴ヶ池。
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宇宙線観測所が見える。
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2時 38 分、畳平のバスターミナルに到着した。標高約 2,700m。5時間半、19km、標高差 1,400m のアルバイトは楽では無かった。
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夜に風が当たらないように、森林管理署のベランダのテラスにテントを張らせてもらった。
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このテントは昨年末に新調した「ビッグアグネス フライクリーク 1LX」というモデル。シェルターでは寒い季節は厳しいので、ダブルウォールのものがほしかった。それと、通常のドーム型は一人で入るとどうしても頭が上部に当たってしまう。冬場で結露していたりすると非常に不快なので、そうならないような形状のモデルを探したところ、ちょうどこれが安く売られているのを見つけて、勢いで買ってしまった。
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重量は全部で 1.5kg くらいで、それほど軽量ではないのだけれど、軽量をウリにしたダブルウォールテントはたいていインナーの大部分がメッシュになっている。それでは保温性がちょっと心配ということで、このモデルを選択した。
さて、バスターミナルなら携帯は通じるのではと思ったが、残念ながらここも圏外だった。ひょっとしたら再起動したら繋がるかもと試してみたが、やはりダメだった。
実はこの再起動は大失敗だった。スマホの地形図アプリは圏外になってからも地図を表示してくれていたのだけれど、これは地図データをキャッシュしていたようで、再起動でそのデータが消えてしまったのだ。
gps の地図は正規の有料の登山地図ではないので、等高線や主要な道路は表示されるけれど、地形図ほどは詳しくない。私は乗鞍は初めてなので、地図が無いとどういうルートで進めばいいのかわからない。
もう山頂は手の届く所まで来ているので、このままおいそれと帰るわけにはいかない。
何とか解決策が無いかと頭をひねったところ、鶴ヶ池の向こうが大きく開けているのが目に入った。さっきそのすぐそばを工事車両が走っていたので、そこまでは除雪されているということだ。その向こう側まで行けば電波が通じるのではないかと考えて、そちらに向かった。
5分ほど歩いたら「長野県」の看板が現れた。
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ここで長野県側に出たところ、大正解!!。携帯が繋がった。さっそく地形図アプリで地図を読み込ませた。ほんのわずか岐阜県側に戻ったらもう圏外だった。
お次の課題で、どこかに水が流れていないか探してみたところ、車道の下の小さな溝にちょろちょろと水が流れているのを発見した。カップに少しずつ貯めれば利用できそうだ。沸かして飲むものはこれを利用することにしよう。
ビールと日本酒でリッチなディナーを堪能して、まだかすかに明るさが残っているうちにシュラフにもぐった。

3連休

3連休くらいなら年間に何度もあるような気がするけれど、3日間好天続きという予報で迎えられるチャンスはそうそうは無いだろう。
4/28 から 4/30 までの3連休は、天気が良さそうだったらぜひ3日間の行程でどこかの山へ行こうと思っていたけれど、まさかこんな好天予報になるとは思わず、直前になってあわてて行き先を考えた。
せっかくなので雪山に行きたいと思ったけれど、それほど重厚な登山を目指すつもりは無い。何せ本格的な雪山を歩ける靴が無い。できれば急斜面のあまり無い広々とした山域を、まったりと散策してみたいと思った。例えてみればスノーシューハイク向きの山域のようなものだろうか。
ところがそんな都合のいい山域は近場では皆無で、まともに雪が残っている場所を求めるとどうしてもアルプス方面になってしまう。東北や北海道に行けばいくらでもありそうだけれど、いくら何でもそこまでは行けない。
立山は自然条件は絶好なのだけれど、ゴールデンウィークのアルペンルートなんてとても近づく気にならない。
白馬方面まで行けば八方尾根や栂池あたりでそれに近いことが楽しめそうな気もするけれど、いささか遠い。一昔前なら平気だったけれど、もう片道 400km の運転はしんどい。
そんなわけで、そういう山域を選ぶのは諦めて、ルート的には普通の登山ルートを余裕を持った日程で歩いてみようと考えた。
まったく様子を知らない場所というのは不安なので、白山方面を考えた。昨年、白山四峰を登ったので、三ノ峰を含めて白山五峰を3日かけて歩いてみようと思った。
金曜日(4/27)の夜に出る予定で、ふと思って朝に道路状況を調べたところ、何と市ノ瀬までの林道がまだ開いていない!!。帰ってから調べたら 28 日に冬期閉鎖解除された模様。
夜に出発したいので、あわてて次なる行き先を考えた。そして思いついたのはこれも昨年歩いた飛越新道。10 年以上前のちょうどこの時期に山スキー目的で行ったのだけれど、雪が少なくて、薬師岳を歩きで往復しただけで帰ってきたルート。これを再訪してみようと考えた。
出発する前にナビでルートを検索したところ、どういう訳か昨年走りやすかったルートが出てこずに、あの狭いクネクネ道しか出てこない。何か理由があるのだろうか。走りやすかったルートはナビに従って走ったので、はっきりした記憶が無い。
どうも意欲が減退気味で、それでも予定通り出発した。しかし走っているうちに昨年運転で疲れたことが頭に大きくのしかかってきて、またあんな道を深夜に走りたくないという気持ちが強くなった。
そこでふと思いついたのが乗鞍岳。平湯からスカイラインを歩いて山頂直下の適当な所まで行って、その後、山頂を目指すというルートが頭に浮かんだ。地図を持ってきていないけれどスカイラインは迷うことなどあり得ないし、gps にはちょっとした地図が入っている。それにスマホには地形図を見られるアプリを入れている。おそらく乗鞍なら携帯の電波は入るだろうと思った。
深夜の1時半頃、平湯のキャンプ場の駐車場に入った。ここはかつて山スキーで四ッ岳へ行く時に何度も利用させてもらった駐車場なのだけれど、どうもすでにキャップ場は営業している様子。勝手に停めておいて大丈夫だろうか?
着いた時は停まっている車は数台程度だったけれど、夜中のうちにどんどん増えて、朝にはほぼ満杯になっていた。

熊野古道小辺路エピローグ

熊野本宮大社からの帰りは、ビールでも飲みながらのんびり余韻に浸ろうと思っていたのだけれど、乗り物の時刻の都合で、結局ビールは家までお預けとなってしまった。
初めてのファストパッキングは、おおむね期待通りの成果が得られたと思う。
天気さえ荒れなければ今回の装備で無雪期の山ならおおむね行けそうに思えたし、食べた感のある炭水化物系のほとんど無い行動食でも2日間なら特に空腹感を覚えることも無く歩き続けることができた。
二日連続ほぼ 10 時間行動だったけれど、それも特に問題は感じなかった。ただしボッカ力がかなり落ちているので、これは改めてトレーニングの必要がある。
そうは言っても今さら砂袋を担いでのトレーニングなどできるはずもないので、テント泊山行をあまり間を空けずに繰り返すしかないだろう。20kg を担ぐ必要は無い。12〜13kg で長時間歩ければそれでいいのだ。
今回のザックは OMM の Classic 32。容量32Lで、重さ数百グラムの軽量モデル。
そしてサロモンのカスタムフロントポケットを胸の前に装着した(私のものは旧モデル)。行動中は極力ザックを下ろさずに済むようにと思っての装備だったのだけれど、結果的には腰の疲れのためにしばしばザックを下ろさなければならないはめに陥ってしまった。
昔クライミングをやっていた頃、クライミング時に首からモノをぶら下げるというのは禁忌だったので(何かの拍子に首が絞まる!!)、サコッシュは生理的に抵抗感がある。
今回は1泊だったので容量的にはこれでちょうどだったけれど、長期山行になるともう少し大きいサイズのザックが必要だ。
かつては 80L なんて大きさのザックに登攀用具を詰め込んでヨーロッパアルプスに出かけたけれど(その当時は航空会社も余裕があったのか、荷物の超過料金は取られたことがなかった)、もう何年も前に処分してしまった。それに残していたとしてももはや使い道が無い。
40L くらいの大きさの軽量ザックがほしいところだけれど、「山と道」のザックのようなペラペラタイプは最初は避けた方が無難かなと思っている。
ファストパッキングのデビュー戦としては熊野古道小辺路はいい選択だったと思うけれど、正直言って山歩きとしてはあまり魅力のあるコースではなかった。一度歩けばもう十分という感じ。
それほど用事は無いように思うのだけれど、いざ泊まりで出かけようとするとなかなか日程が取れない。次回は来月になるだろう。
さて来月はどこへ行くか、地図を眺めながらコースを決めるのも山行きの大きな楽しみの一つだ。

熊野古道小辺路2日目

2日目は夜明けとともに歩き出すために4時に起きた。
夜は中綿ジャケットとダウンパンツ、そして全身マットのおかげで思ったより快適に寝られた。ただ、朝方は足元が少し寒かったけれど。
朝のメニューはかつて愛用した懐かしの棒ラーメン。しかし大きなミスを犯してしまった。
棒ラーメンは2食分が一袋に入っていて、1食分だけをラップに包んだ時、粉末スープを取り分けるのを忘れてしまっていた。仕方無いので少しでも塩味の足しにと思ってサラミを二つ入れて煮込んだ。
かすかな塩味は悪くなかった。お湯が少なめだったので、粉末スープだったら辛すぎたかも知れない。
コーヒーを飲み終えてテントの外に出た頃には薄ら明るくなっていた。

荷物をまとめて5時過ぎに出発した。もうヘッドランプはいらない。
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歩き出して 30 分足らずで三浦峠(1080m)に到着した。一人でシェルターを張っている人がいた。
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ここからはまたしばらくなだらかな下り基調が続く。木々の間から朝日が差し込んで、とても気持ちがいい。
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しかし早くも腰に鈍痛が出てきた。そうだ、ロキソニンを持ってきているのをすっかり忘れていた。昨日も、終盤で厳しくなってきたら服用しようと思っていたのに、完全に失念していた。
と言うことでおまじない代わりにロキソニンを投入。私はこういう薬はほとんど効かないのだけれど(ヘルニアの時のボルタレンやリリカもまったく効かなかった)、ヘルニア手術で退院した時に持たされたものがまだたくさん残っている。こんな時にでも使わないともったいない。
単調でなかなか標高の下がらない道をうんざりしながら1時間半くらい歩いて、矢倉観音堂まで来た。
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このあと下りが急になって、小康状態だった腰にこたえる下りだった。
三浦峠から2時間半かかってようやく車道に下り立った。
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ここから十津川温泉手前まで、延々と車道歩きになる。
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腰がつらくなってきたので公衆トイレの前の川合神社でザックを下ろして休憩した。
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朝から私と同じ方向の人は一人も出会わないけれど、反対方向から来る人には二人ほどすれ違った。
また腰がつらくなってきたので、バス停の待合ベンチに腰をかけて少し休んだ。
あの遙か彼方に見えるのが果無峠(はてなしとうげ)だろうか。
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車道に出てから延々2時間、8km ほど歩いて、ようやく温浴施設の昴の里に到着した。
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トンネルを抜けて、吊り橋を渡る。5人以上同時に渡るなという警告が書かれているが、結構揺れて恐ろしかった。一人なので自分が歩くリズムで渡れたけれど、複数で渡ると揺れるリズムが複雑になって一段と恐そうだ。
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いよいよ今回のコースで最後、そして最大の標高差約 900m の果無峠への登りにさしかかった。
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展望場所にベンチがあったので、そこでザックを下ろして休憩にした。今日二度目のロキソニンを投入。
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石畳の道を上がると果無集落。こんな所に突然、と思うけれど、実は車道があって少ないながらもバス便がある。「にほんの里 100 選」というものに選ばれているらしい。
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シャクナゲ(たぶん)。
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登りにさしかかってから1時間半くらい歩いて、ようやく観音堂に到着した。
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果無峠だけ歩くという人がわりといるようで、このあたりではたくさんの人に出会った。ここにも数人が休憩していたが、水場があるので素通りというわけにはいかない。
ザックを下ろして一休みして、最後の登りに向かう。今回の登りはこれが最後だ。おそらく 30 分あれば登れるだろう。
20 分ちょいの登りで果無峠(1114m)に到着した。少し小雨。
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12 時にここまで来られればと思っていたけれど、まだ 11 時半ちょっと前。これなら3時過ぎのバスに乗れそうだ。
二十丁石、そして三十丁石と下って行く。
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いよいよ今回の行程もトレイルは最終章にさしかかってきた。久しぶりに、終わってしまうのがちょっと寂しいという気持ちになった。
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午後1時過ぎに八木尾のバス停に下り立った。
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ここからはまた車道。
少し時間がありそうなので「道の駅ほんぐう」でまたいそべ餅を楽しんだ。
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あとは淡々と車道を行くだけと思っていたら、実はまだトレイルが残っていた。
三軒茶屋跡のそばの門。
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このあたりは観光客の世界。
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いよいよ熊野本宮大社へ。
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中のエリアは撮影禁止とのことで、参道の石段を下りて午後2時 45 分に山門にゴールした。
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本当ならここでとびきりおいしいビールをぐっといきたかったのだが、バスが3時 10 分に迫っているので、早々にバス停に並んだ。まだ屋根のかかっている部分に入れたのだけれど、このあと一気に列が延びて、それと同時に雨が本降りになってきた。
バスに2時間揺られて紀伊田辺駅に出て、特急を奮発して8時半過ぎには家に帰ってくることができた。
2日目は行動9時間半、約 32km だった。