『火の鳥』

私は基本的に、フィクションには興味が無い。映画(ドキュメントは除く)やドラマはまったく見ないし、小説も読まない。現実こそがいちばんドラマチックだと思っている。
先日もふとしたきっかけで村上春樹の本を何冊か読んだが、いずれもエッセイのようなもので、結局小説を読むまでには至らなかった。
ところが今、マンガを読んでいる!! それもかなりワクワクしながら・・・。
手塚治虫の『火の鳥』である。
私はちょうど『鉄腕アトム』世代だ。小学生の頃がちょうどブームの最中だった。当然のことながら、アトムのマンガにはまった。
もう少し大きくなってからは『ブラックジャック』。『アドルフに告ぐ』も印象に残っている。もちろん、『巨人の星』や『あしたのジョー』、『タイガーマスク』などにも熱中したが、手塚治虫は他とはちょっと(と言うか、かなり)違う読後感が残る作品だった。
ただ、それほどの手塚ファンという訳では無かったので、超大作の『火の鳥』を紐解くことは無かった。あまりにもイメージが大きすぎて、とても読み切れないだろうと感じていたのだ。
ひょんなことで手塚作品を非常に高く評価している文章に出会って、それなら一度図書館で借りて読んでみようと思った。ちょうどうまい具合に『火の鳥』はほとんどがすぐに借りられる状態だった。
まだ『黎明編』を読み終えたばかりだが、あまりのスケールの大きさに圧倒されている。何と表現したら良いのか、言葉が見つからないくらいだ。
実は昨年の夏に有馬温泉へ行った帰りに、宝塚で手塚治虫記念館に立ち寄った。そこでは手塚治虫の偉大さを再認識させられたのだが、改めてその作品に触れてみると、子供の頃に感じたのとはまったく異なる世界観が感じられて、そのスケールの大きさにはただただ感服するばかりである。
とにかく感心しているだけでは時間のムダである。ぜひ続きを開いてみたいと思う。

半休養日

鯖街道の後、あまり休まずにスピード練習をやったせいか、身体が重く、アキレス腱やハムストリングなどに若干の違和感がある。大したことは無いのだが、日曜日にハーフのレースを控えているので、今日は朝のジョグだけで、夕方は30分ほどの散歩にした。
梅雨入りしてからどんよりして湿度の高い日が続いて、気分も落ち気味になってしまう。
こんな時は思い切って休んで、リフレッシュした方がいいだろう。

シューグー

シューグーは20年以上前に一度使った記憶があるのだが、なぜかそれ以降は使ったことが無かった。特に悪い印象があった訳では無かったと思うのだが。
まだ少し履けそうだが、アウトソールがかなり減ってしまっているシューズを捨てるのがもったいなくて、久しぶりにシューグーを使ってみた。鯖街道やマラニックで使ったアシックスのランニングシューズで、もう2年以上履いている。
もっぱらゆっくりジョグの時に使ってきたが、このところはトレイルシューズを履くほどではないトレイルで出番が多い。ミッドソールがわりとソフトで、トレイルシューズでは走りにくいロード部分でも違和感があまり無い。ただしあくまでもジョギングペースで、スピードに乗った走りにはソールが厚すぎる。
結果的にはなかなか快適である。これならまたしばらく履けそうだ。
ついでに、あっという間にソールが減ってしまった安物のサンダルも修理してみたが、これもなかなかうまくいった。
結構お勧めですよ!

枚方春季総体観戦

今日は競技場で開催された、春季総体を見に行ってきた。クラブの仲間が出場する 3000m と 5000m を観戦してきたが、暑くて走るのは大変だったと思う。
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ここ2年は私も 5000m に出場してきたが、ローカルな大会にしてはレベルが高くて、競技時間が20分しか割り当てられていない。多少は遅くても最後まで走らせてもらえるが、先頭に2周ほど抜かれて最後尾をよろよろ走るのはなさけないので、今年は止めておいた。たぶんもう走ることは無いだろう。
トラックのレースは自分で走るよりも見るに限る!

競技場レペティション

今日は競技場での練習会で、久しぶりに 3000m + 2000m + 1000m のレペティションをやった。個人的には一番キツいメニュー。とても一人ではできない練習だ。
最初の 1000m が 4’06” で、そんなものかなという感じ。後は 4’02″、3’59” で、徐々にペースアップできたのが良かった。ラストはギリギリの3分台だったが、体感よりは良かった感じ。
次は入りが 3’56” で、さすがにこれはペースが速すぎて、次は 4’04” にペースダウン。
ラストは舌がしびれながら 3’46” で、これは満足。
鯖街道からまだ1週間という時期としてはよく走れていると思う。水曜日のナイターでインターバルをやったせいで、速いスピードに少し身体が慣れてきたように感じる。
さて、来週の若狭あじさいのハーフはどうなることか?

三浦雄一郎さん、エベレスト登頂

三浦雄一郎さんが80歳でエベレストに登頂された。
素晴らしいことだと思うと同時に、無事の下山を祈らざるを得ない。山は登ることよりも下ることの方がはるかに難しいのだ。山岳事故の大半は登りよりも下りで起こっている。
日本人として初めて植村直己さんがエベレスト登頂に成功されたのは1970年。私が15歳の時だ。中学校のクラブ活動でワンダーフォーゲル部にいたので、こういう出来事には非常に関心があった。
しかしその時に私がもっと興味を抱いたのは、同じ時期に同じエベレストで、サウスコルの8000mからスキーで滑降した三浦雄一郎さんの方だった。
誰も歩いたことの無いウェスタンクウムの斜面を双眼鏡で確認しただけでスキー滑降。パラシュートを開いてブレーキにするも、転倒して何百メートルも滑落した。急斜面をゴムまりが落ちていくような映像は、今もかすかに記憶に残っている。
世界的に注目されたのは日本隊の登頂よりも、むしろ三浦さんのスキー滑降の方だった。転倒したことなどまったく問題にならず、三浦さんのアドベンチャースピリットは最大限の賛辞で評価されたと思う。
転倒して滑落しながら、三浦さんは『人生は夢だった』と思ったと著書に書かれている。この時、三浦さんは37歳だった。
そして80歳になられた今、まだ夢を追い続けられている。
私の部屋には『夢 いつまでも』と書かれた、三浦さんにいただいた色紙が飾ってある。私の大切な宝物だ。
私は私なりのレベルでまだ『夢』を追っている。しかしその『夢』は必死になって探したものではなく、自然に湧いて出てきたものだ。『夢』が自然に湧いて出てくる間は、前向きな気持ちで走り続けていられるだろうと思っている。
願わくば人生を終える時も『夢』を持ち続けていたいと思う。人生に満足して終わるよりも、やりたい事を残して終われる方が実は幸せなのではないかと感じている。

ナイター練習会

今日は久しぶりのナイター練習会だった。
競技場がナイター営業する時期に合わせて、ほぼ月2回のペースで水曜日の夜にナイター練習会が設定されている。なぜか昨年は行われなかったので、ほぼ2年ぶりだった。
ナイター練習会は時間の余裕があまりないので、だいたいメニューは1000mX5のインターバルになる。
日曜日に鯖街道を走ったばかりで水曜日にインターバルというのはあまりに無謀と思って、行くかやめるか迷ったが、とにかく行くだけ行ってみることにした。6月2日には久しぶりにロードのハーフマラソンにエントリーしているので、スピード練習的なものをやっておきたいという気持ちもあった。
ただ、体感的な疲れはもうほとんど感じなくなったとは言うものの、身体の芯には疲れがまだ残っているはずだ。あまりムリはしないようにしようと思った。何と言っても故障が一番恐い。
キロ4分弱が何人かいたので、普段ならちょうどいいグループになるのだが、今日はこのグループから大きく離されずに付いて行くくらいで行こうと思った。
1本目は予想外に3’59″でいけたが、それ以降は4’10″前後だった。体感的には余裕を持って走れたので、非常にいい刺激になったと思う。
こんな練習ができるのはやはりクラブに入っているからだ。ありがたいことだと思う。

鯖街道ウルトラマラソン

昨日は鯖街道ウルトラマラソンを走ってきた。初参加だった。

より大きな地図で 鯖街道 を表示
予定通り土曜日は、クラブのベテランの人のテントに泊まらせてもらった。夕食は魚料理店へ行ったが、何と魚料理以外のメニューは何も無いという恐ろしい店!。野菜が好きなぼくとしてはかなりつらい食事だったが、なかなかの人気店のようで、ずいぶん混んでいた。
夜はあまり眠れなかったが、こういうのはいつもの事なので気にしないようにした。六甲縦走キャノンボールを経験したおかげで、一晩くらいは寝なくても走れるということはわかっている。
天気予報では午後から雨模様ということで、シューズをどうしようかと最後まで悩んだが、結局ランニングシューズを選択した。今回はできるだけ身軽に走ることを優先しようと思って、荷物は雨を想定したライトジャケットを腰に結んだだけで、飲み物や食べ物は一切持たなかった。念のためにポケットティッシュをタイツにはさんでおいた。
下はハーフタイツ。上はノースリーブのドライシャツの上に長袖シャツといういつものスタイル。ゴアテックスの帽子を飛ばないように襟にバンドで止めた。
商店街の鯖街道起点を6時にスタートした。かなり前の方でスタートしたが、みんななかなかのペースで。どんどん抜かれていく。ぼくはベテランのお二人と相前後しながら行く。おおむねキロ5分半くらいのペース。これくらいがちょうどいいと思う。
しばらくしたら下見で走った道に合流した。ここからは徐々に登り気味になってくる。まだどんどん抜かれる感じ。しかし気にしない。
まずは最初の下根来のエイド。ポカリスウェットをもらう。エイドではできるだけ小まめに、お腹が空いていなくても固形物も少しは取るようにしようと思っているが、まだ朝食のおにぎりが胃に溜まっている感じ。
車道の傾斜がきつくなってくる。ベテランの一人の方が少し前の方に行かれるが、あえて追わないようにする。
少し行くと今度は上根来のエイド。こんどはバナナを一切れ補給。
そしてようやく山道への分岐に到着した。いつもこの先の山道が渋滞するらしい。ネットで写真を見ても、そういうシーンが多い。しかし今日はそんなことはまったく無い。ランナーはまばらで、自分のペースで行ける。ここでベテランの人の前に出る。
杉の枯れ葉でフカフカの山道をしばらく上がると一旦林道へ出る。ほどなくエイド。今度はオレンジをいただく。そしてまた山道へ。
眺めの良い峠を越えて一気に下り、ふたたび林道へ出る。しかしすぐにまた山道へ。しばらく下ってまた林道へ出て、これからずっと車道と思っていたら、また山道へ入る。今年はちょっとコースが変更されたそうだ。車道よりはこちらの方がいい。
平坦になって最後で小川を丸木橋で渡って、車道に出る。ここでエイド。
ここからは20kmほど延々と車道を走る。所々にちょっとしたアップダウンはあるが、おおむねやや下り気味。キロ5分台の前半で行けている。
ちょうど中間地点の標識があったが、3時間45分だった。このペースでいけば7時間台ということになるが、後半は峠が二カ所ある。7時間台はムリとしても、9時間以内にはゴールできる可能性が高そうだ。
エイドのたびにしっかりと補給する。半鯖と合流する三叉路を10時前に通過して、ここから峠へ登って、久多のエイドに到着。ここはおにぎりがある。梅をもらったが、そのままではのどを通らなさそうなので、お茶をもらって口の中でお茶漬けにして流し込んだ。
あと35kmとのこと。10時を過ぎており、この後のコース状況を考えるとうまくいって8時間半くらいだろうか。
しばらく石のゴロゴロする荒れた道を走ったり歩いたりして、八丁平への山道に入る。つづら折れを登っていたら、早くの半鯖のトップがやってきた。大変なスピードだ。
所々走りを交えた歩きで何とか峠まで登り切って、八丁平に入る。あたりを眺める余裕も無くひたすら前へ。
今回はさすがにコースミスもなく、つづら折れの下り山道へ入る。足先をひっかけて一度転倒したが、大事には至らず。
エイドではパンをポカリスウェットで流し込む。
大見のエイドを過ぎると杉峠までの最後の登り。この道はずっと昔は車道だった道なので、登山道のような急な登りは無い。しかしここまで来ると緩い登りもなかなか走り続けられない。道が荒れていて、足元の石か何かに躓いて、しばしばこけそうになる。
見覚えのあるキャンピングカーの廃車のあたりから雨がぽつぽつと落ちてきて、峠に近づくあたりで本降りになってきた。腰に巻き付けてきたライトジャケットがようやく出番を迎えた。
杉峠のエイドに到着した時は雨の風も強く、かなりの荒天になってきた。しかしジャケットと帽子のおかげでぼく自身はまったく問題無い。豆腐そうめんをいただいて、この後は車道のみ。しかししばらくは急な下りが続く。ここをいかに脚へのダメージを少なく走るかというのが重要なポイントだ。
このところ抜かれるのは半鯖の人たちだけだったが、全鯖の何人かに抜かれた。傾斜がゆるくなってきて、13時20分頃に鞍馬のエイドに到着した。雨は小降りになってきている。
あと13kmくらいだろうか。8時間半はちょっとムリという感じ。しかしここまで60km以上走ってきたわりにはまだしっかりと走れている。キロ5分前半くらいを維持している。急な下りで勢いよく抜いて行った全鯖の人が走ったり歩いたりしている。
信号を渡って右にまがったらまたエイドがあった。通りすぎそうになったが、呼び止められた。市原のエイドだ。ここでもらったきゅうりの梅ペースト添えはおいしかった。
このあと少し緩い登りがあるが、この登りでまたリズムが良くなった。賀茂川のそばまできて、ゴールが近づいてきたことを実感する。
全鯖の二人組を追い越す。『ナイスランですね!!』なんておだてられてさらにペースが上がってしまう。
河川敷に下りていよいよ残り5km。8時間30分台で行けそう。ここまで来てまだキロ5分少々で走れていることに自分でびっくりする。このところはロードのフルでも最後はキロ6分台まで落ちるというのに。
最後の賀茂川のエイドでもしっかりと補給してラストスパートモードに入った。
しかしこのあたりからちょっと体調がおかしくなってきた。あとわずかということで緊張感が薄れてきたのだろうか。ちょうど昨年の福知山のラスト5kmあたりと同じような感覚で、頭が少しぼうっとして、油断するとふらふらと倒れてしまいそうな感じ。しかし福知山も何とか最後まで持ちこたえたので、今回も大丈夫と自分に言い聞かせる。
ラスト2kmあたりではペースを維持することもできなくなってきて、関係者の声援に応えることすら億劫になってきた。ついさっきまで快適なゴールをイメージしていたのに、そんなことはもうどうでも良い、ただただ早くゴールしたいというだけの気持ちになってきた。
ラスト1kmを過ぎたところで先ほど抜いた二人に抜き返された。気を遣ってくれたのか、無言で走り去って行った。その方がありがたい。
出町柳への橋の下で最後の声援をもらったが、反応する気力すらない。
すぐ後ろに一気に迫ってきている足音が聞こえたが、後ろは振り返らずに何とか前でゴールテープを切った。
8時間38分38秒。45位だった。
ゴール後はすぐそばの濡れた芝生に倒れ込んだ。親切なスタッフが荷物を持ってきてくれた。
次第に雨が強くなってきたので橋の下のブルーシートの所に移動して、缶ビールとサービスの豚汁で祝杯を挙げた。親切なスタッフが、ぼくの両手がふさがっているのを見て、完走証を荷物の所まで持ってきてくれた。ありがたいことだ。
ベテランのお二人はぼくから1時間ほど遅れてゴールされた。
エイドは充実していたし、スタッフも親切で、とてもあたたかい良い大会だと思う。しかしこのコースはぼくの好みとしてはどうも今ひとつというのが正直なところ。ロード区間が長すぎる。
自分が想定していたよりは良い結果で、ラストで苦しんだのもそれも楽しみのうちというところだが、一度経験しておけばそれでいいかなというのが本音だ。
スタッフの皆様、どうもありがとうございました。

鯖街道へ

明日はいよいよ鯖街道ウルトラマラソン。私は初参加だが、クラブのベテランで何度も参加されている人たちに合流させてもらう。
明朝6時のスタートなので前泊が必要になるが、小浜の会場近くの公園でテント泊。通称『パークホテル』とのこと。テントで寝るのは慣れているのでまったく問題無し!。と言うか、ホテルや旅館よりもこっちの方がいい。
調子は悪くない。左のアキレス腱にちょっと疲労性の痛みを感じることがあるが、このところよくある程度の軽いもので、走り出して温まればすぐに消える。
どうするか悩んだが、明日は完全に空身で行こうと思う。雨が降る可能性が高いので、ライトジャケットを腰に結びつけて行こう。
このところのトレイルレースではいつも荷物をすべてかついで走っていたので(荷物運搬料節約のため)、たまには身軽で走ってみたい。エイドも充実しているので大丈夫だろう。大きな荷物は主催者が運んでくれるし。

『Sydney !』

村上春樹シリーズ第二弾は『Sydney !』。タイトルからもわかる通り、2000年のシドニー・オリンピックの観戦記だ。
なぜかプロローグが有森裕子のアトランタでの走りから始まっている。有森はシドニー・オリンピックには出場していない。代表選考会の大阪国際女子マラソンに出場はしたが、序盤で早々とレースから脱落していた。すでに33歳で、彼女の活躍はほとんど誰も期待していなかっただろう(おそらく本音では本人も)。
これに続いて犬伏孝行の合宿風景が語られる。犬伏はマラソンの代表としてシドニーを走ったが、38kmあたりでリタイアしてゴールすらできなかった。私を含めて多くのマラソンファンが期待感を持っていたので、勝負になる前に脱落してしまったのにはかなりがっかりさせられた。
村上春樹氏自身はマラソン以外はオリンピックに対してさほど興味が無いようである。はっきりと公言もされている。しかし出版社からの依頼ということで、せっかくの機会なので行ってみようということになったらしい。
『走ることについて語るときに僕の語ること』を読んだ直後だったので、この時ほどの新鮮さは感じなかったが、相変わらずの読ませる文章に引き込まれて行った(実際に書かれた年代では『Sydney !』の方が数年早いが)。
氏の基本姿勢としては『オリンピックがいかに退屈でつまらないか(マラソンを除いて)』というスタンスで文章が綴られている。特に開会式や閉会式はその最たるもので、開会式では氏はその退屈さに耐えかねて、入場行進の序盤で退場している。氏の感性から推測すると『そりゃそうだろうな』と納得してしまう。私だっておそらく同じように感じるだろう。
サッカーや野球、テニスなどはオリンピックには不要という意見も、まったく同意する(すでに野球は廃止が決まっているが)。
そしてエピローグでまた有森裕子と犬伏孝行が登場する。
有森裕子はオリンピック後の10月に行われたニューヨークシティマラソンに出場したらしい。本人の期待とは裏腹に、極めて不満な結果に終わったようだ。
この頃はすでにリクルートを退社して小出監督から離れており、そのあたりの影響もあったのかも知れない。いずれにしてもシドニー・オリンピックとは何の関係も無い出来事のようにしか思えない。
犬伏孝行は帰国後の記者会見などの様子。監督の総括のような話も述べられていたが、私はプロローグを読んだときに犬伏がこういう結果に終わった理由がわかったような気がした(『オマエなんかにわかるもんか!』と言われそうだが)。
犬伏は『とにかくオリンピックに行きたかった。種目は何でも良かった』と言っていたそうだ。つまり代表に選ばれた時点で彼の夢は実現してしまっていたわけである。もちろんメダルを目指すという気持ちもあったには違いないが、心の奥底にはほのかな満足感が漂ってしまっていたに違いない。このあたりは金メダルを取った高橋尚子とはまったくの正反対である。
こういう選手の失敗分析は、何を語られてもただの言い訳にしか聞こえない。
失敗した二人をプロローグとエピローグに持ってきたのは意図的なものであると氏は述べている。これがなければこの本の印象も随分違ったものになったに違いないと書かれているが、私の印象としてはこれらは不要である。むしろこれが無ければもっと好印象で読了できたのではないかと思うくらいだ。
普通のオリンピック観戦記には無いような視点での文章は非常に楽しかったが、プロローグとエピローグには違和感を感じた。それが私の印象である。もう一度読み返したいとは思わない。
さらに一緒に借りてきた『意味がなければスイングはない』を開いてみた。このタイトルは言うまでもなく、デューク・エリントンの名曲『スイングがなければ意味はない(It Don’t Mean a Thing (If it Ain’t Got That Swing))』のパロディ。タイトルからジャズ関連のエッセイかと思ったが、実際にはかなり広い範囲の音楽が選ばれており、ちょっとついて行けない感じ。ジャズ関連の章をいくつか読んだだけで、やめにした。
文章がちょっとくどい。氏の博識はよくわかるが、こっちはそんなレベルじゃないよという感じ。
こういうタイプの文章、どこかで出会ったことがあるような気がするなぁと思った。よく考えてみるとそれは、菊池成孔だった(と思う。図書館で借りたので手元に残っていない)。菊池成孔もかなりの博識だが、どうも好きになれない。音楽も(さほど多く聴いたわけではないが)、ハートよりも頭でやっているように感じられて、うまいとは思うがそれ以上でもそれ以下でもないという感じ。坂本龍一と同様に。
そんなこんなでここ1週間ほどは村上春樹マイブームと言った感じだったが、それもこれで終了と言ったところだ。幸か不幸か小説を読みたいという気持ちにはならなかった。