トレイルの長距離レースでは『ぺーサー』をつけられる大会がある。『ぺーサー』というのは自分専属のペースメーカーで、レース終盤の決められた区間ではこのぺーサーと併走することができる。
海外の大きな大会ではめずらしくないようだが(有名なレースでは Western States)、国内では信越五岳くらいだろうか。
トップ選手はほとんどがぺーサーをつけるようで、鏑木選手が昨年優勝されたアメリカの大会も、勝てたのはぺーサーのおかげというようなことをおっしゃっていた。
が、個人的には、本来個人競技であるべきレースで、こういう明らかな他人のサポートが得られるシステムがあるというのはまったくもって信じがたい。
どうしてこのようなシステムが出てきたのかはわからない。
今年の Western States を不本意な結果で終わられた原良和選手も、何とか完走できたのはぺーサーがいたおかげというようなコメントをされていた。
私はマラソンの男女混合のレースで、女子選手に男子のペースメーカーがついて好記録を狙うということに関しては極めて否定的な考えを持っている。もっと言えば、ペースメーカーという存在そのものがおかしいと思う。
しかしこれはかなり以前から行われていたことで、昔は『ラビット』と呼ばれていて、選手はわかっているが、テレビ解説では触れられない話題だった。
いつの間にか公然の事実となって、今やペースメーカーはそれを表示する別ナンバーカードを着けているくらいだ。
世界選手権やオリンピックでは採用されないので、こういうことが本当は正しいことではないということはみんなわかっているはずなのに、なぜか当たり前のことになってしまっている。
こういうシステムに頼って好結果を得たとしても、本当に満足できるのだろうか。
今やエベレスト登山もシェルパが張ったロープを辿って、自分はただ歩くだけに成り下がってしまっていることなども同じ流れの現象なのだろう。
私は例えレベルが違っても、気持ちとしては山野井泰史のようにありたいと思っている。