体重の変化はなかなかおもしろい。
基本的には食べたカロリーより消費カロリーが多ければ体重は減るし、消費カロリーの方が少なければ体重が増える。排泄が規則的であればそうなるはずだ。
しかしその増減の程度は、必ずしも運動量や食事量を正確には反映しないように思える。もちろん、ある程度の期間で見るとおおむね運動量と食事量の相関関係は保たれていると思うが、短期間の変動は必ずしも運動量と食事量の関係とは一致しないことがしばしばある。
それが一番顕著に現れるのは、2000mを越えるような山へ行った後だ。高い山から帰った翌日は、食事量がさほど普段と変わらなくても、必ず1kgくらいは体重が増える。
その後2日間くらいはその状態が続くが、その後は次第に体重が落ちて元のレベルに自然に戻る。その間の食事量や運動量は普段と変わらない。
1000m未満のトレイルではこのような変化は起こらないが、少し高い山へ行くとこういう現象が現れる。山スキーへ行った後も同じようなことがよくあった。
普通のロングジョグで長い距離を走った後に体重が落ちていることはあるが、その後にリバウンドのように大きく増えることはなく、おおむね食事量に比例した程度の変化にすぎない。
なぜこのようなことが起こるのか、これまでそういう文章に出会ったことが無いのだが、個人的には、肉体的に厳しい自然環境にさらされると、身体の防衛本能が働いて、カロリーを貯めようとするのではないかと考えている。
2000mも上がれば気圧は平地に較べると明らかに低くなるし、気温も低くなる。自覚症状は無くても心電図などを取れば肉体は変化を感じているはずで、それに対して何らかの反応が起こることは容易に想像できる。
しかしある程度長い期間、そういう場所に留まっていると、身体がそういう環境に適応してくる。つまり平地よりも厳しい環境に身体が適応すると、その後平地へ戻ると以前以上のパフォーマンスを発揮できるというのが高地トレーニングの考え方だが、高地トレーニングも賛否両論があるので、そう単純なものではないようにも思える。
運動量と食事量に対する体重変化の割合に関しては、基礎代謝量の変化が大きく影響しているように思える。基本的には加齢とともに基礎代謝量が減ってくるので、食事量と運動量が同じレベルをずっと続けていると、体重が徐々に増えてくることになる。いわゆる『中年太り』というのはこれが原因である。
幸いなことに私は高校生の頃からもう40年ほど、体重があまり大きくは変わっていない。20年ほど前のマラソン全盛期の頃に較べると練習量は減ったが、食事量もそれに伴って減ってきた。感覚的には記録の低下と食欲の減退が比例しているように思える。おかげで中年太りとも無縁である。ありがたいことだ。