レースの時は、ダイトレ最高峰の金剛山まで来ると、大きなヤマを越えたと感じる。もうこれ以降は長い登りは無く、距離的にはまだまだあるが、これまでに較べるとアップダウンもぐっと減る。しかし今回はまだまだ先が長い。
伏見峠からしばらくはちょっとした登りや緩いアップダウンの繰り返しで、距離の割には標高が下がらない。逆に言えば、レースならほとんどが走れる地形の部分だ。しかし今日の足の状態では快調に走るという訳にはいかない。緩い下りで走ると左足の痛みが出るので、早歩き程度で何とかごまかしている。
ずいぶん進んだ感じがしたので、行者杉は気付かないうちに通り過ぎてしまったかと思ったが、実はまだ先だった。
レースではこの先で本来のダイトレコースから別れて天見へ下って行くのだが、そのあたりで一度休憩しようと思う。レースの時にチェックポイントのある場所だ。
『天見』と書いた小さな標識があったが、いつもの別れはもっと先だと思って、こんな道もあるのかと思いながら進んだところ、記憶に無い階段の下りになった。しばらく下ると『山の神』と書いた標識がある。これは道を間違ったと思って階段を上り直して戻ったが、どうにも分かれ道のようなものは見あたらない。GPS は電池が切れかけで、まったく当てにならない。
登山地図で確認したところ、さっき見た『天見』の標識がいつもの別れで、すでに紀見峠への道に入っていることがわかった。しばらく下りると林道、そして車道に出た。もう間もなく紀見峠だ。車道脇にトイレとベンチがあったので、ここで腰を下ろして、シューズのヒモを緩めて、長めの休憩にする。GPS は完全に電池が切れた。9:15 くらいだっと思う。
おにぎりを食べて、ライトジャケットを上下とも脱ぎ、帽子も脱ぐ。15 分くらい休んで、紀見峠へ向けて再スタートだ。もし足の痛みがおさまらなかったら南海の紀見峠駅へ行けばいいだろうと思って走り出したが、先ほどしばらくシューズを脱いだのが良かったのか、足の具合は良さそうだ。
紀見峠という標識を越えて下りになると、後ろからランナーが追いついてきた。槇尾山まで行くと言ったところ、『それならダイトレのコースを行った方がいい』と言われた。本来の分かれをすでに通り過ぎていたようだ。GPS が使えなくなったらさっそくのロストだ。
ロスタイムは 10 分くらいだったが、もしあの時にあのランナーに出会わなかったら、あのままどんどん下って行ってしまったかも知れない。いくら何でももう少し行けばおかしいと思ったかも知れないが、あのまま下ると駅に行ってしまうので、駅への誘惑に負けてリタイアしていたかも知れない。
今回、無事完走できたのは、ここであのランナーに出会えたおかげかも知れない。が、その時はこのまま駅まで下ってしまえば止めることができたのに、という気持ちも心の底には若干あった。
本来のコースは紀見峠の手前(今回は戻ったので峠を少し越えてから)に分かれがあった。すぐに山道になって、いきなり結構な登りだ。その後、登ったり下ったりして、岩湧山三合目への長い登りが始まる。
事前に地図でルートを見ていた時は、紀見峠以降は距離はあっても消化試合程度の気持ちで、しっかりと確認していなかったのだが、実は岩湧山は 900m 近くある大きな山だった。結構な登りが延々と続く。まるで岩橋峠から葛城山へ向かうような感じだ。
途中のベンチで梅干しとアミノ酸の錠剤を補給する。根古峰を越えてしばらく行くと、左に車道が見えて、しばしで車道に出た。しかしすぐにまた山路に入る。GPS が使えなくて不安なので、地図を手に持ったまま進む。いつの間にか足の痛みはあまり感じなくなっている。
少し下ったら駐車場が見えて、その先にススキの穂の生い茂った、岩湧山の山頂と思える山が見えた。
本当の頂上はまだこの少し先だった。岩湧山へ登るイベントが開催されているようで、頂上にはゴールゲートが設置されていて、ナンバーカードを着けた人がたくさんいた。頂上に着いたのは 11:23 だった。
ベンチに腰を下ろしてジェルを補給して、早々に先を急ぐ。イベントの参加者が下山するので、下山者がたくさんいる。ただ、単なるハイキングのようなイベントではないので、下山者もそこそこのスピードで下って行く。
前に3人ほどいて、私にとっては若干余裕があるくらいのペースで下って行くので、あえて抜くことはせずにしばらく後を付いて行った。
そのうちに前の二人が後ろに回って、男性の後ろを追いかけるような形になったところ、その男性が声をかけてきた。自分はこのイベントとは関係が無く、一人で屯鶴峯からやってきて、槇尾山まで行くつもりということを話すと、『それなら前へどうぞ!!』と譲られてしまった。
もう少し速く行きたい気持ちはあったが、足の状態が状態なので、これくらいがちょうどいいのではないかと感じていたので、道を譲られたのはありがたいやら困るやら・・・。しかし譲られてしまうと、スピードアップしないわけにはいかない。ちょうど地形的にもわりと走れるくらいの路だ。
致し方なく走り出したところ、予想外に走れる!!。しばらく早歩き程度で来たので走る筋肉が休めたのか、足の痛みもほとんど無く、気分良いトレランモードになってしまった。
そのまま一気に下って、イベントのスタート地点になっている滝畑を通過して、本日最終ステージの槇尾山への路へ入った。もうこれでよほどのアクシデントでもない限りは完走間違い無しだ。
ここからもかなり急なアップダウンが続いたが、最後の急登を何とか登り切って、ようやく施福寺へ到着。観光客だらけだ。
参道の長い階段を下って、コミュニティバスの乗り場に到着したのは 13:37 だった。12 時間もあれば踏破できるだろうと思っていたが、実際には 13:50 ほどかかった。しかしこれで心置きなくダイトレを卒業できると思うと、本当にうれしかった。