理解不能なシステム

クライマックスシリーズの阪神タイガースは、予想通りの二連敗で終了となった。試合内容も予想通りの完敗だったようだ。
FAができてからプロ野球に対する興味が薄れてきたということを先日書いたが、さらに興味を無くしたダメ押しの要因はこの『クライマックスシリーズ』というシロモノである。
FAは制度としては必要だと思う。それ以前は選手の人権などまったく無いに等しい状態で、まるで人身売買のようなことがまかり通っていた。一旦どこかのチームに入った途端、将来自分がここでプレーし続けられるか(もちろんそれなりの実力を維持した上でのことだが)、それともどこかにトレードで出されるのか、まったくわからない。
あるチームで主力として長年活躍してきた選手がいきなりトレードに出されて、涙の記者会見なんてことも何度かあったように思う。これではあんまりだと思う。
個人的にはドラフトは完全ウェーバー制で、FA資格取得を今よりも緩くするのがいいと思うが、そうなると一段と選手の流動が激しくなって、大リーグのようになるだろう。
私のような古い人間はさらに野球に対する興味を無くすに違いないが、致し方ないことのように思う。
それにしても『クライマックスシリーズ』という仕組みはまったく理解不能である。一体何のためにリーグ戦を144試合もやっているのだろう。
もしセ・リーグで広島が勝ち上がって、日本シリーズも制したとしたら、リーグ戦の勝率が5割にも満たないチームが今年の日本一のチームということになるのだ。とても現実社会の出来事とは思えない。
パ・リーグがクライマックスシリーズを始めた時は、また人気取りのために奇妙なことを始めたというくらいにしか思っていなかったが、確か始まってからの2年くらいはリーグ戦首位のチームが日本シリーズには出られなかったように記憶している。
あり得ないとシステムだと思ったが、どうもビジネス面ではかなりうまくいっているらしい。シーズン終盤までAクラス争いで客足もあまり衰えなくなったそうだ。
かつては日本シリーズはあまり興味の無いチーム同士でも時々はテレビを見たりしていた。
やはり真の日本一を決めるという雰囲気が漂っていて、ピリピリ感がリーグ戦とはひと味違う。西本監督や仰木監督、野村監督などの采配は、普段とは違う何かを感じさせるものがあった。
しかしセ・リーグまでクライマックスシリーズを導入してからは、日本シリーズは一度も見たことが無い。見る気にもならない。一体何を戦っているのかと思ってしまう。
それにしても一番気の毒なのは現場の選手や監督、コーチ達だろう。
今年であれば、楽天の星野監督や田中投手などは、絶対にジャイアンツと対戦して優勝したいはずだ。しかしここでもし、広島が勝ち上がってしまったらどう思うだろう。
選手や監督だって生身の人間だ。大きく落胆することは間違い無い。モチベーションも一気に下がるだろう。試合も負けるかも知れない。
勝てたとしても、本当に日本一を掴んだという気持ちになれるだろうか。現役時代からジャイアンツに勝つことだけを生き甲斐にしてきたような星野監督であれば、何が何でもジャイアンツと対戦したいはずだ。
クライマックスシリーズはビジネス的には成功しているのかも知れないが、その反面、失ったものは非常に大きいと思う。何よりも日本シリーズの価値が大きく下がってしまったし、本当に今年一番強かったチームはどこかということを決める場を無くしてしまったとも言えるだろう。
こんなことを続けている限りはますます選手はチームよりも個人を重視してFAに走り、実力者はメジャーへ流出ということになっていくだろう。
柔道などの一部の格闘技では敗者復活戦があるが、あれにはちゃんと理由があるし、敗者復活戦を勝ち上がっても最高3位である。今のクライマックスシリーズの仕組みは、敗者復活戦を勝ち上がった選手が優勝もできてしまうということで、こんな理不尽なシステムがもう何年も続けられているのはまったく信じられないとしか言いようが無い。
まぁ、すでに興味も無くなっているのでどうでもいいけど・・・。