恵山

恵山(えさん)のことを知ったのは北海道に出かけるほんの1ヶ月ほど前のこと。たまたま見ていたNHKの「にっぽん百低山」という番組で知って、これはぜひ訪れてみたいと思った。

10/28(土)の朝、一晩過ごした道の駅から1時間半ほど走って、恵山の火口原駐車場に到着した。目の前にはさっそく期待通りの光景が広がっていた。

土曜日なので人が多いだろうと思っていたが、それほどでもなかった。

準備を整えて8時50分に出発した。

今日はショートコースで時間があるので、恵山展望台に寄り道していく。

こういう殺伐とした風景は好みだ。

分岐から15分ほどで恵山展望台に到着した。恵山を見るための展望台かと思っていたら、海を望む展望台だった。

海もさることながら、紅葉が素晴らしかった。

噴煙を眺めながら元の道に戻る。

こんな殺伐とした、遮るもののないところにシカが一頭。

最後はちょっとショートカットして登山道に戻った。

そして恵山への登山道に入る。

所々に細かい数字の距離表示の標識が立っている。実際より長めなんじゃないかと思ったが、後からGPSで確認したらそこそこ正確だった。

写真ではよく見えないが、地面から煙が出ている。地面を触ってみると少し暖かかった。

分岐から40分ほどで恵山の山頂(617.6m)に到着した。

山頂の少し先に神社がある。

戸を開けてみると、恵山大権現。

山頂の少し下からの眺め。

元の道に戻って周回路に向かう。所々にガンコウラン(たぶん)。

恵山岬灯台が見える。フェリーではこの少し沖を通過しているのだが、往路も復路も暗い時間帯なのでフェリーからは見ていない。

岬展望台にちょっと寄り道。

あとは平らな道を戻るだけなのだが、まだ昼前で時間があるので、恵山の向かい側にあるちょっとしたピークの山腹に見える顕著なトレース(この写真ではよく見えない)に行ってみようと思う。あのピークの上に出るのだろうか。

ピークに出るのかと思ったらピークには上がらずにさらに奥に向かっていた。しかし踏み跡は急に薄くなってきた。

少し進むと人工的な建物の跡があった。

下山後、駐車場の案内板に米軍のレーダー跡と書かれていた。

道はさらに不明瞭になって、うっすらと現れたり消えたり。目の前に見えるピークまで行ってしまおうと思った。

麓の分岐から20分ほどでピークとおぼしき場所まで来たが、ただのヤブで何も無し。後から見たら地形図で 461m の標記のあるピークだった。

向かいの恵山には雲がかかっていた。

下まで降りると人がいると思うのでレーダー跡でおにぎり休憩にしたが、急にガスがかかってきたので急いで下りる。

あとは平坦な道を駐車場に戻る。

登ってきた 461m ピークはガスがかかっていた。

12時半過ぎに駐車場に戻ってきた。

今晩は函館駅に歩いて行けるところにある船だまりという場所に車を停める予定だが、時間潰しに五稜郭に行ってみることにした。

後ろには五稜郭タワー。何でこんなものを作ったのかよくわからない。五稜星形を上から眺めるため?

箱館奉行所庁舎跡。

それから銭湯の桜成浴場センターへ。ここも地元の方々御用達という感じの街の銭湯。480円なり。せっけん、シャンプーはありません。

マックスバリュで朝食の買い出しをしてから船だまりへ行った。

船だまりは釣り客や漁業関係者が車を停めておくための場所で、一応トイレがあるが大小それぞれ一つのみ。水道はあるが歯を磨いたり顔を洗ったりはちょっとムリ。

正面に函館山が望める。

JR函館駅までは歩いて15分くらい。駅前の表通りと思われる道なのだが、土曜日の夜というのに意外と店が開いていない。

少しウロウロして、ジンギスカンの店に入った。

これまでに北海道でジンギスカンは何度か食べたが、いずれも焼かれたものが盛られて出てきた。それはそれでおいしかったけれど、今日は初めて目の前で自分で焼いて食べるスタイルで、おそらく肉もわりと質が良かったのだと思うが、おいしかった。

満足して夜景を眺めながら船だまりに戻る。

礼文華峠

10/27(土)は今回の旅の最重要イベントなのだが、前日の夜半から雨。一時はかなりの豪雨だった。

早朝もまだ雨で、天気予報ではずっと雨模様とのことだったのでこれは予定変更するしかないと思った。しかしどうしたらいいのかうまい代替案が思い浮かばない。

そうこうするうちに雨が小降りになってきたので、取りあえず善光寺に向かう。

ここはイザベラ・バードが訪れたお寺で、

「このお寺は非常に壮麗で、天蓋はすばらしく、祭壇の青銅や真鍮の仏具は特に立派である。・・・・」

と記している。しかし私が訪れたのは朝の7時半。誰もおらず、本堂もまだ閉じられていた。

寺社仏閣の価値はあまりわからない人間なので、イザベラ・バードが訪れたお寺に来たということで満足して、礼文華(れぶんげ)峠への旧道の入り口に向かうことにした。

森林公園の駐車場まで行ってしまったが、GPSで確認すると入り口はもう少し手前の模様。少し戻ったら朽ちた林道が分かれている近くにちょっとしたスペースがあった。

雨は完全に上がって、空の雲もそれほど厚くない。雨雲レーダーを見るとこのあとしばらくは本降りの雨は無さそうな予報だ。

これなら今日、行ってしまおう。

今日のゴールは函館本線の小幌駅。電車で一駅の礼文駅に戻って、そこから車まで歩いて戻る。しかしこの方向は何と一日2便しかない。乗る予定は15時50分の便。

とにかく何も無い駅なのであまり早く着いても困るが、道の状況がどうなのかわからないのである程度の余裕は見ておかなければならない。

トラブルが無ければ4時間あれば着けそうだが、余裕を見て5時間。11時に出発すれば十分と思ったが、車の中でぼんやりしているのも苦痛で、雨の止んでいるうちに歩いておいた方がいいかもと思って10時過ぎに出発した。


✳︎青線は戻った時の経路

すぐのところから朽ちた林道に入る。

少し行ったら林道が左カーブしていて、あれっと思って目を凝らしてみたら微かな踏み跡が右の方に見えた。

ほとんど人は歩いていない感じだが、最低限度の保守はされているように感じる。しかし意外と急な九十九折れが続く。

イザベラ・バードが通ったころは、

「道は深い森林の中をものすごく急な坂道となって登り、急に下ったかと思うとまた登り坂となり、ときには真っ直ぐに梯子を登るような急峻な坂道で、深く溝がついており、溝の底には大小の石の破片が詰まっていた。」

そうである。

この道は生活道路であるにもかかわらず非常な難路だったので、明治時代にも何度か改修されているので、今残っている旧道はその当時とはかなり異なっているだろう。

今朝までの雨のせいもあるだろうが足元がぐちゃぐちゃの場所が多く、ゴアテックス のシューズで来て良かった。そんな道を30分ほど歩くと朽ちた林道に出た。

最初、反対方向に進んでしまったが、引き返してしばらく林道を進む。旧道が無くなっているのか、旧道を広げて車道にした痕跡なのか、よくわからない。

そんな道が40分ほど続いて、また荒れた旧道っぽい道になった。何の標識も無いがおそらくここが礼文華峠だと思う。

また旧道っぽい道になって、足元のぐちゃぐちゃを気にしながら20分ほど歩くと左側(海側)が開けてきた。

「ああ、しかしなんとすばらしかったことか! まことに壮大な景色であった。これこそ本当に天国である。ここにはあらゆるものがある。・・・」

あの切れ込みが小幌駅のあたりだろうか。

12時過ぎに車道との合流地点に出た。このあとしばらく車道を歩くことになるので、ここでおにぎり休憩にした。

R37に出るところにこのルートで最初で最後の道標があった。

これで目的の礼文華峠越えは完了だが、このあと海に向かって下って、小幌駅に向かう。

しばらく国道を歩く。道幅はそれなりにあるのだが歩道部分は白線が引かれているだけで、トラックなどが頻繁に走り過ぎるので、かなり怖い。

大きな橋を二つ越えて、トンネルの手前でようやく国道から離れることができた。

立入禁止の看板を無視して入ってしばらく行くと、岩屋観音への古い道標が出てきた。

さらにまた道標に導かれて海に向かう。

歩きにくい沢筋の踏み跡を15分ほど下ると海が見えてきた。

海に出る手前に橋があって、対岸にロープが伸びていたのでそちらに向かった。

結構な登り返しなのだが、ふと足元を見ると海辺に二人の若い男性の姿が目に入った。

なぜこんなところにいるのだろう、どうやってここに来たのだろうと不審に思いながら急登を登り返して、岩屋観音がどこにあるのか見渡しながら平坦になった道を進んだところ、海岸そばから20分足らずで小幌駅のすぐそばまで来てしまった。いつの間にか通り過ぎていたのだ。

まだ時間はたっぷりあるので引き返す。大きな岩の崩れたようなところでここだろうかと思ったりしてみたが、スマホが繋がったので調べてみたところ、実は先ほどの海岸のところだということがわかった。先ほどの二人の男性は岩屋観音へ行っていたのだ。

あの急登をまた下りて登り返すのはうれしくないが、ここまで来て、しかも時間もあるのにパスするわけにはいかない。

二人の男性が戻ってくるのとすれ違って、海岸に降り立った。

やれやれと一安心したが、まだ午後2時。予定の電車までは2時間近く時間がある。

一旦、駅へ行って、様子を見てみた。

この駅は鉄道マニアでも有名な秘境駅だそうで、この駅を訪れることだけが目的で来る人も少なくないとのこと。と言うか、近くには民家も道路も何もないので、それ以外の目的で来る人といえば私のように山道を歩いてたまたまここが終着点だったという人以外は鉄道マニアしかいない。

ここはトンネルとトンネルの間のわずか 100m 足らずのスペースに設けられた駅で、何のためにこんなところに駅を作ったのだろうと不思議に思うが、もともとは信号場(鉄道の運行のために必要な設備で、乗客が乗り降りする場所ではない)として設置されたものが、いつ頃からか駅として扱われるようになったとのこと。

乗る電車までまだ1時間以上あるので文太郎浜へ行ってみる。

午後3時50分、定刻に電車がやってきた。乗る客は私以外は若者二人、それ以外におそらく鉄道マニアであろう中年男性が二人の五人だった。

ほぼトンネルを数分走って礼文駅で下車した。

自動販売機でコーヒーを買って飲みながら、車を置いている取り付きに向かった。

車道を40分ほど歩いて取り付きに戻ってきた。午後4時40分。そろそろ薄暗くなってきた。

風呂は長万部へ。温泉ホテルという名称だが地元の人が利用するような大衆銭湯。もちろん温泉だが480円なり。せっけん、シャンプー有り。

どういう訳か長万部のあたりには道の駅が無い。海岸沿いを走り続けて森町の道の駅のさらに先の「つど〜る・プラザ・さわら」まで行って、ここを今宵の宿にした。写真は撮り忘れた。

有珠山、洞爺湖

有珠山は活火山で有名な山なので登れないだろうと思っていたのだが、調べてみるとわりと登っている記録がある。それならということで最初の目標として有珠山を目指すことにした。

ウトナイ湖の道の駅から有珠山の登山口までは2時間以上かかる。10/26(木)の朝6時頃に道の駅を出発した。

これまでに何度か走ったことのある道で白老や登別への分岐を超えて洞爺湖に向かう。

だいぶ近づいてきて、有珠山(右)と昭和新山(左)が見えてきた。

2時間少々かかって登山口に到着した。登山口には放置されたような建物があって、少しスペースがあった。


軽自動車が1台停まっていたので先行者がいるのかと思ったが、実は年配の女性が乗っていて、その後下りて行った。

準備を整えて8時25分に出発した。

少し登ったら林道に出て、林道を進むと火山回道の道標が現れた。


道標に従って進むが、だんだんGPSに入れてきたルートから離れてきた。有珠山は正規の登山ルートというのは無いので、ひょっとしたらさっきの林道をそのまま進むのかもと思って引き返した。

しばらく林道を進んでみたが、これもまたルートからはずれてきた。まさか有珠山に登れずに終わるのだろうか不安になったが、また戻って先の火山回道を登り返した。

先ほど引き返した場所から少し進んだらまた道標があって、それに従って進んだら次第にGPSのルートに近づいてきた。

しかしまたルートからはずれてきて、また戻って地形をよく見たら別の道標の後ろにかすかな踏み跡があるのに気がついた。



ようやく予定のルートに乗ってきた。濡れてずるずるの急な斜面があって、たまらずポールを出した。持ってきて良かった。

急斜面を登って上部の稜線に出て、そのまま少し下ったら林道に合流した。

こんなところで林道に出会うとは思わなかったが、わりと新しい車のわだちがあった。

しばらく進むと有珠山の頂上部分が望めた。以外と遠そうに見えた。

林道が終わった先がよくわからなかったが、何とか赤テープを見つけることができた。


しばらく薄い踏み跡を辿ったが、そのうちに消えてしまった。ヤブはさほど濃くないので適当に上に向かう。

上部はもっと火山ぽい景観を予想していたのだが、どうも山頂まで植生がある模様。

部分的にヤブがうるさい部分もあったが、何とか山頂近くまで来た。少しだけトレースがある。

岩塔がいくつかあってどれが山頂なのかわからない。最初に上がったところは山頂ではなく、その先の岩塔に向かった。山頂の標記は無かったが岩にボルトが打たれていたのでこれが山頂(733m)だろうと思った。

山頂から昭和新山を見下ろす。

そして洞爺湖。下山後は中島へ行くつもり。

火口の周回ルートに行く。ここは薄いトレースがあった。

しばらく進んだら左手に噴煙の上がっている大きな噴火口が見えた。有珠山の噴火口はこちらだったのだ。


そしてその噴火口の縁に沿って稜線にトレースが続いている。稜線ギリギリのところにトレースがあって心臓に悪い。右側は意外とヤブが濃くてちょっと歩けない。


しばらく進んだが、右手のヤブが少し薄くなっていて今ならまだ登ってきたところに下りられるので、ここで切り上げることにした。

帰りは四十三(よそみ)山(251.6m)に寄り道した。

展望台に上がってみたが木が茂っていて展望は今一つだった。

12時半に登山口に戻ってきた。

午後は洞爺湖で遊覧船に乗るつもり。

羊蹄山の山頂部分は雲がかかっていた。

遊覧船は平日にもかかわらず団体客がいて混雑していた。

つい先ほど有珠山の山頂から見下ろした洞爺湖から今度は逆に有珠山(左のピーク)を見上げる。

25分ほどで中島へ。

船は30分間隔で運行されているので30分だけ上陸する。

なぜか神社がある。祠が三つあった。

真ん中には菅原道真が祀られている。

それほど古いものではないように思われる。

個人的には北海道で神社やお寺というのはどうも違和感を感じる。

博物館があったが有料なので入らなかった。

中島から眺める有珠山と昭和新山(左)。

次の便で戻って、洞爺温泉へ。

夜は有珠の道の駅あぶたに車を停めた。

北海道へ

昨年のこの時期は青森で津軽半島と下北半島を廻ってから北海道に渡ったが、今年は北海道一本で行く。

イザベラ・バードの「日本奥地紀行」に書かれている礼文華(れぶんげ)峠の道をぜひ一度歩いてみたいとずっと思っていた。

LCCを使ってここだけを訪れるという数日程度の旅も考えたのだが、LCCは日によって運賃がかなり違うし、安い日に合わせるためにホテルに余計に泊まるというのも本末転倒で、結局いつも通りのフェリーで行って車中泊という行程にした。

10/24(火)の夜に敦賀のフェリーターミナルに向かった。

7月の時とはうって変わってガラ空き。おかげで時間潰しのイベントは開催されなかった。

夕方に龍飛崎沖を通過する。

いつも通りマックスバリュで買い出しをしてからウトナイ湖の道の駅に入った。