通常の片道の時は、摩耶山まで来ればゴールが見えてくる気分になれるのだが、往復となるとそこまでの安心感は無い。しかし大きな山場は越えたという安堵感はあった。
掬星台のエイドはいつもカップラーメンのサービスがあるので、ここでお腹を満たそうと楽しみにしていたのだが、何とまたしても品切れとのこと。周りにはカップ麺を食べている人が何人かいたので、ギリギリで終わってしまったようだ。
かなりがっくりきたが、幸いなことにおにぎりがいくつか残っていたので、それをいただくことにした。トレラン中のおにぎりはそのままではなかなかノドを通らないので、水を飲みながら無理矢理流し込んだ。
少しはお腹も満たされたので、10分くらいで重い腰を上げる。時間は午後2時少し前。通常の片道ならここからあと3時間半くらいだが、今日の場合はあと1時間くらいは余分に見ておく必要があるだろう。宝塚のゴール最終が当初の設定では6時半なので、かなりギリギリだ。スタートが少し遅れたのでその分、時間が延長されることを期待しよう(実は須磨のスタートで、ゴール最終は午後7時という案内がされていたようだが、私は聞きそびれた)。
登りでは結構汗をかいたが、上まで上がると以外と風が冷たくて寒い。アゴニー坂を下ってから少し行くと、想定外のエイドが現れたが、飲み物は水とワイン!!とのことで、パスする。このあたりは歩道の緩い下りなのだが、それでももうまともには走れない。かろうじて『歩いてはいない』という程度だ。
一旦、石段の山道に入ってしばらく登って、またドライブウェイに出る。ここからはしばらくやや登り勾配の車道が続く。早歩きが精一杯だ。
記念碑台でまたエイド。ここではコーラをいただく。
みよし観音というのを初めてしっかり見て、ガーデンテラスを通過。そして極楽茶屋のエイドに到着した。ザ・デストロイヤーが迎えてくれた。
だいぶ寒くなってきたので、暖かいスープをいただく。
ドライブウェイと登山道のショートカットを交互におりまぜて、本日最後のエイドの一軒茶屋に到着。ここでいただいた、具の入ったカレースープはおいしかった。かなり寒くなってきたが、これからは下りなので、上着は着ずに行くことにする。
時間は午後4時少し前。昨夜は登りでここまでほぼ2時間だったが、今日は下りでもそれ以上かかるだろう。元気ならガンガン走れる部分なのだが、今日はもうそれはムリというもの。いやらしいことに、距離はまだたっぷりある。おまけに、右足の親指から拇指球あたりにかなり痛みを感じてきた。まるでシューズがきつくてツメが当たっているような感じの痛みなのだが、実際のところはそういうことではなさそうだ。
東六甲縦走路に入ってすぐに3人のグループに抜かされてからは、誰にもあわない。前回は最後の2時間ほどは5人くらいのグループが自然にできて、ダベりながら歩いたのがかなり気分転換になったのだが、今回はまったく正反対の状況である。まるで八ガ岳スーパートレイルの関門手前の下りのようだ。ただ、今日は道を間違える可能性は極めて低いので、八ガ岳の時のような不安感はまったく無い。しかし急な下りでは右足が痛い。
そんなわけで、独りぽっちで淡々と歩いていたら、下から猛スピードのランナーが駆け上がってきた。何事かと思ったら、何と、今度は UTMF チャンピオンの原良和さんではないか。すぐ後ろはおそらく奥さんの朋子さんに違いない。完全な本気練習モードだったので、挨拶を交わしただけだった。
それにしてもこの時間に空身で上へ向かって、どういう練習スケジュールなのだろう。ドライブウェイまで上がってから折り返してくるのだろうか。
大谷乗越は5時10分くらいだった。まだ明るいが、秋の夕暮れはあっと言う間に真っ暗になる。塩尾寺まであと30分くらいだろう。何とかヘッドランプ無しで行きたいのだが。
しかしその期待もむなしく、塩尾寺近くの急な下りに入る前に、かなり暗くなってしまった。このあたりは樹林帯で陽もあたらないので、あきらめてヘッドランプを出した。しかし何とか6時半までにはゴールできそうだ。寒いが、もう少しなのでこのまま行く。
塩尾寺からは車道を下る。最初のショートカットは階段なのでそちらへ行ったが、次の山道急勾配ショートカットは昨夜と同様、車道をたどることにした。
一般登山者の何人かと前後しながら急な車道を下って行く。昨夜のようなムダな大回りも無く、左に曲がって川沿いの細い道を下る。ゴールはもうすぐそこだ。幸い、右足の痛みもあまり気にならなくなっている。
2回目となると前回のような感慨は無いが、それでもやはりこれだけの距離を時間をかけてたどって来ると、胸にこみ上げてくるものはあるし、終わってしまうのが少し寂しいという気持ちも多少は湧いてくる。こんな気持ちをしっかりと心に焼き付けようと強く意識しながら、ゴールを目指した。
車道に出て、ローソンの角を右に曲がって、最後の階段だけは何とか走って上がって、湯本台広場のゴールに到着したのは6時20分だった。