もう世間ではほとぼりが醒めてきていると思うが、世界陸上の女子マラソンの日本選手の感想を少し。
予想していた結果と較べると、福士選手と野口選手の結果が逆だった。木崎選手は順位は予想以上だったが、走りの内容はおおむね予想通り。そのあたりが木崎選手らしいところか。
野口選手は序盤のハイペースにぴったりついて行って、やはり本人のコメント通り、調子が良いのだろうと思った。全盛期の躍動感が戻ってきているように感じたが、それは10キロ手前までだった。
徐々に集団から後れだした時、彼女のスタイルからするとこのまま遅れていくだろうと思った。
それにしてもこの結果は残酷だ。彼女の頭の中にはもはやアテネの金メダルのことはまったく残っていないだろう。この先、競技を続けるかどうか微妙なところだが、アテネ以降のことを考えると、この失意を取り戻せる舞台はオリンピックでまたメダルを取るくらいしかなく、はたして3年後を目指して再出発できるかどうか、非常に厳しいと考えざるを得ない。
有森裕子も高橋尚子も現役終盤は不本意なレースがいくつかあったが、これほどではなかった。結果的に見れば世界陸上の代表に選ばれたことが不運だったのかも知れない。
あれだけの実績を残した選手なので、失意のままで現役を終わってほしくないとは思うが、それにしてもこのダメージはあまりにも大きいと思える。
野口選手とは対照的に、棚ぼた的にメダルを獲得したのが福士選手だ。おそらく戦略も何もなく、ただ無心に走っていたら3位になってしまったというのが実際のところではないだろうか。
この結果に対して日本の陸上界ではようやく女子マラソン復活のきっかけができたとよろこんでいるようだが、レース後のインタビューを聞く限りでは彼女はマラソンはもういいと思っているようだ。
あの性格なのでまた気が向いたら走るかも知れないが、年単位のスケジュールで取り組むマラソンという競技に対してはあまり魅力を感じていないように思える。
しかし競技場に帰ってきてからの笑顔は非常に良かった。
初マラソンの大阪国際女子マラソンで、トラックで何度もころんで、顔面をトラックに打ち付けながらも笑顔で立ち上がってゴールした姿には感動したが、今回の笑顔はさらに素晴らしいものだった。
彼女は日本ではトラックの女王として何年も君臨してきたが、世界の舞台で表彰台に立ったのはこれが初めてだ。そのうれしさがはちきれているようだった。
陸上選手というのは非常に生真面目なタイプが多いように思えるが、彼女のような天然で明るいタイプの選手はめずらしいので、できればまだまだ長く走りを見せてもらいたいと思う。
ただ、そうなると舞台はマラソンしかない。トラックではもう国内でも勝つのは難しいだろう。後は駅伝くらいか・・・。