音楽を聴きながらランニングをする人は多い。
公園や河川敷のような場所だけではなく、街中を走っている人がイヤホンを着けているのを見ると危ないなと思うが、そういう人はわりとよく見かける。レースでもフルマラソンなどの長い距離になるとイヤホンを着けている人をしばしば見かける。
音楽は曲を適切に選ぶと気持ちを落ち着かせる効果や、逆にテンションを上げる効果もあったりして、スポーツのパフォーマンスにプラスになる場合は確かにあるようだ。試合前の選手がアップの時にイヤホンを着けている光景は、ランニングに限らずスポーツ全般において良く見かける。
中でも有名なのは、高橋尚子選手がシドニー・オリンピックの本番前に、イヤホンを着けて踊って、歌っている光景。日本人のトップアスリートにこんな選手がいるのかと、多くの人たちが驚いた
私は子供の頃から音楽が好きだが、ランニング中にイヤホンを着けたことはほとんど無かった。20年以上前に、ランナーのための音楽というようなタイトルのカセットテープが売り出されて、それをウォークマン(その頃はiPodのようなものはまだ無かった)に入れて聞きながら走った事が何度かあったが(もちろんレースではなくて練習)、ランに集中できないような気がしてほんの数回だけでやらなくなった。
それ以降はiPodシャッフルのような小型プレーヤーが登場しても走りながら音楽を聴きたいとは思わなかったが、昨年、とある文章に出会って、速攻で耳掛け型のMP3ウォークマンを購入した。
その文章の内容を簡単に言うと、『マラソンのような時間のかかる持久型スポーツの場合はエネルギー消費の効率が重要だが、実は人間は脳で非常に多くのカロリーを消費している。余計なことを考えないようにした方が脳での無駄なカロリー消費を抑えられるが、それには音楽を聴きながら走るのが良い』というものであった。
なかでも勉強や仕事、スポーツなどに集中している時に現れる『シータ波』の波長が効果的とのことで、さっそくネットでそういうタイプの音楽を何曲かダウンロードして試してみた。
私自身の感覚では、どちらが先かはわからないが、タイムが落ちてきてからランニング中につまらない事をくよくよ考えることが多くなったように思う。そこでこのような無駄な邪念を減らしたいと考えて試してみたのだが、結果的にはあまり効果が感じられなかった。
何故かと言うと、BGMのようなサウンドはいつの間にか音楽を聴かずに、いつものように頭の中を邪念が駆け巡っている状態になってしまうのだ。音楽そのものが自分の興味のタイプではないので(嫌いというわけではないが)、外の雑音と何ら変わらない音でしかなくなってしまっている。
そこで、シータ波にはこだわらずに好きなタイプの音楽を入れて聴くことにしてみた。確かにこちらの方が音楽を聴いている感じがするが、ランニングのために曲を選んでいるわけではないのでリズムは一定しないし、曲の調子も様々に変わる。普通のアルバムCDをそのまま入れているので当然のことだ。ただ、音楽に気持ちを向けるという意味ではこちらの方が私には良さそうだ。
レースで効果があるかどうか試してみようと思って、淀川市民マラソンでは初めてウォークマンを着けて走った。しかしレースになると、いくら好きな音楽ばかり入れたとは言ってもやはりペースの事が気になって、練習ジョグの時ほどは音楽に気持ちが向かない。でも、レース中にどうでも良いような邪念が頭を駆け巡るようなことはほとんど無かったように思う。ただ、終盤になって汗のせいかしばしばずれるようになって、これがかなり煩わしかった。
結果のタイムで言うと、昨シーズンの3レースに較べると10分ほど良いタイムで走れた。終盤はやはりペースダウンしたが、昨シーズンに較べるとはるかにマシだった。これなら今シーズンはそこそこ期待できるかなと感じさせる内容だった。
終盤のイヤホンのずれが気になったので、その後の福知山と加古川では着けなかったところ、その影響かどうかわからないが期待に反してタイムは落ちた。特に加古川はひどかった。それからは練習でもウォークマンを着けることはあまりなかった。イヤホンを着けて走ることに慣れていないので、出かける時にいつも忘れるのだ。
その後、練習の目的がロングトレイルになったために長い距離、長い時間を走る練習がメインになって、またイヤホンを着けて走る機会が多くなった。淀川河川敷のような単調なところを長く走る時は、音楽を聴いていると気がまぎれて楽に走れるように感じるが、トレイルの場合は注意力が散漫になりそうで、特に下りでは危ないような気がする。また、郊外の車の通る細い道では後ろから来る車に気が付きにくかったりするので、止めた方がいいように感じた。
加古川が終わってからはスピード練習のようなものをほとんどやっていないので、篠山ではあまりペースを意識せずに、体感にまかせて走ろうと思った。とは言ってもやはり、ある程度納得のできる結果はほしい。と言うことで、淀川市民マラソンの縁起を担いでイヤホンを着けて走ることにした。
今回はイヤホンのずれもほとんど無く、違和感を感じること無く最後まで走れたが、タイム的には加古川とほどんど同じで、予想最悪タイムを下回るくらいだった。
これまでの実績から言えば、ロードの単調なコースでのLSD的な練習の場合は気分転換の効果がありそうだが、フルマラソン程度のレースではさほど効果は期待できず(100kmなら効果があるかも知れないが、私は未経験)、トレイルではやめておいた方がいいというところだろうか。