ランニングと四季

朝起きてすぐに走りに出るようにしたのは昨年末で、日の出が最も遅くなる時期だった。7時過ぎに家を出ると、東の空にちょうど顔を出したばかりの太陽を輪郭もくっきりと眺めることができた。しかし今は太陽はもうかなり高くまで上がっていて、まぶしくて直接見ることはできない。空気の冷たさもずいぶん和らいできて、春の兆しをはっきりと感じることができる。
ランニングに向いた季節が近づいてきたと言えるだろう。ほとんどの人は春が好きだ。暖かくなることをみんな嬉しく思うようである。しかし私はそうではない。決して寒いのが好きというわけではないが、とにかく暑いのが苦手なのだ。春の兆しを感じると、気持ちは一足飛びに夏の蒸し暑さに向かってしまう。またあの季節がやってくるのかと思うと、憂鬱な気分になってしまうのだ。
桜の時期もうっとうしい。満開の桜を美しいと思わない訳ではないが、普段走るコースには桜の木が随所にあって、至る所人だかりで昼間から宴会である。私は人混みも嫌いなのだ。目的も無く繁華街へ出かけるようなことは絶対に無い。
そうは言っても桜の時期は1週間から2週間程度なのであっと言う間に過ぎ去るが、昨今の長い残暑には本当に苦しめられる。
そういう意味では今頃の季節が一番好きではある。厳寒の時期は過ぎたが、春の暖かさにはまだ少し間があるという時期で、走っても軽く汗をかく程度でちょうど心地よい。
5月に入ると、走ると汗がしたたるほどの暑い日が現れるようになる。しかし里山のトレイルには絶好の季節だ。冬場は寒かった山もこの季節になると空気が穏やかで、樹々の間のそよ風が爽やかで気持ち良い。唯一の難点はイネ科の花粉症の症状が出ること。スギやヒノキは何ともないのだが・・・。
梅雨は嫌いではない。この頃の気温だと雨の中を走るのも悪くないし、土砂降りの中を走っていると、妙に気持ち良さを感じることさえある。
梅雨が明けるといよいよ本格的な夏となる。私の一番嫌いな季節の到来だ。特に蒸し暑いのが苦手で、トレイルに行ってもすぐにバテてしまう。最近はアルプスの3000m近くまで行っても、8月前半くらいなら『下界よりはマシ』という程度でしかない。昨年の8月初旬、七倉から水晶岳を目指して裏銀座の稜線に上がった時も、予想外の暑さに体力を消耗させられて、結局真砂で断念することになってしまった。その前に比良に行った時も、目標の3分の1くらいで早々に敗退してしまった。
9月は下界ではまだまだ残暑が厳しいが、2000mを越える山々は快適になる。しかし天気が荒れると危険な季節だ。好天をつかまえればアルプスランには最高のシーズンである。この時期になると残雪に出会うこともまず無いし、登山者もぐっと減って、人気ルートでも快適に走れるようになる。
10月に入ると3000m近い稜線ではそろそろ雪の便りがやってくるので、それなりの準備をして行かないとメディアを賑わせることになりかねない。しかし里山はまた絶好の季節だ。六甲や京都の北山、比良などは快適である。
下界のランニングが快適になるのはやはり11月になってからだろう。長い距離を走っても疲労感が少なくなってくる。マラソンのレースも11月の声を聞くと一気に増えてくる。
山スキーによく行っていた頃は雪の便りにわくわくしたものだが、陸上クラブに入ってからはとんと行かなくなってしまった。行きたい気持ちが無くなった訳ではないのだが、末端冷え性の症状がつらい。パウダースノーで絶好のコンディションというのは気温が冷え込んだ時なので、滑りには良いが手足は冷えて痛いのだ。
よく行っていた頃は暖冬で雪不足のシーズンが続いていたのに、行かなくなったら雪の多いシーズンが続いているというのは何とも皮肉なものだ。
日本ではマラソンシーズンは冬だ。昔はいつも四国や九州など、関西より西の方のレースばかりだったので、冬と言ってもさほど寒い思いをしたことは無かったのだが、最近は遠出するのがもったいないので近場のレースばかりである。おかげで非常に寒い日に出会うこともしばしばで、昔はレースではランパン、ランシャツと決まっていたのに、最近はロングTシャツとロングタイツなんてこともめずらしくない。まぁ、ムリして寒い格好をすると、体温を維持するために余分なエネルギーを消費するようなので、適度に暖かくした方が理にかなっているとは思うが。
今週末はまた六甲へ行こうと思っている。先月は寒くて、雪がしっかり残っている所もあったが、今週末はそういうことはないだろう。雪は少しは残っているかも知れないが。2週間後はいよいよ六甲縦走キャノンボールなので、今度は何とか8時間くらいで余裕をもって走り終えたいところだ。

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